糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第34回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(8)
〈GLP-1受容体作動薬-1〉

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 60(2019年4月1日号)

はじめに

 糖尿病患者では心血管イベントの多いことがよく知られていますが、高齢者の死因として重要な問題です。ハイリスク症例にはイベント抑制が証明されている薬剤を使用したいと考えるのはもっともです。高齢者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の有効性と安全な使用を考えます。

GLP-1RAの分類

 GLP-1RAには構造・半減期の異なる数種類のアナログ製剤がありますがエキセンジン由来と、ヒトGLP-1由来に大別されます。エキセンジンはアメリカドクトカゲの唾液由来の構造でヒトGLP-1と53%のみの相同性ですが、DPP-4作用部位のN末端2番目のアラニンがグリシンとなっておりDPP-4に分解されにくい構造です(文献1)。執筆時、日本で使用できるのはエキセナチド(バイエッタⓇ2回/日)、リキシセナチド(リキスミアⓇ1回/日)、エキセナチドER(ビデュリオンⓇ1回/週)です。これに対しヒトGLP-1由来ではリラグルチド(ビクトーザⓇ1回/日)、デュラグルチド(トルリシティⓇ1回/週)が発売されています。リラグルチドはDPP-4に分解されにくいように脂肪酸を付けた3.8kDaのアナログ製剤で、ヒトと97%の相同性です。ヒトGLP-1(7- 37)は3. 4kDaですが、デュラグルチドは59.7kDa、アルビグルチド(日本未発売)は73.0kDaと複雑で大きな分子量です。これは容易にバイオシミラーを造れない構造にしたとも推察できます。
 次に作用時間の分類では、短時間作用型と長時間作用型に分けられます。短時間作用型は主としてエキセンジン由来製剤が相当し、中枢性食欲抑制の強い作用を持ちます。また消化管運動の抑制とグルカゴン分泌抑制で、食後の血糖を抑制します。しかしエキセンジン由来の製剤の使用患者は減り、当院でも食欲抑制作用を評価する根強いファンのみ使用中です。
 これに対し長時間作用型は食後血糖の抑制は弱いものの、24時間全体に血糖値を改善するのが特徴です。高齢者にも使い易い製剤と言え、例えばαグルコシダーゼ阻害薬や、グリニドの中でも強めのレパグリニド(シュアポストⓇ)を併用すると血糖値変動は平坦化します。

GLP-1RAと心血管イベント

 心血管イベント抑制の有無は大規模臨床試験でも主要な項目であり、高齢者でも抑制効果があるかは注目されるところです。
 近年GLP-1RAを用いた大規模臨床試験で心血管系に対する有効性の有無がいくつか発表されています(文献2,3)。短時間作用型であるリキシセナチドを用いたELIXA試験では、最近6カ月の間に急性冠症候群を発症した約6,000人の心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者を対象に、平均2.1年の検討では心血管イベントの有意な抑制は認められませんでした。また1万4,000人の2型糖尿病患者が参加した、週1回投与のエキセナチドERを用いたEXSCEL試験でも抑制は認められませんでした。一方リラグルチドを1.8mg(本邦最大用量0.9mg)まで用いたLEADER試験があります。50歳以上で心血管イベント既往のある2型糖尿病、または心血管イベントリスク因子を持つ60歳以上の2型糖尿病患者が対象で、中央値3.8年で心血管イベントを13%有意に減少させたことが発表されました(文献4)。高齢者に関しては事後解析ですが、75歳以上のサブグループで、リラグルチドが心血管イベントを34%低下したと最近報告されました。このサブ解析は今後、高齢者への有効性、安全性の判断上、重要と思われます(文献5)。またアルビグルチドは日本未発売ですが、主要心血管イベントを有意に抑制することがEASD 2018で報告されています。以上の臨床試験は対象患者や使用条件が異なり単純比較はできません。しかしGLP-1RAは心血管イベントの抑制効果が認められ得る薬剤で、単剤では低血糖を来し難く、高齢者に対する有用性が期待されます。

高齢者でのGLP-1RAの使い分け

 高齢者では短時間作用型製剤を使用すると、確かに食後高血糖は強く抑制されます。中枢性食欲抑制と胃内容排出遅延での胃部不快感などが持続する症例があり、摂取エネルギー不足を来す恐れがあります。なお当院ではWeekly製剤は、家族や介護職の方が見守り注射するケースが増えています。しかしエキセナチドERの場合は注射を打つ前の混和、針の太さ、注射部位の硬結出現、一度打つと2週間位効果が継続し高齢者には長すぎるなどの問題で、若い方はともかく高齢者には使いにくい製剤と言えます。
 デュラグルチドはデバイスの簡便さとWeeklyのメリットから選択されるケースがとても増えています。アテオスと名付けられたデバイスで基本的には「あてて押す」だけです。実はリラグルチドの針34ゲージに比べて29ゲージと太めですが、針が見えない構造のためか、痛いという方は案外少数です。自己注射だけでなく介護者の見守りでの注射でも、簡単なデバイスは高齢者に必須です。

おわりに

 これからの新しいGLP-1RAおよび高齢者へのGLP-1RA使用の具体的注意点は次回の話題としたく思います。

参考文献

  • 1) 加藤光敏:GLP-1受容体作動薬(1). BOX & Net. No.49
  • 2) Boyle JG et al. Clinical Science 132:1699-1709, 2018(Review Article)
  • 3) 綿田裕孝:GLP-1受容体作動薬による動脈硬化抑制. BOX&Net. No.59
  • 4) Marso SP et al. N Engl J Med. 375:311-332, 2016
  • 5) Gilbert MP et al. Ann Intern Med.( Epub ahead of print) Dec. 2018

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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