糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第24回 GLP-1受容体作動薬(2)

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 50(2016年10月1日号)

はじめに

 GLP-1受容体作動薬は、食物胃排出遅延、中枢性食欲抑制等による血糖改善および減量効果が期待されています(文献1)。これは注射薬ですが、他にもインスリン、骨粗鬆症治療薬、脂質異常症治療薬(PCSK9阻害薬)等、注射製剤はより一般化しています。今回はGLP-1受容体作動薬のうち長時間作用型(Long Acting)を取り上げます。

長時間作用型GLP-1受容体作動薬

 長時間作用型は現在以下の3製剤が臨床応用されています。
 「ビクトーザⓇ」(リラグルチド)はノボノルディスク社が開発した1日1回製剤ですが、ある程度持続性があります。注射量を0.3,0.6, 0.9mgと段階的に増やすので、当院でも副作用を訴える症例はほとんどない製剤です。体重抑制はエキセナチド(バイエッタⓇ1日2回製剤)に比較して弱い傾向ですが、罹病期間の短い症例でのHbA1c改善効果は良好です。世界では1.8mg/日まで使用され0.6, 1.2, 1.8mgと増量しますが、日本のみ最高用量は0.9mg/日なので物足りなく感じる例があり、経口血糖降下薬との併用強化やインスリン併用が選択肢です。
 「ビデュリオンⓇ」(エキセナチド)はアストラゼネカ社の週1回製剤で、エキセナチドが「マイクロスフェア」という合成高分子微粒子に包埋されたものです。これは直径0.06mm、髪の毛の断面ほどの球体で、水と二酸化炭素に分解されながら1週間以上の長期にわたり薬物を放出します。注射後の皮下硬結例も散見されますが、2~3週間で消失していきます。対策として当院では腹部を6分割して注射部位を毎週ずらす指導をしています。
 ビデュリオンは十分な混和が重要ですが、発売当初のキットは複雑で、組み立てて十分混和できる患者は限られていました。しかし現在の「ビデュリオンペンⓇ」はこの点も改良され、注射指導は以前より容易になりました。もっともマイクロスフェアを壊さないように、注射針は23Gで、これ以上細くできない難点はなお残っていますが、食欲抑制効果は捨てがたいものがあり、当院患者から根強い支持を得ています。
 「トルリシティアテオスⓇ」(デュラグルチド)は同じく長時間作用型で、IgG4抗体のFc領域にGLP-1アナログを2分子結合させ半減期を延長した製剤です。イーライリリー社が製造し、大日本住友製薬と併売している週1回製剤ですが、デバイス「アテオス」は名前の通り「キャップを外し皮膚に当てて押す」だけの簡単なものです。これはデバイスにバネがセットされ注入が容易になっている点が優れています。週1回製剤としては、後で発売されましたが、容易さから当院での使用率は伸びています。

GLP-1受容体作動薬に関する心血管アウトカム試験

 SGLT2阻害薬に関する報告ですが、2015年のEASD(欧州糖尿病学会)ではSGLT 2阻害薬エンパグリフロジン(ジャディアンスⓇ)のEMPA-REG OUTCOME試験で、血糖降下薬で初めて心血管イベントの抑制を証明したとして話題になりました。これに対しGLP-1受容体作動薬による試験は以下のごとくです。
 ELIXA試験:これは短時間作用型製剤のリキシセナチド(リキスミアⓇ)を6, 068人の急性冠動脈イベントの既往のある2型糖尿病患者を対象として、平均2.1年間追跡した試験です。通常診療にリキシセナチドを追加投与しても心血管イベントを増加させないことが2015年6月ADAで発表されたのがGLP-1受容体作動薬最初の報告でした(文献2)。
 LEADER試験:翌年2016年6月のADAでは、リラグルチド(ビクトーザⓇ)のLEADER試験が発表されました。9,340人の心血管イベントハイリスク2型糖尿病患者を3.5~5年間追跡したものです。プライマリーエンドポイントの3ポイントMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞または非致死性脳卒中)のいずれかが発現するまでの比較で、プラセボ群に対してリラグルチド群では13%の有意なリスク低下が認められました。全死亡も15%、心血管死単独で22%の有意なリスク低下が示され、顕性アルブミン尿、血清クレアチニン値の倍増、透析などの末期腎不全、腎死亡のいずれかの発生も22%のリスク低下でした。アジア人が8%含まれていますが、日本では半量しか保険で認められていませんので解釈に注意が必要です(文献3)。

GLP-1受容体作動薬の使い分け

 当院で全種類を使用してみた結果、使い勝手や、血糖の下がり方が異なることを経験しています。効き方からの使い分けポイントはバイエッタ、リキスミアのShortacting製剤は、空腹時血糖は少し下げる程度ですが、食後血糖の抑制は強力。胃排出遅延作用が強めな分、胃部不快感などが出やすいが、体重減少効果は高い。
 ビクトーザ、ビデュリオン、トルリシティのようなLong acting製剤は、胃排出遅延作用が弱いため、消化器症状の発現は少ない。空腹時血糖低下は強力だが、食後血糖抑制作用は弱く、体重減少作用はあまり期待できないなど、長所と短所がみられています。前者後者共にこれらの違いを考えて併用薬を決めるのが、血糖コントロールや体重減少を得る上での近道だと言えます。
 当院ではインスリンアレルギーのため本薬剤に変更した例がありますが、抗インスリン抗体出現症例での改善報告も複数あります(文献4)。しかし2型糖尿病でも、インスリン枯渇状態にある症例でのインスリンからGLP-1受容体作動薬への変更は、ケトアシドーシスを引き起こす危険があるため十分な注意が必要なことを付記します。

参考文献

  • 1) 前田法一他 月刊糖尿病Vol 8(4)53-61, 2016
  • 2) Pheffer MA et al. N Engl J Med 373;23, 2247-2257, 2016
  • 3) Marso SP et al. N Engl J Med. 375;4,311-322, 2016
  • 4) 吉原 彩 GLP-1受容体作動薬(フジメディカル出版)pp82-87, 2013

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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