糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第11回 スルホニル尿素(SU)薬(1)

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 37(2013年7月1日号)

はじめに

 スルホニル尿素薬(SU薬)は昔から何かと話題の多い薬です。悪い面がことさら強調されることもありますが、皆さまはどのような印象を持っていますか? SU薬のイメージを表す単語を3つ以上挙げてみてください。あなたはSU薬肯定派? 否定派?

 SU薬は経口血糖降下薬の中で最強で、HbA1c低下あたりのコストパフォーマンスは抜群です。世界人口とともに糖尿病も増加している中、当分の間ビグアナイド薬と共に基本薬であることは変わらないでしょう。

 長年使用されていますが、低血糖以外これといった大きな副作用の見当たらない薬でもあります。「今更のSU薬」を復習し、SU薬を安全にうまく使いこなせる工夫を複数回にわたって考えてみましょう! SU薬はインスリンに続いて、経口血糖降下薬としては初めて開発に成功した薬剤です。続いてと言ってもインスリンは1921年ですから、遅れること30年余りです。最近10年の糖尿病治療薬の誕生スピードと比べて何と暢気な話でしょうか。当時、時間がゆっくり流れていたことが容易に想像できますね。うらやましい気がします。

SU薬の誕生秘話

 さてみなさんはSU薬が抗菌剤の副作用から生まれたことをご存じでしょうか? 1942年頃のことです(文献1)。感染症治療薬として開発されたサルファ剤は第二次世界大戦中、腸チフスの兵士に使用されましたが、重篤な副作用を起こしました。モンペリエ大学のMarcel Janbon(マルセル・ジャンボン)はこの副作用が重度の低血糖昏睡であることに気づいたのです。糖尿病治療薬としての誕生には案外時間がかかりましたが、1955年には抗菌作用は無く強力な血糖降下作用を持つカルブタミド、そして1956年にトルブタミド(ヘキストラスチノン等)が合成されました。これが第一世代のSU薬と呼ばれているものです。そして、1970年以降には第二世代のグリベンクラミド、グリクラジド。1990年代に第三世代のグリメピリドの開発に至ったのです。

SU薬の作用機序

 インスリンの分泌機序を知っておくことは、糖尿病患者さんの血糖変動を理解する助けになります。

  1. β細胞膜にあるグルコーストランスポーター(GLUT2)によって、血糖依存的にブドウ糖が細胞内に輸送されます。このブドウ糖は解糖系でピルビン酸になり、ミトコンドリアでATPが産生されます。
  2. 細胞内ATP濃度が上昇するとATP依存性Kチャネル(K ATP チャネル)が閉じて膜の脱分極を起こします。
  3. 電位依存性Caチャネルが開口してCa 2+ が流入します。するとインスリン分泌顆粒からインスリンが分泌されるのです。SU薬はこの中のK ATP チャネルを血糖非依存的に閉じることでインスリン分泌を刺激します(文献2)。

SU薬の二次無効について

 SU薬の薬効で当初から効きが悪い場合が一次無効、血糖コントロールがある期間改善していたのに血糖コントロールが悪化し、HbA1cの再上昇を認める場合が二次無効です。二次無効の原因は議論の多い所ですが

  1. 不十分な血糖コントロールの継続によるβ細胞のさらなる減少、
  2. 食事・運動療法に対する気のゆるみ、
  3. またK ATPチャネルのSU薬への感受性低下も原因の一つと推定されています(文献3)。

SU薬の服薬指導:SU薬の限界を知って早めに見切りをつける

 二次無効の定義で、SU薬極量を使用しても無効の場合との記載もありますが、極量を使用すること自体問題もありますし、「極量の半分」までで二次無効を早めに診断すべきであると考えます。さて、いずれにしても二次無効状態と判断したら速やかに生活習慣の乱れの有無を患者さんに確認し、BG薬を加えるなど併用薬を早めに開始することです。それでも改善しなければ速やかに短期インスリン療法を行い、早めに空腹時血糖を120mg/dL未満に達するような治療に移行することにより、β細胞を少しでも温存しておくことが、患者さんの一生の血糖コントロールを難治性としないために極めて重要と考えます。

参考文献

  • 1)Janbon M et.al. Montpellier Med 441:21-22,1942
  • 2)前田泰孝ら「糖尿病臨床のすべて」p36-41, 中山書店
  • 3)上田量也ら「インスリン分泌促進薬」 p48-52, フジメディカル出版

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※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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