糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第7回 DPP-4阻害薬(1)

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 33(2012年7月1日号)

DPP-4阻害薬 シタグリプチン

 世界で最初のDPP-4阻害薬であるシタグリプチン(グラクティブ®、ジャヌビア®)は米国メルク社により創薬、2006年8月にメキシコで最初に承認、本邦では2009年12月に発売されました。私は新たな機序の薬であるだけに、糖尿病専門医として慎重に使い始めましたが、新薬としては非専門医も含めて非常に高い伸び率で処方されていることが話題になっています。

インクレチンとDPP-4

 食物の流入を感知して消化管から分泌されるインクレチン(グルカゴン様ペプチド-1[GLP-1: Glucagon- like peptide- 1]などの消化管ホルモン)は、分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4:Dipeptidyl peptidase-4)により、体内では半減期2~3分という短い時間で分解されます。インクレチンは膵β細胞からのインスリン分泌を増強する作用を持ちますが、血糖値が下がるとインクレチンを介したインスリンの分泌が停止するため、単剤では低血糖が極めて起きにくいとされています。また、GLP-1は、胃内容の排出遅延、β細胞保護またグルカゴン分泌の抑制という、大変ユニークな作用も有しています。

服薬における患者指導のポイント

SU薬への追加での重症低血糖

 シタグリプチンは単独ではまず低血糖は起きませんが、SU薬を使用していて効果不十分の症例に、シタグリプチンを追加投与するケースがとても多いのが実情でした(文献1)。

 12月に発売されてから、 4月までに低血糖昏睡19例を含む64例の重症低血糖が報告され、日本糖尿病学会を中心に、対策のための「委員会」が迅速に発足し、

  1. 高齢者、
  2. 軽度腎機能低下、
  3. SU薬の高用量内服、
  4. SU薬ベースで他剤併用に重篤な低血糖が多く、
  5. 併用早期に出現すること

への警告が発せられました(文献2)。これにより、シタグリプチンを併用する際にはSU薬を減量することが徹底されたことが幸いして、その後、重症低血糖例の報告はほぼ無くなりました。しかし、今後もこのような点についての注意は欠かしてなりません。

SU薬以外との注意点

 SU薬の他、β遮断薬、サリチル酸剤、モノアミン酸化酵素阻害薬でも、血糖降下増強の恐れが相互作用として注意されています。その他シタグリプチン自体の副作用として、本剤は以前から指摘されている急性膵炎に対する注意に加え、2012年4月の添付文書改訂では腸閉塞、横紋筋融解症の注意喚起がなされており、これらを念頭において処方すべきと考えます。なお、海外ではメトホルミンとシタグリプチンの併用が多く、メトホルミンの下痢の副作用とシタグリプチンの便秘の副作用がうまく打ち消しあっているという興味深い臨床試験結果も出ています(文献3)。

まとめ

 DPP-4阻害薬は単独では低血糖を起こさず、実際に当院のCGMで調べた症例でもシタグリプチン投与後、食後を含めた1日の血糖変動が小さくなっています(文献4)。一般内科医でも、比較的良好なコントロールを目指せる症例を増やしたことは大いに評価されると思います。しかし、長期的有用性と副作用に関するデータの集積はこれからなので、安易な使用になっていないかなど慎重な処方姿勢が肝要です。2012年6月現在、日本で使用されているDPP-4阻害薬は4種類です。シタグリプチンの他、ビルダグリプチン、アログリプチン、リナグリプチンについては次号で紹介したいと思います。

参考文献

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※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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