オピニオンリーダーによる糖尿病ガイダンス

12. メタボ型糖尿病の治療戦略
-2型糖尿病の亜型分類からの提言-

池田義雄 先生(糖尿病治療研究会代表幹事)

池田義雄 先生

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 12(2007年4月1日号)

 肥満が糖尿病発症の危険因子であることは古くから知られ研究されてきましたが、2005年にメタボリックシンドローム(以下、MSと省略)が定義されたことで、両者の関連は今一度整理を要する状況にあります。ここでは、MSが関係してる糖尿病を「メタボ型糖尿病」としてまとめて、考察したいと思います。

2型糖尿病の亜型分類 ~メタボ型と非メタボ型の典型例の比較~

  メタボ型 非メタボ型
インスリン作用不足の原因 インスリン抵抗性 > インスリン分泌不全 インスリン抵抗性 < インスリン分泌不全
HOMA-R 高値 正常または軽度上昇
未治療状態での空腹時血糖 正常域~境界域のことが多い 境界域~糖尿病域
未治療状態での食後血糖 境界域~糖尿病域 糖尿病域
治療目的
  • 内臓肥満の解消によるメタボの改善とそれによる大血管障害の抑止、糖代謝改善
  • 細小血管症の抑止
  • 糖代謝悪化の抑止または糖代謝の改善
  • 細小血管症の抑止
  • 糖尿病および併発症の管理による大血管障害の抑止
※空腹時血糖140mg/dL以下の場合

「メタボ型糖尿病」とは

 1型と2型に大別される糖尿病のうち、国内で大半を占め、かつ増加が社会的問題になっているのは2型です。2型糖尿病は、インスリン作用の相対的な不足による高血糖を主徴とする疾患で、その病態は、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の双方により形成されています。

 後者のインスリン抵抗性の主要原因が、近年増加の著しいMSです。MSは内臓肥満に基づくインスリン抵抗性によって種々の代謝異常および血圧調節機構異常を来した状態で、とくに糖代謝への影響が強い場合、「メタボ型糖尿病」が発現してきます。

メタボ型糖尿病の診断

 糖尿病域の血糖値を示すMS患者で、インスリン作用不足の原因がインスリン抵抗性主体であることが確認できれば、メタボ型糖尿病であると診断できます。インスリン感受性を把握する簡便な方法として、HOMA-R(空腹時血糖×空腹時インスリン値÷405)が汎用されており、これで1.6以下を正常、2.5以上がインスリン抵抗性ありと考えて対処すればいいでしょう。

 このHOMA-Rは、2型糖尿病の中からメタボ型を見出だして治療に反映させるのに、有用な指標となります。なお、MS の診断基準で必須な腹囲は、男性85cm以上、女性90cm以上です。大血管障害抑止に向けた管理を積極的に進めていく上では、これもフォローすべき大事な指標です。

メタボ型糖尿病の治療戦略

 メタボ型糖尿病では、これがMSを基盤としている以上、当然ですが血糖以外に血圧・血清脂質異常の頻度が上昇します。ですから治療において、血糖を下げるにとどまり、「軽症だから」という理由で高血圧や高脂血症の管理をおろそかにするとしたら、まさに「木を見て森を見ない」治療となります。

 糖尿病の新患にメタボ型を見出だしたときは、「糖尿病である前にMSである」という視点を忘れてはなりません。具体的にはMSの原因である内臓脂肪の過剰蓄積を解消することが重要です。

 昨年の日本肥満学会の「神戸宣言」で、肥満の初期治療としてまずは腹囲径3cm、体重3kgの減少をめざすという「サンサン運動」が提唱されました。最近の臨床的研究から、この程度の減量でもMSに関連した検査値異常が著明に改善することがわかっています。

 メタボ型糖尿病の患者さんが新患として受診した際には、空腹時血糖が特に高値でない限り、まず2~3カ月間「サンサン運動」を行ってもらい、その後も腹囲径を確認しつつ体重をしっかりコントロールするという姿勢が求められます。

 また、2型糖尿病の初期には糖負荷後(食後)血糖のみが高く空腹時血糖は境界域もしくは正常域にありますが、メタボ型ではこの傾向がより顕著です。よって空腹時血糖のみではなく、随時血糖も十分に加味しつつ、大血管障害に対応する必要があります。

 さらにメタボ型はインスリン分泌が比較的よく保たれているため、MSの改善により糖代謝を境界域や正常域に戻せる確率が高い病型だということも言えます。最後に、メタボ型も糖尿病の一病型である以上、細小血管症の抑止も重要なテーマであることも忘れてはなりません。

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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