オピニオンリーダーによる糖尿病ガイダンス

5. 超速効型インスリン混合製剤の使い方

岩本安彦 先生(東京女子医科大学糖尿病センター・センター長)

岩本安彦 先生

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 5(2005年7月1日号)

 速効型インスリンと中間型インスリンの混合製剤は、追加分泌と基礎分泌を同時に補えることから、注射回数を減らし患者さんの負担を軽減できるため、国内で広く利用されています。そして最近1年ほどの間に、超速効型と中間型の混合製剤3種類が国内で発売されました。

食後高血糖の厳格な管理が可能に

 従来の速効型インスリンは注射後の効果発現が緩やかなために、食後血糖を十分に下げられないことがあり、速効型インスリンの混合製剤もまた同じような問題が残されていました。これに対して超速効型インスリンは、注射後短時間で効果を発揮して食後高血糖を抑制します。この効果は混合製剤も同様で、速効型インスリン混合製剤との比較において、食後高血糖の有意な改善効果が認められています。

 近年、合併症の予防にはHbA1Cの改善のみならず健常者の生理的インスリン分泌動態により近い血中インスリン濃度を再現すること、血糖の日内変動幅を減らすことが重要であることが示されつつあります。このような厳格な血糖コントロールには強化インスリン療法が理想的ですが、現実には導入が困難なケースが多く認められます。超速効型混合製剤は、合併症の抑止と治療に伴う負担の軽減を目指すための新たな選択肢と言えるかもしれません。

低血糖を増やさずにコントロール改善

 超速効型インスリンはまた、効果持続時間が短いために食間の低血糖を起こしにくいという特徴があり、混合製剤でもこれを期待できます。血糖コントロールが目標に到達しない場合に、速効型混合製剤では、用量を増やすに従い低血糖の頻度が増えるため、治療目標到達が困難なケースがありましたが、超速効型混合製剤では低血糖の頻度増加を従来ほどには心配せず、インスリン増量を試みることが可能になりました。

"注射するために食べる"から"食べるために注射する"へ

 この製剤にはもう一つ「食事の直前に注射する」という特徴があります。速効型インスリンやその混合製剤を食前30分に注射することは、食後の高血糖を抑え食間の低血糖を減らすために大切なことです。しかし実際にはあまり順守されておらず、それが血糖コントロール不良の原因であることも少なくありません。また、「30分たっていないからまだ食べられない」「注射してしまったからいつものように食べなければ」といった制約は、しばしば患者さんのQOLを低下させ、ひいては治療意欲さえも低下させます。"インスリン治療のための食事"から、"食事のためのインスリン治療"に切り替えられるメリットは、患者さんにとって、医療者側が思っている以上に大きいと推察できます。

使用を考慮すべきケースは?

 このような特徴をもった超速効型インスリン混合製剤は、速効型混合製剤では食後高血糖の管理が不十分、または経口薬で十分なコントロールを得られなくなった2型糖尿病の患者さんに、よい適応と言えます。反対に、従来の速効型混合製剤で十分なコントロールを得られていて、食前30分の注射が習慣になっている患者さんでは、無理に変更する必要性はないでしょう。

 現在、国内で使用できる超速効型インスリン混合製剤は、ノボラピッド30ミックス、ヒューマログミックス25、同50の3種類です。前二者は2回法、後者は3回法といった使い分けや、朝と昼にミックス50、夕にミックス25(または30ミックス)などの組み合わせも考えられます。

速効型混合製剤から切り替えの際の注意点

 速効型混合製剤から超速効型混合製剤への切り替えに際しては、食前の高血糖に注意が必要です。特に2回法では夕食前に高血糖になる傾向があり、これに対しては、昼食前に速効型や超速効型を加えるなどで対処が可能です。なお、切り替え前のインスリン使用量が少ない患者さんほど基礎分泌が保たれていると推測できるので、超速効型混合製剤に切り替えた際の食前高血糖が起きにくいものと考えられます。

 このほかの注意として、超速効型混合製剤を使用し食後血糖をしっかり管理するという目的達成には、2回法において、昼食時にα-グルコシダーゼ阻害薬を加えるなどの工夫も考えられます。

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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