糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第8回 DPP-4阻害薬(2)

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 34(2012年10月1日号)

 インクレチンの働きやシタグリプチンにおける服薬指導のポイントを中心に解説した前号に続き、今回は種類が増えつつあるDPP-4阻害薬選択のポイントと各薬剤の特徴をみていきたいと思います。

DPP-4阻害薬と併用薬

 DPP-4阻害薬を他の経口血糖降下薬と併用できるかは、選択の大きなポイントとなります。

  1. α-GI(グルコシダーゼ阻害薬)は糖質の吸収を遅延させることにより、小腸下部からのGLP-1分泌を増加させDPP-4阻害薬と相乗効果があります。
  2. BG(ビグアナイド)薬は肝臓において糖新生を抑制し、またGLP-1分泌促進作用も有します。欧州等ではBG薬で効果不十分例に併用が原則です。
  3. SU薬は膵β細胞のSU受容体に結合し、KATPチャンネルを閉鎖、細胞内Ca2+濃度が上昇しインスリン分泌が増加します(惹起経路)。DPP-4阻害薬により増えたインクレチンは膵β細胞内のcAMP濃度を高め、グルコース濃度依存性のインスリン分泌を増強します(増幅経路)。
  4. チアゾリジン薬はインスリン抵抗性を改善しますが、分泌系であるDPP 4阻害薬との合剤もあります。以上のような各機序より血糖降下薬併用の意義があるわけです。

ビルダグリプチン(エクア®錠)

 ビルダグリプチンは、1998年にノバルティスファーマで創薬されたDPP-4阻害薬で、2010年1月に製造販売承認されました。通常は1錠50mgで1日2回の服用です。朝の服用は食後血糖上昇を抑制し、夕の服用はグルカゴン抑制による夜間の血糖の上昇を抑制します。単独での血糖低下作用は現在のDPP-4阻害薬で最も強いとされていますが、併用の保険適応は現在SU薬のみです(文献1、2)。

アログリプチン(ネシーナ®錠)

 アログリプチンは、武田薬品工業により開発されたDPP-4阻害薬で、2010年に製造販売承認を取得し、チアゾリジン系薬剤、SU薬、α-GIまたはBG薬の併用承認を相次いで取得しています。1日1回服用で、製剤は25mgを基本とし、12.5mg, 6.25mg錠があります。本剤は主として腎臓から未変化体として排泄されるため、低用量は腎機能障害患者用で、「中等度腎機能障害患者」(30≦Ccr<50mL/min)は12.5mg、「高度腎機能障害患者/末期腎不全患者」(Ccr<30mL/min)では6.25mgが推奨されています。

リナグリプチン(トラゼンタ®錠)

 リナグリプチンは、ベーリンガーインゲルハイム社で合成された、初めての胆汁排泄型DPP-4阻害薬です。2型糖尿病治療薬として2011年5月に米国で、7月に本邦、8月に欧州で承認されました。リナグリプチンはDPP- 4に対して高い親和性と選択性を示すこと、および1日1回5mgの低用量でDPP-4阻害が長時間持続することが特徴で、これはキサンチン骨格を有する分子構造に由来すると考えられています(文献3)。

 さらに胆汁排泄型のDPP-4阻害薬であることが最大の特徴で、腎排泄率は約5%のみです。肝臓でも代謝をほとんど受けず、腎機能および肝機能障害者においても血中濃度が上昇しないため、用量を調節する必要がなく、透析患者でも服薬できる特徴的な薬剤です。強く長くDPP-4活性を阻害する薬剤ですが、現在は他の血糖降下薬が併用できないので認可を待っている状況です。

注意点

 DPP-4阻害薬は、2型糖尿病患者において血糖が高いのに夜間にグルカゴンが過剰分泌されるのを抑制できる画期的な薬剤であり、また副作用の少ない薬と評価できます。しかしそのため、腎機能障害者でも用量を減らすことなどを忘れていることも多いと思われ、もう一度基本に戻りそれぞれの薬剤の特徴を知って注意深く使用する必要があります。また、前回述べたように、SU薬にDPP-4阻害薬を加えた際は、早期の血糖の急落がないかを十分に確認することが重要です。

 なお、新たに発売されたテネリグリプチンと発売間近のアナグリプチンは別の機会に説明いたします。

参考文献

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※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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