よりよい糖尿病看護を目指して

Vol.4 コツコツ予防
「骨粗鬆症」は、糖尿病の合併症です

関東労災病院 糖尿病・内分泌内科 部長 浜野 久美子 先生
筆者について

糖尿病患者さんは骨折のリスクが高いというのをご存じでしょうか。特に高齢者では、骨折はADL(日常生活動作)やQOLを著しく低下させ、生命予後の悪化につながります。
今、糖尿病治療において、骨折の要因となる「骨粗鬆症」への対策が求められています。

 非糖尿病患者さんに比べ︑1型糖尿病患者さんは約3〜7倍、2型糖尿病患者さんは1.3〜2.8倍大腿骨近位部骨折のリスクが高いといわれています。糖尿病患者さんに骨折が多い理由の1つとして、低血糖や神経障害、網膜症などを背景に転倒するケースが多いことが挙げられます。
 そして、骨粗鬆症です。近年、糖尿病との関係が報告され、『糖尿病診療ガイドライン2019』でも骨粗鬆症は糖尿病合併症として明記されています。骨粗鬆症というと「骨密度」に注目しがちですが、実は2型糖尿病患者さんの場合、骨密度は同じでも非糖尿病患者さんに比べて骨折のリスクが高いことがわかっています。糖尿病患者さんにおける骨粗鬆症には、骨密度だけでなく「骨質」と呼ばれる、骨の構造や材質の関与が大きいと考えられます。
 糖尿病患者さんの骨に何が起きているのでしょうか?まず、慢性的な高血糖による酸化ストレスや糖化ストレスによって骨組織に終末糖化産物(AGE)が蓄積されることで、骨代謝のバランスを崩し、骨が脆弱化しているのではないかと考えられています。また、インスリンは骨芽細胞の増殖を促す骨形成に欠かせないホルモンですが、インスリン分泌能の低下やインスリン抵抗性が骨形成を抑制し骨の脆弱化を亢進させるとも考えられます。この他、チアゾリジン系の糖尿病治療薬による骨折リスクが指摘されていますが、メカニズムは明らかになっていません。
 大腿骨近位部骨折や椎体骨折といった重大な骨折を起こす前に、骨粗鬆症を早期に発見・治療するには、日常診療でどのようなことに気をつければよいでしょうか。HbA1c7.5%以上の2型糖尿病患者さんは、非糖尿病患者さんに比べて骨折リスクが1.47倍高いという報告があります。また、2型糖尿病患者さんでは罹病期間が10年を超えると骨折リスクが高まることがわかっています。血糖コントロール不良の患者さんや病歴の長い患者さんには、骨粗鬆症がないか疑ってみてください。

 そして問診です。骨折歴のほか、「身長」を聞いてみるのもよいと思います。医師も体重の変化は尋ねますが、身長の変化に着目することは少ないのではないでしょうか。身長低下が見られれば骨粗鬆症の可能性があります。

 骨粗鬆症の予防は食事療法、すなわちカルシウムやビタミンD、Kなどの摂取や運動療法(特に下肢の筋力トレーニング)が有効であり、糖尿病の治療とも矛盾しません。運動療法は転倒予防に有用ともいわれています。
 高齢化が進む糖尿病患者さんの骨折を防ぐために、内科、整形外科といった垣根を超え、ぜひ骨の状態も視野に入れた診療・療養指導をおこなっていただきたいと思います。

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