よりよい糖尿病看護を目指して

Vol.3 糖尿病患者さんが抱える
「スティグマ」とは?

関東労災病院 糖尿病・内分泌内科 部長 浜野 久美子 先生
筆者について

「糖尿病であることを、他人に知られたくない」そんな患者さんは決して少なくありません。人種や宗教など、特定の属性に対して差別や偏見を受けることを「スティグマ」といいます。ギリシャ語が語源で、刻印や徴(しるし)といった意味があります。皆さんも看護の中で、糖尿病患者さんが抱えるスティグマを感じられることはないでしょうか。

 「糖尿病」という病気に対する世間の偏見などから、患者さんが孤立したり、必要な治療サポートが受けられない(受けようとしない)ケースがあります。昨年11月に日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が「アドボカシー委員会」を設立し、この問題に取り組もうと動き出しました。

 例えば、糖尿病は「不治の病」で、失明や、腎不全による「死」と直結するイメージがいまだに残っています。そもそも糖尿病は、血糖を良好に保てば健常者と変わらず生活できる病気です。血糖コントロールのための薬剤や医療機器も、この半世紀でずいぶんと進化しました。にもかかわらず、糖尿病があると生命保険に加入しづらい、住宅ローンの契約が難しい、就職のハードルになるなど、社会的に不利益を被るのは非常に残念なことです。
 また、「糖尿病になったのは、自己管理ができていないから」という見方は、患者さんをずいぶんと苦しめていると感じます。1型糖尿病患者さんはもちろんのこと、2型糖尿病患者さんも、病気の背景に遺伝子や社会環境が大きく関与する場合にも、ご自身を責めてしまわれることが少なくありません。こうした「病気はご本人の責任」といった考え方は、患者さんの自己肯定感を低下させます。結果、療養に後ろ向きになったり、「怒られるから診察に行きたくない」と治療を中断したり、誰にも相談せず1人で悩んでしまうということにつながりがちです。
 そもそも「糖尿病」という病名が問題なのではないか、という意見もあります。例えば、友人と食事をする際に、排泄物の名前がついた病名を口にするのには抵抗を感じる方も多いでしょう。病名変更に関する議論は実は歴史が古く、日本糖尿病協会で意識調査が実施されたこともあります。古くは「甘血」という名称から、「合併症を起こしていない段階であれば、「病」でなく「高血糖症」でいいのではないか」という意見や、「『インスリン分泌不全症候群』などにして1型糖尿病と2型糖尿病の違いを明確にしてほしい」という意見まで、さまざまなアイデアや意見が挙げられてきましたが、変更には至っていません。たかが病名、されど病名です。「痴ほう」が認知症に、「精神分裂病」が統合失調症に名称を変えた経緯や効果も踏まえ、今後も議論がされるべきと考えます。
 今や、予備軍を含む2千万人、成人の4人に1人が関係する国民病ともいえる糖尿病です。患者さんが人の目を気にせず、治療に専念できる環境づくりも、私たち医療従事者の仕事の1つではないでしょうか。

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