1. 1日何回測定すればよいか
糖尿病の治療は治療法に対する血糖のコントロールの良否をみながら治療内容を変えていくので、治療の効果を適正に評価することが必要である。この目的に、入院患治療では血糖の日内変動と尿糖1日排泄量をみることが行われた。血糖は測定回数が多いほど適確に評価されるが患者の苦痛は多くなる。まだ簡易血糖測定器の出現以前の1960年代には、通常は毎食前と就寝時の4回、次は毎食前と食後2時間と就寝時の7回、さらに毎食前と食後1時間と2時間と就寝時(21時)、0時、3時、7時の13回の血糖検査が行われた。しかし1日13回も針を刺されるのは大変なので、我々は注射器による採血は21、0、3、7時のみとし、その他の時刻は医師が耳朶血を採血した。まだ耳飾りをしている人が少ない時代で支障はなかった。
血糖の日内変動曲線の形は多様であるが、これを朝、昼、夕、夜の4つに分け、時間帯の血糖の動きをパターン化することを考えた。上昇するときは山型でA(alps)、異常に下降するものは谷型でV(valley)、平坦なものはF(flat)とし、動きが小さいときはa、v、fとした。3つの要素が4つ並ぶとしても81の組合せがあり、F、A、a、V、vの5つの要素が4つ並ぶとすると15,625の組合せができることになる。しかし実際には次の6型に大別できることがわかった。
FF型 | 1日中平坦なもの |
FA型 | Fの他にA、aのあるもの、aFFF、AAAF、aaAFなど |
FV型 | Fの他にVあるいはvのあるもの |
AA型 | Fがなく全てA、aだけのもの |
VV型 | Fがなく全てV、vだけのもの |
AV型 | FがなくAとV、vのもの |
この6つのパターン別に早朝空腹時の平均値と日内変動の血糖変動範囲、尿糖1日排泄量(g)を示すと
表1のようになった。尿糖排泄量の多いのはAA、FA、AVである。治療法との関係は
表2に示した。
表1 糖尿病患者の血糖日内変動のパターン別にみた空腹時血糖値、血糖変動範囲、尿糖量
血糖日内変動型(例数)
|
FF
(3)
|
FA
(38)
|
FV
(29)
|
AA
(7)
|
VV
(18)
|
AV
(22)
|
空腹時血糖値
|
平均値
<120mg/dL
121~150
151~200
201~250
>250
|
83
3
0
0
0
0
|
153
14
5
9
7
3
|
182
5
6
9
5
4
|
141
3
2
1
1
0
|
240
0
1
5
4
8
|
196
2
4
6
6
4
|
血糖変動範囲
|
平均値(mg/dL)
<80
81~160
161~240
241~320
>320
|
64
3
0
0
0
0
|
143
3
21
11
2
1
|
112
5
22
2
0
0
|
225
0 2
1
3
1
|
184
0
8
6
4
0
|
253
0
1
13
4
4
|
尿糖排泄量平均値(g)
|
5
|
50
|
10
|
67
|
22
|
45
|
|
|
|
表2 血糖日内変動型と治療法
治療法
|
(例数)
|
血糖日内変動型
FF
|
FA
|
FV
|
AA
|
AV
|
食 事
経口剤
R×3
L×1
L×2
L+R
|
(22)
(16)
(43)
(13)
(12)
(11)
|
2
0
1
0
0
0
|
13
10
3
8
1
3
|
5
3
16
2
1
2
|
2
2
1
0
2
0
|
0
0
15
0
2
1
|
0
1
7
3
6
5
| |
R:レギュラーインスリン、L:レンテ、NPH インスリン
|
|
|
2. 日内変動を数値で表現するM値
日内変動をパターンで示すのもよいが、もっと簡単に表現する方法はないだろうかと考えていたところ、デンマークのSchlichtkrull, J(1965)らがM値(morbusを意味する)を提唱した。これはもっとも望ましい血糖値(例えば100mg/dL)を0とし、それより高い値や低い値になるほどに高い点数を配点する方式で、その点数は次の式で求められる。
BSは血糖値、ここでは血糖100mg/dLをもっとも望ましい血糖として100としている。原著では120。
|
表3 の表 |
血糖値
|
|
O
|
100
|
200
|
300
|
400
|
500
|
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
90
95
|
2200
1000
560
340
220
140
95
63
42
27
17
10
5
4
2
1
0
0
0
|
0
0
0
0
0
1
1
2
3
4
5
6
8
10
12
14
16
18
21
24
|
27
30
33
36
40
43
47
50
55
60
65
65
70
75
80
85
90
95
100
105
|
110
115
120
125
130
135
140
145
150
155
160
165
170
180
185
190
195
200
210
210
|
220
220
230
240
240
250
250
260
270
270
280
280
290
300
300
310
320
320
330
330
|
340
350
350
360
370
370
380
390
390
400
400
410
420
420
430
440
440
450
460
470
|
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血糖値25mg/dLなら220、75なら2、110なら0、140なら3、240なら55、290なら100、350なら160、560なら420が配点される。
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