オピニオンリーダーによる糖尿病ガイダンス

55. 患者高齢化時代において連続血糖モニターとSMBGを考える

池田 義雄 先生(糖尿病治療研究会名誉顧問)

池田 義雄 先生

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 55(2018年1月1日号)

糖尿病患者が1,000万人。増えた患者の大半は高齢者

 最近の糖尿病領域のトピックスの一つとして、推計患者数が1,000万人の大台に乗ったという「平成28年 国民健康・栄養調査」のニュースが挙げられます。同調査で初めて推計患者数が公表された平成9年は690万人でしたから、約20年で1.45倍に増えたことになります。このデータをもう少し細かく、年齢層別にみた場合、増加の主体は高齢者であることがわかります。

 具体的には平成9年調査で60歳代男性の17.5%が'糖尿病が強く疑われる者'でしたが、28年にはそれが21.8%に増加しており、さらに70歳代では11.3%から23.2%へと2倍以上に増加しています。女性もやはり高齢者層で増加しています。ちなみに40~50歳代で'糖尿病が強く疑われる者'の割合は、この間ほとんど変化していません。つまり、高齢者人口増加以上のスピードで糖尿病患者さんの高齢化が進んでいるわけです。

高齢患者さんの特徴

 さて、最近のもう一つのトピックスは、連続血糖モニターです。数年前からCGMが普及し始めた結果、HbA1cが比較的良好であっても大きな日内変動が起きている患者さんが少なくないこと、低血糖(特に夜間)の多くが見逃されていたことがわかってきました。昨秋にはインスリン注入ポンプ非使用下で連続測定可能な機器が臨床応用さ れました。そこで、高齢患者さんが多数を占める国内の糖尿病臨床の現状におけるその活用法を考えてみましょう。

 まず、高齢患者さんの血糖変動の特徴として、食後高血糖を来しやすいこと、低血糖の症状が非典型的になること、高齢になるほど重症低血糖のリスクが高くなることなどが挙げられます。また血糖変動の他にも、腎機能低下による薬剤蓄積傾向、認知機能低下による薬剤の自主管理困難、合併症や併発症の増加によるポリファーマシー、サルコペニア/フレイルによる転倒などが生じやすくなります。

 このように、加齢とともに良好な血糖管理が難しくなり、それによって低血糖が頻発しやすくなって、さらにそれが認知機能の低下や心血管イベントのリスクを高めることもわかってきました。そのため、2016年には日本糖尿病学会と日本老年医学会が「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を策定し、厳格な血糖管理を目指すことによ る予後の改善と低血糖リスクを患者さんごとに評価して、場合によっては従来よりも高めのHbA1cを目標とし下限値も設定することが推奨されるようになりました。

高齢患者さんの血糖値を連続的に測定することのメリット

 このような特徴をもつ高齢患者さんの血糖値を連続的に測定することで、まず考えられるメリットは、食後高血糖や予期せぬ低血糖をより把握しやすくなることです。特に低血糖が頻発している患者さんやそのご家族にとっては、たいへん心強く感じられるのではないかと思います。

 ただし、インスリン注入ポンプ非使用下で利用できる連続測定器は低血糖のアラート機能がない点に注意が必要です。また連続測定器の「血糖値」は、間質液中の糖濃度からの換算値のため過信は禁物で、低血糖の確認にSMBGが必須です。

高齢患者さんの血糖値を連続的に測定することのデメリット

 一方、デメリットについても考察してみましょう。

 まず気にかかるのは、連続測定で得られる膨大な情報量をいかに的確に把握し治療にフィードバックするのかという点です。低血糖や高血糖を捉えやすくなるということは、それらの見逃しが許されなくなるということです。もちろんこのこと自体は"デメリット"ではなく、糖尿病医療の進歩に違いありませんが、医師や医療スタッフに今まで以上のスキルアップが求められることは間違いないでしょう。

 次に「患者さんに情報が見えすぎはしないか」との不安が浮かびます。例えば、高血糖をリアルタイムで知り、それに対してインスリンを増やす、食事を減らすといった過剰な対応をしないかという懸念です。高齢患者さんがそのような対応をとって新たに低血糖が誘発されてしまうような事態は、厳に避けなければなりません。

連続血糖モニターとSMBGの使い分け

 これらの注意点は高齢患者さんに限ったことではなく、程度の差こそあれ若年患者さんにも当てはまることです。連続血糖モニターのデメリットを避けてメリットを生かすためには、その適応を慎重に判断することが求められます。そして、いったん導入した後は漫然と継続するのではなく、低血糖や高血糖になりやすいポイントが明らかになり次第SMBGに変更するなど、両者を適切に使い分けるようにしたいものです。

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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