オピニオンリーダーによる糖尿病ガイダンス

52. Once Weekly 製剤の功罪 ~その意義と療養指導上の問題~

難波光義 先生(兵庫医科大学病院 病院長 )

難波光義 先生

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 52(2017年4月1日号)

インクレチン関連薬だからこそのOnce Weekly製剤

 ここ数年で、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬がそれぞれ2種類、計4種類の週1回(Once Weekly)製剤が登場しました。いずれもインクレチン関連薬であり、単剤では低血糖を来しにくいこと、シックデイ時の休薬が他の血糖降下薬ほど厳格には必要とされずに安全性を保ちやすいことから、作用時間の長期化に向いているという特徴があり、新たな治療選択肢として徐々に存在感が増してきています。

 ただし作用時間の長期化という点では骨粗鬆症領域のビスホスホネート製剤が先行しています。ビスホスホネートは骨粗鬆症治療のキードラッグ的存在であるものの、空腹時に服用し、かつ服用後しばらく横になってはいけないなどの制約があり、患者さんにとって"飲みづらい"薬です。その"飲みづらさ"を少しでも解消して治療継続率を高めるために、連日投与から週1回製剤、月1回製剤、年1回製剤へと進化してきたという歴史があります。

薬物療法を「新規に1剤で」開始するなら、高いアドヒアランスを期待

 それでは、血糖降下薬の場合に作用時間 を長期化することに、どのような意義があるのでしょうか。まず言えることは、血糖降下薬にはビスホスホネート製剤のような"飲みづらさ"はないものの、服薬する薬の数が減ることはそれ自体、患者さんにとってメリットだという点です。毎日服用する薬の数を1剤でも減らすことによって服薬アドヒアランスが向上し、飲み忘れの減少につながる可能性があります。

 特に、初めて薬物治療を始める患者さんへの「最初の1剤」として週1回製剤を選択すると、患者さんの心理的なハードルを下げることができます。例えば、これまで薬物療法を行っていない患者さんなどで、人前 で薬を飲む(または注射する)ことを忌避している患者さんに、「週に1回、休みの日に 家で飲んで(注射して)ください」と伝えると、抵抗なく比較的スムーズに薬物療法を開始できることがあります。

介護負担軽減、ポリファーマシー対策としても積極的適応

 またシフトワークなど不規則な生活スタイルのために服薬アドヒアランスを保つことが難しいと考えられる人も週1回製剤の良い適応ですし、ご自身での服薬/注射が困難 な患者さんに週1回、訪問看護スタッフが投薬するという方法もあります。ポリファーマシー対策として週1回製剤を導入するのも有効ですし、連日投与に比べて若干薬価が安くなる点も医療コスト上のメリットです。肝心の血糖改善効果については従来の連日投与型製剤とほぼ同等のHbA1c低下作用が報告されています。

長所が短所にもなり得る! ~療養指導上の注意点~

 では反対に、作用時間が長期化することに何か問題はないのでしょうか?

かえって飲み忘れが増える可能性

 よく指摘されることは、「毎日複数の薬を服用していて1剤だけが週1回だと、かえって飲み忘れしやすくなるのでは?」との懸念 です。この懸念が当たっているのか否かまだエビデンス的には明確でありませんが、一般的な印象として「その可能性はありそう」と言うことに異論はないでしょう。糖尿病患者さんは血糖降下薬に加え併発症・合併症の治療のため数剤処方されていることが大半であり、仮に週1回製剤を飲み忘れたら血糖管理により大きな影響が及んでしまうことから、むしろ従来以上に服薬指導が大切になると言えるでしょう。

シックデイ時の対応

 週1回の投与で効果が得られるということは、いったん服用/注射したら少なくとも1週間は薬剤の影響を除去できないということです。服用/注射後にシックデイとなった場合、安全性の高いインクレチン関連薬とは言え、消化器症状による脱水や、他剤併用の場合には低血糖等の危険が全くないわけではないので、シックデイルールを事前にきちんと伝えておく必要があります。

未知の副作用の懸念

 週1回の服用/注射で済むということは、連日投与の薬剤よりも高いDPP-4阻害活性/GLP-1高値状態が維持されるということです。インクレチン関連薬は未だ新薬であり、未知の副作用が存在する可能性を完全には否定できていません。週1回製剤を使用する際には常にリスク/ベネフィットを考慮する姿勢を持ちたいものです。

患者さんの病識が欠如しやすい

 そして週1回製剤の使用に際して最も注意していただきたいことは、患者さんの病識が低下しやすいことです。週1回薬を服用するだけでHbA1cが低下すると、糖尿病とはそういう"容易い(たやすい)病気"だと認識されてしまい、治療の基本である食事・運動療法がおろそかにされる危険が生じます。

 特に、前述のような週1回製剤の良い適応である薬剤ナイーブの患者さんでは、この点が極めて重要です。薬でHbA1cが改善すればそれでよしとの判断は、医療者/患者ともに、厳に慎まなければいけません。週1回製剤という"便利な薬"の力を上手く生かしていくために、もう一度いま、糖尿病治療の原点に立ち返る姿勢を大切にしたいものです。

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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