オピニオンリーダーによる糖尿病ガイダンス

18. 糖尿病療養指導士活動の現状と
今後への課題

清水一紀 先生(愛媛県立中央病院糖尿病内分泌代謝内科部長)

清水一紀 先生

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 18(2008年10月1日号)

 ご存じのように糖尿病の療養生活は、 患者さんの自己管理が極めて重要で、自 己管理を支えるための患者教育は糖尿病 治療の柱といえます。糖尿病患者数の増 加やそれに伴う合併症対策に際して、糖 尿病療養指導士(CDE:Certified Diabetes Educator)の活動がますますその重要性を 増していますが、CDEをとりまく環境に は施設間差や地域格差があり、資格を習 得したにもかかわらずCDEとしての役割 が十分生かされていないケースも少なく ありません。また、様々な理由からCDE の認定更新率は当初の予想より低いもの になっています。このようなCDEをとり まく現状と今後の課題について考えてみ たいと思います。

自己研鑽とその方法

 CDEは日本糖尿病学会、日本糖尿病教 育・看護学会、日本病態栄養学会が母体 となって設立した日本糖尿病療養指導士 認定機構(JCBDE)が認定する日本糖尿病 療養指導士(CDEJ)と、各地域で設立・運 営されている機構が認定する地域糖尿病 療養指導士(LCDE)があります。CDEJは 全国で研修を行い、同じ試験で認定を行 うためレベルが一定化しますが、反面、 研修や試験などの時間や費用がかさむた め、CDE個人の負担も大きくなります。 一方、LCDEは各地域での運営が異なる ため、認定者のレベルがさまざまですが、 研修や試験などの移動距離や費用が少ない利点があります。どちらの認定であっ ても、認定後は自己研鑽を重ねることが たいへん重要です。現在のJCBDEは組織 力・資金力に乏しく、認定者に十分な講 習や研修を行うことが困難です。そのた めCDE認定者には、以下のような研修方 法を私は推奨しています。

  • 1)CDEの主体的学習
  • 2)自己の経験や体験のフィードバック
  • 3)新しい知識や技術を習得し情報を得る
  • 4)CDE同士の相互理解

 1)の「CDEの主体的学習」は、現在行っ ている生活指導に対して、必要な知識や 技術を自ら習得することです。食事療法 や運動療法、薬物療法などの基本的な治 療法が学習項目となりますが、職種によ って理解度が異なります。とくに薬物療 法は薬剤師以外の職種では十分な理解が ないことが多く、繰り返しの学習が必要 です。また、職種により必要な知識が異 なる場合もあります。例えば食事療法で は、栄養士は食事の聞き取りや栄養指導 を行うための知識や技術が必要ですが、 看護師は栄養指導の動機付けを高めてい くために必要な食事療法の知識が必要と なります。2)の「自己の経験や体験のフィ ードバック」とは、事例から学ぶことです。 過去に行った指導や体験を分析し、改善 点を見出し、次に生かせるようチームで 話し合います。話し合いをする際は、職 種や立場の違う者が参加すると、新たな 気づきが生まれやすくなります。3)の「新 しい知識や技術を習得し情報を得る」こ とが大切であることはいうまでもありま せんが、そのためには向上心を持つこと が必要で、自己満足や自信過剰になるこ となく、正しい情報を得るための努力が 大切です。そして、4)の「CDE同士の相 互理解」には、糖尿病患者の継続支援ネ ットワークづくりや、他施設や他県との CDE間交流の試みといった目的がありま す。

 このようなCDE認定後研修は、LCDE のある地域やCDE活動に熱心な糖尿病臨床医のおられる地域、あるいは糖尿病治 療研究会が行っている「医療スタッフの ための糖尿病セミナー」のような工夫を 凝らした研修会が各地で開催されていま すので、積極的な参加が望まれます。

課題と今後の展望

 自己啓発や学習姿勢に対する課題、研 修計画運営に関する課題、CDEの連携時 に発生する患者情報などの倫理的問題な ど、CDEが克服していかなければならな い問題は数多くあります。施設において は勤務交代、職場異動により実践現場か ら遠ざかってしまうといった問題もあり ます。さらに、認定看護師など、行政や 学会主体の糖尿病に関連する専門性を持 った資格も増え、混乱が生じていること も否めません。しかし、さまざまな課題、 問題を抱えながらもCDEは必要とされ、 その価値が高まっていることは事実で す。厚生労働省は患者さんの疾病自己管 理を重点目標としており、糖尿病合併症 管理料としてフットケアの保険点数化、 非インスリン治療患者への在宅血糖自己 測定の適応拡大や1型糖尿病における在 宅血糖自己測定の保険点数加算が行われ たことは、直接的ではないにせよCDEに とって追い風です。CDEがそれぞれの施 設や地域において、糖尿病患者教育やイ ンスリンリスクマネージメントの柱とな り、糖尿病専門医や糖尿病に造詣の深い 医師とともに、チーム医療を推進し、 CDEという存在が糖尿病治療に必要不可 欠な職種として今後も活躍されることを 願っています。

  • JCBDE:Japanese Certification Board for Diabetes Educator
  • CDEJ:CDE of Japan
  • LCDE:Local CDE

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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