糖尿病診療の目

糖尿病患者さんにおける血糖と体重の関係は?

松葉 育郎 先生(松葉医院 院長)

筆者について

 前回、血糖と体重の一般的な関係はどうなっているのか、特定健康診査・特定保健指導(特定健診・保健指導)の結果を紹介しました。実際に、生活指導で体重を下げると、どのくらい血糖値が下がるのかを知ることができました。血糖だけではなく、血圧、脂質の検査値も改善することも明らかになりました。

 基本的には、糖尿病でも体重の変動と血糖だけではなく、血圧、脂質の変動は正の相関にあると考えられています。その理由は、一言で言えば、食事・運動のエネルギーバランスからみればわかりやすい。食べ過ぎ、運動不足などがあれば、相対的にエネルギーバランスがオーバーなら体脂肪が蓄積される、マイナスなら体脂肪が燃焼されて体重は下がることになります。

 初診の患者さんには、生活指導で初めは食事・運動習慣の是正が図られます。当院での実際の例を図でお示しします(図1)。糖尿病薬などは使用せずに、栄養・運動指導だけで経過を追ったケースです。

図1

食事・運動療法の開始で、いままでの生活習慣がかわり、著明に血糖コントロールが改善している。体重は86.5Kgから80Kgまで下がり、肥満の解消へとつながった。体重減少に伴い、HbA1c値も並行して低下している。

 ここで、ひとつ強調しておかなければいけないことは、糖尿病ではある条件をもつ場合は この体重が下がれば、血糖が下がる関係が当てはまらないケースがあります。これは糖尿病治療のジレンマとして問題視されてきました。すなわち、血糖は下げて、見かけ上のHbA1cは改善するが、しばらく経つと、体重増加を伴い、また、血糖が上がってくるという悪循環を起こす場合があるのです。それは、スルホニル尿素(SU)剤(グリメピリド:アマリール、グリベンクラミド:オイグルコン、ダオニール、グリクラジド:グリミクロンなど)、チアゾリジン薬(ピオグリタゾン:アクトス)、インスリン注射製剤などの糖尿病治療薬が該当します。つまり、インスリン分泌を増加するSU剤、または、体内のインスリン濃度を生理的な範囲を超えて過剰にしてしまうインスリン製剤は、両刃のきつい薬であることを知っておく必要があります。

 インスリン抵抗性がある肥満患者だけではなく、太っていない患者さんにも当てはまることなのです。チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)はインスリン抵抗薬として評価できる薬剤ですが、体液貯蔵、浮腫などのため、体重増加の傾向が認められています。1年、2年という長期になると、これらの薬剤では、体重増加を来し、血糖値も増加傾向にあり、HbA1cも漸増するケースがあることは注意すべきことになります。これらの薬剤を使用する時は、常に体重増加を念頭に置かなければなりません。具体的な例をSU剤(図2)、インスリン注射製剤(図3)を使用した、それぞれの患者さんの体重の推移をお示しします。

図2

他院にてグリメピリド1㎎(アマリール)を処方されていたが、当院転院後の半年の経過観察ではHbA1cは5.8%まで改善してきてはいる。一方、体重63.5㎏が約3㎏漸増し66.8㎏、BMI28.6へ増加してしまった。グリメピリドは中止してメトフォルミンへ変更した。

図3

1型糖尿病を発症し、入院後、当院外来へ紹介された患者さん。最初は体重も減り、HbA1cも下がり、6.1%まで低下してきた。その後、食事療法の不徹底もあり、1年後には体重は約4㎏増加し、HbA1cも8.2%まで増加している。

 一方、体重が減少してきているのに、血糖値が増加してくることがあります。代表的な例は、顕著な高血糖が見過ごされて、糖尿病になっていることに気づかないで、しばらく放置されていて初診外来を訪れる患者さんです。多くは喉の渇き、頻尿、多尿などを訴えてこられます。また、既に糖尿病で診察を受けていても、今までと同じ生活習慣であるのに、食べ過ぎもなく、運動量も変わらない例で、体重と血糖の関係に乖離がある場合は、注意を要します。膵臓がんなどの悪性腫瘍、肝障害の進行(肝硬変など)、甲状腺機能亢進症などの合併症が併発していないかをチェックすべきです。

(2017年02月09日)

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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