糖尿病デバイス革命

4. CGMとインスリンポンプの新しいトレンド

村田 敬 先生独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター糖尿病センター
筆者について

 2020年2月にマドリードで開催された13th ATTD(Advanced Technologies & Treatments for Diabetes)でいくつか新しいCGMとインスリンポンプが展示されていたので紹介する。

 まず、米国のスタートアップ企業Metronom Health社が展示していた、酵素光学式(opto-enzymatic)CGMである(写真1・文献1)。外見はAbbott社のFreeStyle Libre sensorに似ているが、間質液中のグルコース濃度の測定原理が異なる。Medtronic社、Dexcom社、Abbott社などの酵素電極式CGMはブドウ糖が酵素で分解される際に発生する電子を検出するが、Metronom CGMはブドウ糖が酵素で分解される際に特殊ポリマーが反応して発生する蛍光を検出する(文献2)。ちなみに、埋め込み型光学式CGMであるEversense(文献3)は、ホウ素酸化合物にブドウ糖が結合した際の蛍光の変化を検出して間質液中のグルコース濃度を測定するが、この際、ホウ素酸化合物は非酵素的に反応するため、180日間の長期にわたって継続使用が可能である(文献4)。 Metronomの酵素光学式CGMは14日間の使用が想定されており、スマートフォンにリアルタイムでグルコース値を表示する点で、FreeStyle LibreやFreeStyle Libre 2(文献5)と異なる。まだ未承認、未発売の機種のため、価格は不明であるが、形状的に一般使用が可能になればFreeStyle LibreやFreeStyle Libre2と競合することになるであろうと予想される。

Mtronom社製CGMのプロトタイプ
写真1: Mtronom社製CGMのプロトタイプ

 一方、Dexcom社とTandem社は、それぞれのCGM G6(文献6)とインスリンポンプt:slim X2を連動させることで、インスリンポンプによる基礎注入の自動制御を実用化している(写真2)。自動制御には低血糖予防機能を実装したBasal-IQ(文献7)というバージョンと、低血糖予防だけでなく高血糖が予測される時に基礎注入を増量する機能を実装したControl-IQ(文献8)というバージョンの2種類がある。競合するMedtronic社のhybrid closed-loop pump(HCLP)であるMiniMed 670G(文献9)がCGM、ポンプ共に内製しているのに対して、Dexcom社とTandem社は企業連合で製品化しているところが興味深い。なお、t:slim X2は液晶タッチパネルを有し、小型で薄い特徴があるが、リザーバーは独特の形状をしている(写真3)

DexcomG6とt:slim X2
写真2:Dexcom G6とt:slim X2

本体から取り外したt:slim X2のリザーバー
写真3:本体から取り外したt:slim X2のリザーバー

 なお、Roche社製のインスリンポンプAccu-Check Insight(文献10)は、Novo Nordisk社製のインスリン充填済みリザーバー(1.6ml、160単位入り)であるNovoRapid PumpCart(文献11)を使用可能で、リザーバー充填の手間がなく利便性が高い(写真4)。 いずれも日本国内には未導入の機種であるが、CGMおよびインスリンポンプの今後の発展の方向性を示唆しており、興味深いところである。

Accu-Check InsightとNovoRapid PumpCart
写真4:Accu-Check InsightとNovoRapid PumpCart

(写真はすべて2020年2月マドリードで開催された第13回ATTDにて筆者が撮影)

  • ※本稿は、医療従事者の生涯教育に資するために執筆されたものであるため、日本国内では未承認の医療機器、未承認の医薬品、または未承認の使用方法に関する情報が含まれている場合があります。このため、医療機器および医薬品の実際の使用にあたっては、添付文書を熟読の上、日本国内で承認された条件に従って使用してください。
  • ※本稿には、コラムニストの個人的見解が含まれています。
  • ※紹介した参考文献の原文を読むためには、リンク先のホームページへの登録・料金が必要となる場合があります。

参考文献

1)
Metronom Health, Revolutionizing CGM through innovative technology and patient-centric design.
2)
Introducing the New CGM by Metronom; diabetes daily.
3)
村田敬:皮下埋め込み型光学式CGM「Eversense」, 糖尿病リソースガイド「糖尿病デバイス革命」
4)
Eversense
5)
FreeStyle Libre 2
6)
Dexcom, G6
7)
Tandem, Basal-IQ Technology
8)
Tandem, Control-IQ Technology
9)
Medtronic, MINIMED™ 670G Insulin Pump System
10)
Accu-Chek Insight insulin pump
11)
NovoRapid PumpCart
2020年07月09日
インスリンやメトホルミンにGLP-1受容体作動薬を追加 HbA1cが低下
2020年07月09日
重症COVID-19患者に対する「フサン」と「アビガン」の併用療法 8割以上が軽快しICU退室という結果に
2020年07月09日
COVID-19対策を行っている企業ほど、従業員の精神的な健康度や仕事のパフォーマンスは高い
2020年07月02日
糖尿病患者向け経済的支援を開始 COVID-19の影響で治療継続が難しくなった患者の医療費を支援 日本メドトロニック
2020年07月02日
GLP-1受容体作動薬の週1回投与単回使用製剤「オゼンピック皮下注SD」を発売 効能・効果は2型糖尿病
2020年07月02日
超速効型インスリン製剤での日本初のバイオシミラー インスリン リスプロBS注HU「サノフィ」を発売
2020年07月02日
世界初の経口投与できるGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠」 2型糖尿病治療薬として承認取得
2020年07月02日
COVID-19発症1型糖尿病患者はDKAに要注意
2020年07月01日
東京糖尿病療養指導士(東京CDE) 2020年度申込を受付中 講習会はeラーニング開催
2020年06月25日
ストレスが閉経後の2型糖尿病女性の冠動脈イベントを増やす
糖尿病プラクティス