日本臨床内科医会「かかりつけ医のためのWEB講座」より
かかりつけ患者のCKD診療をどこまで行うか
~専門医と連携するPD診療の始めかた~
医療法人社団家族の森
多摩ファミリークリニック
髙木 暢先生
腹膜透析(PD)診療に興味はあるが、かかりつけ医が関与するにはハードルを感じる、といった先生もおられるかもしれません。しかしながら、かかりつけ医でも専門医・多職種と連携することでPDの管理・実践は十分に可能です。今回は、かかりつけ医が慢性腎臓病(CKD)患者をどこまで診るのか、またPDという選択肢を知っておき、Shared Decision Making(SDM:共同意思決定)を行うことの重要性、さらには地域の専門医との連携の仕方など、かかりつけ医が行うPD診療の実際について、髙木暢先生が解説します。
※本記事は下記セミナーの講演内容に基づき作成しています。
日本臨床内科医会「かかりつけ医のためのWEB講座」
開催日:2026年5月28日
スポンサードセミナー:かかりつけ患者のCKD診療をどこまで行うか ~専門医と連携するPD診療の始めかた~
講師:髙木 暢先生(医療法人社団家族の森 多摩ファミリークリニック)
提供:株式会社ヴァンティブ メディカルアフェアズ部
日本の腹膜透析の現状
腹膜透析(PD)は、通院治療で医療従事者が対応する血液透析(HD)に対し、自宅で原則毎日、患者が行う透析です。HDの場合、旅行等の際には滞在先の医療機関へ、滞在期間に合わせて1回~数回の臨時透析を依頼する必要があります。一方PDであれば、滞在先で必要となる器具や透析液をあらかじめ手配しておくことで、患者さんのペースで行えます。また、HDは週3回の通院が必要であるのに対し、PDは基本的に月1回の受診で済みます。通院頻度が少ないことは、患者さんにとって大きなメリットの一つかと思います。
しかしながら、日本ではPDの患者数は非常に少ないのが現状です。日本透析医学会による2024年末時点の調査では、日本国内で慢性透析を受けている患者さんのうち、HDが約97%であるのに対し、PDはわずか約3%です。この割合はここ15~20年の間で大きく変わっていません1)。
私見となりますが、日本でPDが少ない理由としては、まずPDを導入する医療機関が少ないことがあると考えます。PDの患者さんを受け入れる在宅医療機関も同様です。また、私たちかかりつけ医がPDの患者さんに接する機会も少ないですし、なにより医療従事者の多くがPDのことをあまり知っておらず、社会全体でも認識がされていないといった現状があるように考えます。
CKDの進行に伴い、自院に通う患者は減少していく
かかりつけ患者さんに、腎機能低下、慢性腎臓病(CKD)進行が認められた場合、どのように専門医と関わっていくことになるのでしょうか。日本腎臓学会のガイドライン2)では、CKDの病期をG1~G5に分類しています。G1〜G2のうちはかかりつけ医で診ていき、血液検査、尿検査のフォローアップを行っていくことになります。CKDが進行するにつれて専門医への紹介頻度は増加していきますが、腎機能が悪化していけば、おのずと専門医への通院が増加し、逆に自院に通う患者さんが減少していくことになります。
転院した患者の転帰はわからないまま、腎代替療法のSDMの機会もない
私たちかかりつけ医は、CKDの患者さんを専門医へ紹介すると、CKDの進行により紹介先に転院してしまい、その患者さん (長い関係性があった患者さん)とは会わなくなることが多いです。そのような患者さんに対しては、最終的にHDが導入されているだろうと推測されるケースが多いかと思います。しかし、実際の転帰はわからないままです。
腎代替療法についても、かかりつけ医が患者さんにHDの説明をすることはあっても、PDの説明をすることは少ないのではないかと思います。また近年、Advance Care Planning(ACP:人生会議)の重要性が言われていることは先生方もご存じの通りかと思います。しかし、患者さんと一緒に考え、腎代替療法を選択するといった、Shared Decision Making(SDM:共同意思決定)を行う機会はなかなか訪れず、腎代替療法をどのように説明したらよいかわからない。また、かかりつけ患者だった方について、紹介先の専門医から「PDを行うことになったので、後の診療はお願いします」と逆紹介された場合、どうすればよいのかわからない。そのような先生方も多いのではないでしょうか。
かかりつけ患者にPDという選択肢があることを知っておく
ここからは、かかりつけ患者さんが透析導入となる場合の流れを説明します。まず、HDを導入した場合ですが、透析施設への週3回の通院を継続いただくことになります。一方、通院が不可となる場合、HD継続の意思決定をしていただかなければなりません。その際、通院が難しいだけなのか、あるいはHD自体の継続が難しいのかを確認する必要があります。
通院は難しいけれどHDを継続したい、という場合、療養型病院への入院か、患者さん自身で穿刺などを行っていただく在宅HDのいずれかが選択肢となります。ただし、在宅HDはまだあまり普及しておらず、選択肢になりづらいでしょう。また、療養型病院については、生活圏にある病院に入院することはハードルが高く、遠方の病院への入院となるケースも少なくありません。
HDを継続したいけど入院になるのは嫌であると、かかりつけ患者さんから相談が来た場合、どうするのがよいでしょうか。HDを継続するのであれば入院するしかなく、一度入院すると退院できないことを伝えなければなりません。それも嫌だとなると、そのまま透析を見合わせることになります。その場合、残念ながら1週間ほどでお亡くなりになってしまうことが多いため、自宅療養の継続は困難となってしまいます。
しかしながら、かかりつけ患者さんに「疾患があってもできるだけ元気に長生きしてほしい」と願う先生方は、たくさんいらっしゃることと思います。そういった局面で、PDという選択肢があることを私たちかかりつけ医が知っていれば、患者さんに情報提供が可能となります。その場合、PDを導入する医療機関がどこにあるのか知っておく必要があります。またPDを導入する患者さんが必ずしも通院可能な状態とは限りませんので、PD患者さんを受け入れる在宅医療機関についても把握しておくことが大事です。
かかりつけ患者さんでPDを導入する場合、HDから移行するケースがあります。そのような症例では、紹介いただいた専門医と連携し、併診あるいは診療をかかりつけ医のほうで引き継いでいくことになります。一方で、初めからPDを導入するケースもあります。中には、PD導入後、どうしても透析効率が悪くなってしまいHDへ移行する方もいます。また、週1回のHDと週5〜6日のPDとのハイブリッドで実施するパターンもあります。
PDを順調に継続できている場合でも、加齢に伴い、患者さん自身での自己管理が困難になることもあります。その場合、ご家族や訪問看護師にサポートしてもらいPDを続けるAssisted PDという方法もあります。また通院が難しくなった場合には、訪問診療を導入することで、専門医の外来通院を続けなくてもPDを継続することが可能となります。
CKD患者に対するかかりつけ医の役割
CKDが悪化したかかりつけ患者さんから、「透析になるの?」と聞かれたことが一度はあると思います。また、「透析は大変だと聞いたのでやらない」と、患者さんやご家族が決断されることもあるのではないかと思います。適切にACPが行われていればよいですが、そうではなく早計に決めてしまう背景には、医療従事者からの言葉がうまく届いていないこと、ひいては医療従事者を含め、社会的に「透析=HD」という認識が多く持たれているためではないかと思います。
一方、かかりつけ医から腎臓専門医に紹介をする場合は、ガイドラインの基準に則って適切なタイミングで紹介することになりますが、日常診療で専門医への紹介を検討するような患者さんでは、高齢の方、ADLが低下している方、あるいは在宅医療を受けられている方なども多いと思われます。そういった患者さんでは積極的な専門医への外来受診が難しく、結果的に専門医への紹介ができないままとなってしまうこともあるのではないでしょうか。
そこで、私たちかかりつけ医がPDという選択肢があることを知っており、腎臓専門医と連携していれば、患者さんの選択肢は大きく広がります。
どこの病院、どこの専門医が各治療法、とくにPDを得意としているのかなどの情報は、「透析病院ドットコム」というサイトで検索が可能です。ぜひ先生方の診療されている地域で、どういった病院、専門医の先生がおられるか確認いただければと思います。
かかりつけ医に求められる役割としては、以下が大事であると考えます。
- ・腎代替療法を説明し、一緒に考えること(SDM)
- ・適切なタイミングで専門医に紹介すること
- ・患者さんやご家族、かかりつけ医の希望する腎代替療法を受け入れてくれる専門医を知っておくこと
- ・専門医に紹介して終わりにせず、可能であれば専門医と併診し、情報をやりとりすること
かかりつけ医が抱えるPD診療への懸念と不安
ぜひ日本腹膜透析医学会(JSPD)の連携認定医取得を
私は以前、日本プライマリ・ケア連合学会のセミナーでPDのワークショップを担当したのですが、その際に参加者であるかかりつけ医の先生方にアンケートを行いました。すると、「専門医との連携」「トラブルシューティングの方法」などといったことがPD診療の懸念として挙がり、PD診療の全体像がイメージしにくい現状が浮き彫りになりました。また専門医との連携でも「適切なタイミングがわからない」といった不安も寄せられました。
私自身も、PD診療を始めたいと考えても、最初の一歩をなかなか踏み出せませんでした。そこで、PD診療を始められる際には、日本腹膜透析医学会(JSPD)に入会し、連携認定医を取得していただくことをお勧めします。取得の条件はそれほど難しくなく、テキストもわかりやすいものですので、ぜひご検討いただければと思います。
地域での「顔が見える関係」の構築が重要
かかりつけ医でPD診療を行っていくにあたっては、専門医と顔が見える関係を構築することも重要です。地域の医師会や基幹病院の勉強会・懇親会に参加し、ここでぜひ、腎臓専門医の先生と仲良くなってください。また、CKDで紹介した患者さんはできるだけ併診し、診療情報提供書をまめにやりとりすることをお勧めします。令和8年度診療報酬改定でも「連携強化診療情報提供料 150点」が算定できる場合がありますので、ぜひ活用してください。また、逆紹介された患者さんの返書も、経過を含めて丁寧に報告していただき、必要時に紹介できるように日頃からの連携に力を入れておくことをお勧めします。
顔が見える関係の構築が重要であるのは、訪問看護師においても同様です。PD患者への対応に慣れている地域の訪問看護ステーションを専門医から教えてもらい挨拶に伺う、訪問看護に同行してPD患者のケアを見学しておくなど、関係を築いておけば、トラブル時にも迅速に連絡をいただけるようになると思います。また、専門医との連携や、訪問看護ステーションとの連携がスムーズになり、先生方ご自身のPD診療への不安感が減ってきたところで、専門医と相談のうえ、併診する基幹病院から訪問看護指示書を引き継ぎ、自院から指示書を発行することも一つです(「訪問看護指示料 300点」が算定可能です)。
このような顔が見える関係を構築していくと、PD患者さんが地域で生活するうえで何が必要なのかが見えてきます。そういったことを、ケアマネジャーや地域包括支援センター、行政なども含め、地域で課題を共有し話し合っていくことが重要になるかと思います。
かかりつけ医が行うPD診療の実際
実際に、かかりつけ医である私がPD診療の際に行っていることを以下に挙げます。
- ・体液管理
- ・感染リスク部位の確認
- ・貧血のケア
- ・電解質とCKD-MBDの対策
- ・栄養指導
上記とともに療養環境の調整を行うことも、かかりつけ医の診療内容の一つです。PDはHDに比べて食事制限が緩く、カリウムも大きな制限はありません。一方で、便秘になってしまうと透析の効率が落ちてしまうため、食事内容の評価は必要になります。また、ADL低下により転倒を起こしてしまうと、腹部カテーテルの不具合につながりえます。そのため、住宅の状況なども含め、本人、家族の精神的・肉体的な負担状況を把握し、多職種と共有、相談することが大切です。
また、とくに大事になるのは感染症対策です。PD患者では、出口部、カテーテルからの感染や腹膜炎といったリスクがあります。これらの兆候を見逃さないようにし、発見したら速やかに対応してください。初めは、その都度、専門医と相談し、一例ずつ経験を積むことがPD診療への不安感の払拭につながると思います。また、排便コントロールや皮膚トラブル、全身のかゆみなどを訴える患者さんもおられます。こういったマイナートラブルについてはできる限り非専門医で対応し、難しければ専門医に相談します。
令和8年度診療報酬改定 基幹病院とかかりつけ医の連携を推進
最後に診療報酬についてお話しします。かかりつけ医でのPD診療では、「在宅自己腹膜灌流指導管理料」を月1回算定可能です。4000点という高い点数が設定されており、また月2回以上の診療があった場合、2000点の追加が月2回まで可能です。訪問診療を行っている場合は、これらの点数に加えて「在宅時医学総合管理料」を合わせて算定可能です。
これまで「在宅自己腹膜灌流指導管理料」は、一つの医療機関だけ、つまりかかりつけ医か基幹病院のどちらかでしか算定できませんでした。しかし、令和8年度の診療報酬改定では、基幹病院とかかりつけ医の連携によるPD管理の推進を目的として、指導管理料が二つに分かれ、かかりつけ医が4000点、専門医はかかりつけ医からの求めがあった場合に、フォローアップとして1500点という配分に変更となりました3)。
かかりつけ患者のCKD診療では、地域の多職種・専門医との連携が重要
かかりつけ患者のCKD診療では、なにより適切な専門医につなげることが重要です。そのためには地域における腎代替療法の状況を把握することが必要ですので、先ほども紹介した「透析病院ドットコム」をぜひ活用ください。
専門医の先生へ紹介された後に併診体制を作ることも大切です。そのなかで、ぜひかかりつけ医である先生方からも腎代替療法について患者さんへ説明をお願いします。しっかりとSDMを行っていただければ、患者さん自身がより深く考えたうえで腎代替療法を選択いただけるものと思います。
患者さんがPDを選択された場合は、かかりつけ医として外来診療から訪問診療まで一括して管理し、訪問看護師ら多職種と顔の見える関係で連携していきます。先生お一人では不安に感じられるところだと思いますが、多職種・専門医としっかり連携しながら、PD診療に取り組んでいただけますと幸いです。
参考文献
- 1)正木崇生ほか: 日本透析医学会雑誌. 2025; 58(12): 524-590.
- 2)日本腎臓学会編: CKD診療ガイド2024. 東京医学社, 東京, 2024.
- 3)令和8年度診療報酬改定 Ⅲー1 患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価-⑰
医療法人社団家族の森 多摩ファミリークリニック
髙木 暢(たかぎみつる)
島根医科大学卒業、川崎市立井田病院緩和ケア内科を経て、2012年10月より多摩ファミリークリニックに着任。川崎市多摩区で常勤医師6人のグループ診療体制で、プライマリ・ケアの領域で外来診療と訪問診療を多職種・他機関と連携して行っている。特に、腎臓専門医との連携による血液透析患者や腹膜透析患者の訪問診療を経験するなかで、腹膜透析の魅力と可能性を感じ、プライマリ・ケアや在宅医療の現場での普及を目指している。日本内科学会認定内科医、日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医、日本腹膜透析医学会連携認定医。
提供:株式会社ヴァンティブ メディカルアフェアズ部

