糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第40回 インスリンとGLP-1受容体作動薬の新配合薬

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 66(2020年10月1日号)

■はじめに

 20年前、私がインスリン分泌不全の患者の血糖コントロールを良くしようと思ったら、 basalとbolusを使用する強化インスリン療法(1日3~4回注射)が定番でした。しかし2003年持効型インスリンのグラルギン(ランタスⓇ)が出た後、経口血糖降下薬(OHA)に1日1回basalインスリンを併用する「BOT(Basal supported oral therapy)療法」がメーカーのキャンペーンもあり推奨されました。しかしインスリンを増やしたり、併用薬を増やしても食後高血糖が抑制できない症例が数多く見られます。かといって1回注射を3、4回に増やす「抵抗感」は、初めてインスリン注射をした時以上に強く、これは患者だけでなく医師の意識の中でも大きな障害となるとの問題をいつも感じていました。

■BasalインスリンとGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の欠点

 Basalインスリン1回注射は便利ですが、 ①食後血糖を抑制できない ②体重が増加しやすい ③低血糖回避のため十分量のインスリンが使えない。一方GLP-1RAは、 ① 空腹時血糖値が正常化しにくい ②残存インスリン分泌能が低いと有効性が低い ③消化器症状等が出る例がある ④製剤が高価だという問題があります(文献1)。  しかし併用すればどうでしょうか。インスリンの糖新生抑制、グルコース取り込み増加、GLP-1RAの食欲抑制、胃排出遅延による血糖スパイク減少などにより、欠点がかなりの部分まで補完されます。

■ゾルトファイ配合注

 持効型溶解インスリンアナログのデグルデク(トレシーバⓇ:IDeg)とヒトGLP-1RAのリラグルチド(ビクトーザⓇ:Lira)を一定比率で配合した配合剤インスリン デグルデク/リラグルチド(ゾルトファイⓇ:IDegLira)が2019年9月に日本で初めて登場しました。用量単位は「ドーズ」で、1ドーズはIDeg 1単位とLira 0.036mgです。例えば肥満だからと、リラグルチドを1.8mgに合わせて使用するとインスリン量は50単位とかなりの量になってしまいます。
 国内の第3相試験が2つあり結果を示します。DUAL Ⅰ Japan試験(文献2)は日本人2型糖尿病患者で、①IDeg群 ②1.8mg注射のLira群 ③IDegLira群をOHAに上乗せした試験です。819例の52週までの評価で、HbA1cはベースラインからIDeg群-1.80%(271例)、 Lira群-1.80%(273例)に対しIDegLira群-2.42%(275例)と有意に改善し、IDegLira群の低血糖はLira群の0.48倍と有意に少ない結果でした。
 DUAL Ⅱ Japan試験(文献3)は、basalインスリンまたは、混合型/配合溶解インスリンとメトホルミンで治療している患者の前治療のインスリンをIDegLiraまたは、IDegに切り替え比較した試験です。210例の26週評価で、IDeg群 -0.65%(105例)に 対 し て、 IDegLira群では-1.95%(105例)と有意に改善し、26週の低血糖・夜間低血糖は同等でした。

■ソリクア配合注

 2020年6月に発売されたのが、グラルギン(ランタスⓇ:Gla)とリキシセナチド(リキスミアⓇ:Lixi)の配合製剤の「インスリン グラルギン/リキシセナチド(ソリクアⓇ:GlaLixi)です。海外ではLixi 1μgに対して、Gla 2単位と3単位の2製剤が承認されていますが、日本のみ1単位製剤です。1:1と聞いたときにすぐにリキスミアを使い込める製剤と感じました。というのもALOHA Studyで、日本人ではグラルギンの1日使用量は90%以上の症例が20単位未満との報告があるからです(文献4)。私の使用経験ではリキスミア自体は有効性が高い製剤とは思えませんでした。1:1製剤ならインスリン量よりLixiの薬効を十分発揮できる製剤比率になって、やっと本剤が日の目を見た印象です。Glaに対するGlaLixiの有効性安全性を検討した第3相LixiLan JP-O2試験(文献5)では、26週でHbA1cはGla群-0.76%に 対してGlaLixi群 で-1.40%。特に食後2時間血糖の変化はGla群で-23.5mg/dLに対しGlaLixi群で-109.6mg/dLと確かに著しい食後高血糖改善効果が見られています。
 副作用でGLP-1RAにつきものの悪心ですが、LixiとGlaLixを比較したJP-O1試験(文献6)の26週では、Lixi群26.9%に対しGlaLixi群14.3%と少なかったのは、基本の5ドーズから開始して1ドーズずつ細かく用量調節できるためと考えます。ゾルトファイもDUAL Ⅰ Japan試験ではLira群8.4%に対してIDegLira群3.3%で、強い悪心は少ないと報告されています。

■配合剤使用上の副作用と注意点

 配合剤なのでインスリンは低血糖、GLP-1RAは悪心、嘔吐、食思不振という両方の副作用に注意することになります! さてこれらの製剤はドーズによってインスリンとGLP-1RAの量が変化するため、2次元指標での指導が必要となるわけです。現在インスリンかGLP-1RAのどちらかのみから本剤に切り替える場合、配合比率が動かせないためドーズ設定に困ると思います。実際GLP-1RAの量を意識しすぎて失敗した例があると聞きました。私はやはり「空腹時血糖を基準に考え使用量を決定する」のが、予期せぬ低血糖を防ぐ基本だと思います。

参考文献

  • 1) 加藤光敏: 第34回<GLP-1受容体作動薬-1>. BOX & Net.No.60,2019.
  • 2) Kaku K et al.Diabetes Obes Metab,21(12);2674-2683,2019.
  • 3) Watada H et al.Diabetes Obes Metab,21(12):2694-2703,2019.
  • 4) 大谷哲也 : 新薬と臨床,60(3): 458-475,2011.
  • 5) Terauchi Y et al.: Diabetes Obes Metab, Apr14.doi :10.1111/dom.14036,2020.
  • 6) Watada H et al.Diabetes Care,43(6) :1249-1257,2020.

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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