糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第14回 SGLT2阻害薬(2)

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 40(2014年4月1日号)

 現在6種類のSGLT2阻害薬(以下、SGLT2i)の申請が出されていますが、1月末に国内初の承認がイプラグリフロジン(スーグラ®:以下イプラ)に下りました。今後、他剤も順次承認予定とみられます。当連載第10回でも書いたように、同薬は尿糖を出さ血糖を下げる薬で、従来とは全く異なる作用機序であることが注目されています。ただし、同薬の作用機序や国内外の情報から、適応を誤らず、注意深く処方後観察をすべきであると考えます。今回は、トップで市場に登場するイプラの特徴を念頭に解説してみます。

必須の知識:尿糖排泄閾値

 ブドウ糖は腎糸球体で全量が濾過され原尿となります。健常人では約180g/日の糖が原尿に出て、約160gが近位尿細管のS1,2セグメントでSGLT2より吸収されます。S3セグメントではSGLT1により残り約20gが吸収され尿中には出ません。しかし、一定以上血糖が上昇すると糖の再吸収能を超え尿糖が出現します。これが尿糖排泄閾値です。昨年、当院で行った軽症の2型糖尿病患者さんに1週間の生活をCGMや尿糖計等で追った変動試験結果を参考にしてください(文献1)。

 さて、血糖コントロールの良くない患者さんではどうでしょうか?尿中に剥離してくる尿細管上皮を用いた研究で、2型糖尿病では健常者と比較してSGLT2のmRNAの発現量、蛋白発現量、ブドウ糖取り込み量は増加(文献2)。さらに閾値が上昇しており、ダパグリフロジンで低下するのが認められます(文献3)。従ってSGLT2iは血糖が高いにも関わらず、2型糖尿病では閾値が上昇する悪循環を改善する薬とも言えます。

注意すべき事項

 次に、注意すべきポイントを挙げてみます。①浸透圧利尿での脱水注意 ②尿路・性器感染症(特に女性)③栄養状態不良、痩せ症例は当面使用しない ④高齢者ではサルコペニア助長に注意 ⑤70歳以上の高齢者は原則適応外 ⑥糖質制限食施行者へは要注意喚起 ⑦併用薬剤によっては低血糖増加が予測される ⑧血中・尿中ケトン体陽性の解釈 ⑨脳血管疾患既往者は個別に検討 ⑩血糖改善は腎保護ながら中等症以上の腎障害例は効きが悪く、長期の影響は未知数。以上、私が処方時に注意しようと考えていることを書きましたが、医師によって判断は異なるであろうことを申し添えます。

尿路感染の問題

 最も質問が多いと思われる尿路感染症について、イプラ50mg使用の女性のデータを示します。性器感染症は女性ではプラセボ群(P群)1.7%に対し、イプラ群5.1%と確かに増加していました。尿路感染症ではP群7.6%、イプラ群4.1%と増加はみられませんでした。他のSGLT2iの場合、欧米では尿路感染が10%余りとされています。これは日本人が毎日入浴し、温水洗浄便座のある国民だからとも言われます。また性的活動でも淡白になり易い国民性も関係する気がします。いずれにせよSGLT2iは過去に感染を繰り返した方には使用を控えるべきでしょう。(他の注意点は次号で)

まとめ

 血糖低下作用の他、脂肪燃焼による体重減少、浸透圧利尿による血圧低下、尿酸値低下、アディポネクチン増加等が報告されており、肥満傾向を持つ患者に良い適応と思われます。しかし長期的な安全確認はこれからです。SGLT2i使用者は、フルマラソンの日は服用中止など、患者本人が症状を予防、または出現した場合に気づく服薬指導が必要な薬であり、医師はもちろん薬剤師さんの役割が特に大きな薬と考えます。SGLT2iが患者さんの福音となるよう、慎重に育てていく気持ちが大切だと思います。

参考文献

関連情報

筆者より -SGLT2阻害薬の適正使用について-

 これまでSGLT2阻害薬のシリーズで、「難しい薬なので、適応を考えて充分慎重に」と書いて来ました。SGLT2阻害薬はとても良く効く症例を経験する反面、発売後は脳梗塞など死亡例を含め重大な副作用が報告されています。これまでの情報では直接の因果関係ははっきりしないものが多いとされています。胃薬を服用して脳梗塞で死亡しても薬のせいとは言われませんが、この薬は利尿作用による脱水注意等々があるため、直接関係がなくても薬の副作用で死亡とされがちです。糖尿病患者でなくても、年齢とともに脳梗塞・心筋梗塞など死亡率が高くなるのが人間の宿命です。脳梗塞などが増加する高齢者や、動脈硬化が既に進行している方にも原則として投与を避けるのが無難です。また、副作用かと思ったら、すぐに服薬を中止する指導が必要と思います。(2014年11月)

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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