糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第6回 GLP-1受容体作動薬

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 32(2012年4月1日号)

GLP-1受容体作動薬「リラグルチドとエキセナチド」

インクレチンについて

 ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)はインクレチンという消化管ホルモンの一つで食事摂取により小腸下部から分泌されます。GLP-1は血糖依存性のインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、食欲抑制、食物の胃からの排出遅延、膵β細胞保護作用などを有しますが、体内ですぐにDPP-4(Dipeptidyl Peptidase-4)によって分解されてしまいます。 そこで 開 発されたの がDPP-4により分解されにくいGLP-1受容体作動薬の注射剤で、現在使用されている製剤は、ヒトGLP-1アナログ(リラグルチド:商品名ビクトーザ)とGLP-1受容体アゴニスト(エキセナチド:商品名バイエッタ)の2種類です。

リラグルチド

 リラグルチドはヒトGLP-1の34位のリジンをアルギニンに置換して、 26位のリジンをパルミチン酸(脂肪酸の一つ)でアシル化してアルブミンとの結合力を強くして作用時間を長くしたものです。リラグルチドは、食事運動療法のみの2型糖尿病患者に単独で、またはSU薬を使用している2型糖尿病患者に追加使用します。副作用軽減のために初回は0.3mgから、そして様子を見ながら1週間ごとに0.6mg、 0.9mgと増量します。併用可能な経口血糖降下薬はSU薬のみです 1) 。2012年末現在、49カ国で使用されています。

リラグルチド治療における留意点

 医療スタッフが留意すべき重要なポイントは、リラグルチドはインスリンの代用薬にはならないということです。このためインスリン依存の患者さんで切り替えると、高血糖・ケトアシドーシスを誘発する危険があります 2) 。この点はエキセナチドも同様です。患者指導に際しては、消化器症状の出現する可能性が高いことと、増量は経過を見て慎重に行うことを告げておきます。なお単独投与において低血糖が起こることはまずありませんが、SU薬併用に際してはSU薬減量後を原則とし、併用開始後の数日間についての低血糖対策を欠かしてはなりません。

エキセナチド

 北米の乾燥地帯にはアメリカドクトカゲ(Gila Monster)が生息していますが、獲物に噛みつくと下顎の毒腺からの毒液が傷から入り呼吸中枢を麻痺させます。ドクトカゲは大きな獲物を飲み込んでも血糖は全く上昇しません。この事象に注目して開発されたのがエキセナチドです。すなわちエキセナチドはこの唾液より単離された39個のアミノ酸からなるペプチド(Exendin-4)を人工的に合成したもので、2005年4月に米国で、日本では2010年10月に新薬として承認され、現在90以上の国または地域でのべ180万人に使用されています。血糖・体重・脂質への効果等が明らかにされています 3) 。

エキセナチド治療と患者指導のポイント

 エキセナチドは、SU薬を使用しても効果不十分な2型糖尿病患者に用います。SU薬との併用が保険給付の必須事項ですが、BG薬またはチアゾリジン薬との併用もできます。エキセナチドは朝夕食前60分以内に皮下注射します。1回5μgから開始し、 1カ月以上の経過観察後に10μgへの増量について判断します。これは海外と同じ用量です。エキセナチドの週1回製剤も開発されており、利便性の向上が期待できます。

 注意すべき副作用は①悪心、嘔吐、下痢・便秘、②急性膵炎(頻度0.7%)、③腎不全、④SU薬との併用に際しての低血糖などです 4) 。なお両薬剤とも抗体の産生される症例を認めますが、有効性に影響のない症例が多いとされています。

参考文献

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※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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