糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第12回 スルホニル尿素(SU)薬(2)

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 38(2013年10月1日号)

 軽症糖尿病患者の高血糖でしたら食後を下げてくれるα-GIやグリニド系薬剤、DPP-4阻害薬などが選択できます。しかしインスリン分泌が減少している患者の高血糖改善における非インスリン療法となると、やはりSU薬が必要になってきます。ポイントは「SU薬を持効型インスリンとして少量使用する」感覚です!

SU薬と虚血性心疾患

 前回、血糖降下作用としてSU薬はコストパフォーマンスが抜群と書きました。確かにそうですが、もしもその選択によって虚血性心疾患が増加するとなると話はだいぶ変わってしまいます。SU薬は虚血性心疾患を増やすのではないかという脅迫観念を持つ医師は昔から多いと思います。

 それが疑われた最初の報告は、1970年に報告されたUGDP(University Group Diabetes Program)studyです。米国12大学の2型糖尿病患者で、トルブタミド(SU薬)、フェンホルミン(BG薬)、インスリン、プラセボ群に分けた前向き研究で、予想に反してSU薬群はプラセボ群、インスリン群に比べ心血管病変による死亡が2倍以上増加したと報告されました(文献1)。現在、このレポートは、糖尿病のコントロール状態に配慮せず薬剤が使用されていたなど、いくつもの問題点があったことが明らかにされていますが、SU薬と虚血性心疾患の関連を疑わせる原点の報告になってしまったのです。

 そのうちにSU薬の種類によって死亡率が異なることがはっきりしてきました。種々の報告を総合すると確かに第一世代のSU薬であるクロルプロパミドおよびトルブタミドはその可能性は高いが、第二世代になるグリクラジドおよび第三世代のグリメピリドは死亡率を上げないと報告されています(文献2、3)。いずれにしても、現在主流の薬剤なら心配なさそうという結論です。そのような報告を念頭に置いて、私はどの世代のSU薬にしても極量まで使用しないことはもちろん、「中等以上の用量を血糖の改善が無いまま漫然と使用しない」ことが重要だと考えて診療しています。

服薬指導のポイント:低血糖とその指導

 さて、SU薬を上手く使いこなす上で「低血糖」は避けて通れない問題です。糖尿病治療を難しくしている最も大きなものが低血糖だと思います。低血糖が無ければ、糖尿病治療の苦労は桁違いに少ないのにと思います。低血糖と上手く付き合えた医師が "糖尿病治療の上手い医師である"と言っても過言ではありません。

 ここで指導のポイントですが、低血糖を過度に怖がらせるような指導をしない事が重要と考えます。糖尿病の診断初期に植え付けられたと思われる「低血糖恐怖症」が抜けない患者さんをよく経験します。「低血糖と気づけば大丈夫」の基本指導が、「低血糖時に慌てない正しい対処」に結びつきます。調剤薬局においては、頭から低血糖指導でなく「先生から低血糖の説明を受けましたか?」の一言が大切でしょう。

高齢者の低血糖

 低血糖を本当に注意すべき患者さんは高齢者であり、症状が乏しく、気づかないと転倒骨折、入浴事故に繋がるため注意が必要です。高齢者でも低血糖の可能性のある薬剤を使用しないとコントロールがつかない症例は多く見受けられます。しかし「Patient-centered care」の昨今です。本年5月に出された「熊本宣言」にあるように低血糖の危険が高い高齢者は、安全のためHbA1c8%未満レベルで妥協することも必要と考えます。

 低血糖の対処法は医療機関それぞれの指導で良いと思いますが、中等度以上の低血糖を起こしやすい方は、あめ玉は誤飲の可能性があり、粉のブドウ糖も唾液が出る状態か、水があって初めて胃に入っていきます。このような方には、グルコレスキュー®のようにゼリー状のブドウ糖で嚥下しやすい商品の携帯がお勧めです。

参考文献

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※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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