糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第9回 DPP-4阻害薬(3)

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 35(2013年1月1日号)

はじめに

 今回は、新たに製造販売承認を取得した2種のDPP-4阻害薬を取り上げます。また増えたのかと思うかもしれませんが、新しいテネリグリプチンとアナグリプチンの違いにフォーカスを当てて、最後にDPP-4阻害薬全般について総括いたします。

テネリグリプチン(テネリア®錠)

 テネリグリプチンは田辺三菱製薬(株)で創製され、2012年6月に製造販売承認を取得した初の国産DPP-4阻害薬です。テネリグリプチンの血漿中半減期は20mg錠単回投与で24.2時間です。1日1回20mg投与で効果不十分の場合には40mgまで増量できます。薬物動態では肝臓、腎臓の2ルートで消失することが特徴です。現在のところ、併用可能薬は、SU薬とチアゾリジン系薬剤の二種類のみです。

アナグリプチン(スイニー®錠)

 アナグリプチンは(株)三和化学研究所で創薬されたDPP-4阻害薬で、2012年9月に製造販売承認を取得、11月に発売されています。本剤は、P2(フェーズ2)試験までは三和化学研究所が行い、P3よりは興和創薬(株)と共同開発です。しかし販売は両社別々に行います。アナグリプチンは1錠100mg、朝夕の1日2回服用で、1回量を200mgに増量可能です。健康成人に100mgまたは200mg単回経口投与時の半減期(β相)は、6.20または5.75時間で、尿中73.2%、糞中25.0%の排泄割合と報告されています。

 他の血糖降下薬と併用できるかは選択の大きなポイントとなりますが、①α-GI ②BG(ビグアナイド) ③SU薬 ④チアゾリジン系薬剤と、広く併用が認められています。この点、使い易い薬剤です。またLDL-C低下作用とTG低下作用も認められています。さらに、DPP-4阻害薬の中でシタグリプチンと並んで薬価が一番低いことは、患者負担が少なく福音です。

両薬の注意点

 テネリグリプチンの代謝酵素は複数あり、主としてCYP3A4、フラビン含有モノオキジゲナーゼ(FMO1とFMO3)です。本剤はQTc間隔延長の可能性を否定できないので、念のため、クラスIA抗不整脈薬(キニジン、プロカインアミド)、クラスⅢ抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロール)使用例には注意が必要と考えます。

 体内動態は、健康成人に単回投与すると21.22%が尿中未変化体として排泄され、外国人のデータでは、20mg錠単回服用では尿中に14.8%,糞中に26.1%と報告されており、腎障害患者では使用しやすいとされています。副作用は10.0%に認められ、主なものは低血糖(3.0%)、便秘(0.9%)とされています。

 次に、アナグリプチンの副作用は19.9%で認められ、便秘(2.6%)、低血糖(2.0%)、便潜血陽性(1.9%)です。ほとんど肝代謝されずに糞中に25.0%が排泄されますので、肝障害患者でも使用しやすく、Ccr<30mL/分の重度以上の腎障害患者では100mg錠を1日1回にするのが目安とされています。なお、両薬剤ともにSU薬との併用での低血糖、腸閉塞に注意とされているのは、他のDPP-4阻害薬と同じです。

DPP-4阻害薬の総括

 DPP-4阻害薬は種類が多くなり、選択に迷うことと思います。DPP-4のノックアウトマウスのデータよりDPP-4を100%阻害しても、血中のGLP-1濃度の上昇は2.3倍が限度です(文献1)。また臨床的にも例えばシタグリプチンは2.3倍のGLP-1濃度上昇と報告されています(文献2)。また初期の3種類の薬剤のデータからすると、どの薬剤もきちんと服用すれば24時間のDPP-4阻害率は一つの目安である80%をクリヤーし、HbA1cの低下も根本的な差はありません(文献3)。これらから、単剤での効き方・特徴はもちろん重要で、報告も多数ありますが、むしろ代謝、排泄、持続時間等の特徴と共に、併用可能薬(BG薬、SU薬等)の有無が有用度を決めると考えます。また、我が国の医療経済を念頭に置くと、国産薬であることも選択肢に加えて良いと思います。

参考文献

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