網膜症診断時の重症度が視覚障害リスクと相関

2021.02.12
 糖尿病網膜症診断時の重症度が高いほど、その後約2年間に恒久的な視力低下に至るリスクが有意に高いことを示したデータが報告された。報告した研究者らは、「網膜症の進行を放置している糖尿病患者が、いまだに多く存在する」と警鐘を鳴らしている。

 この研究は、米国眼科学会が行っている、患者の視力に関するレジストリデータを用いた後方視的コホート研究として行われた。米ブラントン眼科研究所のCharles C. Wykoff氏らによる解析結果の詳細が1月20日、「Diabetes Care」に掲載された。

 2013年1月1日~2017年12月31日に糖尿病網膜症と診断され、診断時点の視力が比較的良好(20/40以上)だった成人糖尿病患者を解析対象とした。網膜症の重症度を、軽症非増殖網膜症、中等症非増殖網膜症、重症非増殖網膜症、および増殖網膜症の4群に分類。追跡期間中に視力が20/200より悪化し、3カ月以上の間隔をおいた2回の検査でいずれも20/100を上回る改善が認められなかった場合を「恒久的な視力低下(sustained blindness;SB)」と定義。このSBの発生を主要アウトカムとして、ベースライン時の網膜症重症度との関連を検討した。

 平均追跡期間662.5日で、解析対象5万3,535眼のうち678眼(1.3%)がSBに至った。ベースライン時での増殖網膜症の割合は10.5%(53,535眼中5,629眼)だったのに対し、SBに至った眼では26.5%(678眼中180眼)を占めていた。

 カプランマイヤー解析により、ベースライン時に軽症非増殖網膜症だった眼に比較し、中等症非増殖網膜症だった眼は、2年間でのSB発生率が2.6倍であり、重症非増殖網膜症でのSB発生率は3.6倍、増殖網膜症では4.0倍だった。Cox比例ハザードモデルで交絡因子を調整した結果、軽症非増殖網膜症の眼に対する増殖網膜症の眼のSB発生リスクは、ハザード比2.26(95%信頼区間2.09~2.45)と、有意にハイリスクであることが分かった。

 著者らによると、「公衆衛生ガイドラインでは、糖尿病患者の眼のスクリーニングを積極的に行うことが推奨されている。それにもかかわらず、依然として網膜症が進行した状態で診断される患者が後を絶たない」という。また今回の研究結果については、「糖尿病に伴う失明を減らすため、より実効性の高い網膜症のスクリーニング法の開発、患者教育の充実、治療レベルの向上を継続的に推進する必要性を支持するデータだ」と述べている。

 なお、数名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

[HealthDay News 2021年2月3日]

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