糖尿病・慢性腎臓病患者に対するSGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の予防効果の違いを発見 SGLT-2阻害薬は心血管・腎イベントを有意に減少

 横浜市立大学医学部は、糖尿病(DM)および慢性腎臓病(CKD)患者で、SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の2種の糖尿病治療薬が、心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)や腎イベント(腎機能悪化、透析導入、マクロアルブミン尿など)の予防にどう作用するかを比較し、SGLT-2阻害薬はプラセボに比べて心血管および腎イベントを有意に減らしたうえ、腎イベントはGLP-1受容体作動薬に対して有意に少ないことを明らかにした。
 研究は、横浜市立大学医学部循環器・腎臓・高血圧内科学教室の山田貴之氏(Mount Sinai Beth Israel留学中)、涌井広道講師、小豆島健護助教、田村功一主任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cardiovascular Diabetology」に掲載された。
DM、CKD患者での心血管イベント、腎イベントをSGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬で比較
 糖尿病(DM)は患者の数が多く、公衆衛生の大きな問題となっている。そのうえ、DMは慢性腎臓病(CKD)の最大のリスク因子であり、米国ではCKD患者の約36%がDMによるものと考えられている。DMおよびCKDは末期腎不全(ESRD)のリスクになるのみならず、心血管疾患のリスクを大きく増加させる。そのためDM、CKDの患者での心血管イベントの予防およびCKD進行の予防は重要になる。

 一方、SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、ともに比較的新しい糖尿病治療薬であり、SGLT-2阻害薬は腎尿細管でのグルコース吸収阻害することで、GLP-1受容体作動薬はグルコース依存性のインスリン分泌を促すことで血糖値を低下させる。どちらも心血管イベントおよび腎イベントを減らすという報告があり、2020年の米国糖尿病学会はSGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を糖尿病かつ動脈硬化性心血管疾患や腎疾患のある患者に推奨しています。しかし、DM、CKDの患者にどちらがより予防効果があるかを検証した研究は少ない。

 そこで研究グループは、医学研究に関する文献や情報等のデータベースであるPubmed、Embase、Cochrane Libraryで2020年11月までに発表された論文のうち、DM患者に対する治療群(SGLT-2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬)とプラセボにおける、心血管イベント、または腎イベント(腎機能悪化、透析導入、腎臓関連死、マクロアルブミン尿など)を調査したランダム化比較試験(RCT)を検索し、解析に用いることのできる13の論文を得た。

 各論文に記されているイベント数からリスク比(RR)と95%信頼区間(95% CI)を計算し、ネットワークメタ解析を行った。GLP-1受容体作動薬の中でのサブクラス(GLP-1アナログおよびExendin-4アナログ)、GLP-1受容体作動薬の投与頻度(1日1回または週に1回)で感度分析を行った。
GLP-1受容体作動薬は心血管・腎イベントともに有意差なし 腎イベントはSGLT-2阻害薬が有意に低い
 その結果、▼SGLT-2阻害薬はプラセボに比べて心血管および腎イベントを有意に減らす、▼GLP-1受容体作動薬はプラセボと比較して心血管および腎イベントに有意差はみられない、▼SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を比べると、SGLT-2阻害薬は有意に腎イベントを減少させるといったことが示された。

 SGLT-2阻害薬はプラセボに比べて心血管イベントおよび腎イベントを有意に減らした(RR [95 %CI]; 0.85 [0.75-0.96]、0.68 [0.59-0.78])。その一方で、GLP-1受容体作動薬は心血管イベント、腎イベントともに有意差を認められなかった(RR 0.91 [0.80-1.04]、0.86 [0.72-1.03])。SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を比較した場合、心血管イベントでは有意差はなかったが(RR 0.94 [0.78-1.12])、腎イベントはSGLT-2阻害薬の方が有意に低いことが明らかになった(RR 0.79 [0.63-0.99])。

 感度分析ではGLP-1アナログが心血管イベントを減らし(RR 0.81 [0.69-0.95])、腎イベントも減らす傾向がみられた一方で(RR 0.82 [0.66-1.01])、Exendin-4アナログではプラセボと比較して心血管イベントで有意差が認められなかった(RR 1.03 [0.88-1.20])。

 今回の研究はDM、CKD患者ではじめて心血管イベント、腎イベントをSGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬で比較した研究であり、DMの日常診療で、薬剤選択に影響を与えうる研究といえる。

 そのうえ、GLP-1受容体作動薬のサブクラスで予防効果に差異が生じることを示唆したはじめての研究であり、GLP-1受容体作動薬のサブクラスに関するさらなる研究を提案する結果になった。

 「本研究はネットワークメタ解析による間接的な比較であり、SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を直接比較した試験はこれまでありません。今後、直接比較試験を行う事で、DM、CKD患者の治療薬に関するさらなる知見を与えることが期待されます」と、研究者は述べている。

SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬のリスク比のフォレストプロット
(左)心血管イベントのリスク比
プラセボに比べてSGLT-2阻害薬のプロットは左側にあり、有意にリスクが低いことが示された。
(右)腎イベントのリスク比
SGLT-2阻害薬のプロットは、プラセボ、GLP-1受容体作動薬に比べて左側にあり、有意にリスクが低いことが示された。
出典:横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学、2021年

横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学
Cardiovascular and renal outcomes with SGLT-2 inhibitors versus GLP-1 receptor agonists in patients with type 2 diabetes mellitus and chronic kidney disease: a systematic review and network meta-analysis(Cardiovascular Diabetology 2021年1月7日)
[Terahata]

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