孤独感は2型糖尿病の独立したリスク因子 孤独感が慢性化するとストレスの負の連鎖が

2020.12.23
孤独感は2型糖尿病の独立したリスク因子
 孤独感を抱いていることが2型糖尿病のリスク因子であるとする論文が、「Diabetologia」に9月15日掲載された。既知のリスク因子、および、うつ症状や独居であることなどで調整後もなお、有意なリスク上昇が認められるという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のRuth A. Hackett氏らが報告した。

 孤独であることは、冠動脈性心疾患(coronary heart disease;CHD)や全死亡のリスクと関連することが報告されている。ただし、孤独と2型糖尿病発症リスクとの関係は明確になっていない。Hackett氏らは、英国の加齢に関する縦断研究(English Longitudinal Study of Ageing;ELSA)の登録者データを用い、糖尿病でない4,112人(平均年齢65.02±9.05歳)を対象とする観察研究を実施し、この関連を検討した。孤独感は、「カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)孤独感尺度改訂版」で評価した。

 2006~2017年の観察期間中に、264人(6.42%)が2型糖尿病を発症。2型糖尿病発症の既知のリスク因子(年齢、性別、BMI、民族、喫煙・飲酒・身体活動習慣、経済状態、HbA1c、および高血圧・心血管疾患の既往)で調整後、孤独感は2型糖尿病発症の有意なリスク因子として抽出された〔ハザード比(HR)1.46、95%信頼区間1.15~1.84、P=0.002〕。

 さらに、調整因子に、うつ症状、独居、社会的孤立を加えても、この関連は引き続き有意だった(HR1.41、同1.04~1.90、P=0.027)。なお、独居と社会的孤立に関しては、2型糖尿病発症との有意な関連は見られなかった。

 この結果から著者らは、「孤独は2型糖尿病のリスク因子と言える」と結論付けた上で、「その関係の根底にあるメカニズムはまだ解明されていない」と述べている。孤独により喫煙や飲酒が増えたり、身体活動が減ったりすること、その結果、BMIが増加することなどが2型糖尿病リスクを高める可能性があるが、本研究ではそれらの因子で調整後も、孤独感が有意なリスク因子であった。Hackett氏は、「孤独感が慢性化すると連日ストレス負荷がかかることになり、時間の経過とともに高じるストレスの負の連鎖が、2型糖尿病リスクを押し上げるのではないか」と考察している。

[HealthDay News 2020年9月22日]

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