「ファリシマブ」が糖尿病黄斑浮腫の第3相試験で主要評価項目を達成 良好な持続性も 初のバイスペシフィック抗体

 中外製薬は、眼科領域における初の抗VEGF/Ang2バイスペシフィック抗体である「ファリシマブ」が、失明の主な原因のひとつである糖尿病黄斑浮腫に対する2つの第3相グローバル臨床試験で主要評価項目を達成し、良好な持続性を示したと発表した。
 「ファリシマブ」の8週間隔の固定投与群および個々の治験参加者に応じた最長16週間隔投与群は、視力改善効果でアフリベルセプトの8週間隔投与群に対する非劣性を示した。「ファリシマブ」の忍容性はおおむね良好で、新たな安全性上の懸念は示されなかった。
糖尿病黄斑浮腫の適応予定の初のバイスペシフィック抗体
 ロシュは、糖尿病黄斑浮腫(DME)に対して開発中のバイスペシフィック抗体「ファリシマブ」(製品名未定)を評価した同一デザインの第3相グローバル臨床試験であるYOSEMITE試験およびRHINE試験のトップライン結果を発表した。

 両試験ともに主要評価項目を達成し、ファリシマブの8週間隔の固定投与群および個々の治験参加者に応じた最長16週間隔投与群で、アフリベルセプトの8週間隔投与群と比較し、1年時点の視力の転帰で非劣性が示された。「ファリシマブ」の忍容性はおおむね良好であり、新たな安全性上の懸念は示されなかった。

 両試験の副次的評価項目については、個別に投与間隔を調整した「ファリシマブ」投与群で、1年時点で半数以上が16週間隔投与を達成し、これまでに糖尿病黄斑浮腫に対する新薬候補化合物で実施された第3相臨床試験の中でははじめての水準となる持続性を示した。

 両試験の詳細な結果は2021年2月にマイアミ・ミラー医科大学バスコム・パルマー眼科研究所で開催される医学シンポジウムAngiogenesis, Exudation and Degeneration 2021で発表されるとともに、各国の規制当局に対して糖尿病黄斑浮腫に対する承認申請が行われる予定。
Ang-2とVEGF-Aが関与する2つの異なる経路が標的
 「ファリシマブ」は眼科領域における初のバイスペシフィック抗体(注射薬)であり、多くの網膜疾患の原因である、アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)が関与する2つの異なる経路を標的としている。

 Ang-2とVEGF-Aは血管構造の不安定化により、漏出を引き起こす血管を新たに形成し、炎症を起こすことで視力低下を引き起こす原因のひとつになっている。「ファリシマブ」は、これら2つの経路を別々に遮断することで血管を安定化させ、網膜疾患を有する方の視力をより良く、より長く保てる可能性を考慮して設計されている。

 エフ・ホフマン・ラ・ロシュは、中外製薬と戦略的アライアンスを締結している。「ファリシマブ」の日本での開発は中外製薬が実施しており、国内からYOSEMITE試験に参加している。

 糖尿病黄斑浮腫(DME)は、世界全体で約2,100万人が罹患しているとされており、糖尿病網膜症(DR)の視力低下の原因となる合併症。DRでは、血管の損傷および血管新生により、血液および/または血漿成分の網膜(眼から脳へ情報を伝達する視覚を司る器官のひとつ)への漏出が起こる。これにより、網膜への血液供給が部分的に途絶えるとともに、浮腫が生じる。

 DMEはこの損傷した血管からの漏出とそれにともなう浮腫が黄斑部、すなわち読書や車の運転に必要とされる明瞭な視力を司る網膜の中心領域に生じる疾患。糖尿病の有病率が上昇するにしたがい、DMEの患者数は増加することが予想される。DMEは治療せずに放置すると失明や生活の質の低下につながる。
ファリシマブとアフリベルセプトを比較したYOSEMITE試験/RHINE試験
 YOSEMITE試験およびRHINE試験は同一デザインの無作為化多施設二重遮蔽第3相グローバル臨床試験。糖尿病黄斑浮腫患者1,891名を対象に、ファリシマブの有効性と安全性を、VEGF阻害薬であるアフリベルセプトと比較し評価した。

 両試験では、ファリシマブ6.0mgを導入期投与後個々の参加者に応じて最長16週間隔で投与する群、ファリシマブ6.0mgを導入期投与後8週間隔固定で投与する群、アフリベルセプト2.0 mgを導入期投与後8週間隔固定で投与する群の3群が設定された。

 3つの群全てで、治験責任医師や参加者の遮蔽化を維持するために、薬剤が投与されない来院日にはシャム投与(注:硝子体内投与の代わりに、針のないシリンジを局所麻酔下で眼球にあてる措置)がなされた。

 同試験の主要評価項目は、1年時点におけるベースラインからの最高矯正視力(BCVA、メガネ等で矯正した場合を含め、視力表の文字を読む際に達成可能な最高の状態における視力)スコアの平均変化量。副次評価項目は、安全性、個々の参加者に応じた投与間隔群の52週時点における4、8、12または16週間隔で投与した参加者の割合、52週時点における糖尿病網膜症の重症度がベースラインから2段階以上の改善した参加者の割合、BCVAでベースラインから15文字以上の視力改善が認められた参加者の割合の経時変化、BCVAでベースラインから15文字以上の視力低下が避けられた参加者の割合の経時変化、および中心領域網膜厚のベースラインからの変化量の経時変化が含まれる。

中外製薬
ロシュ
[Terahata]

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