歯周病菌が骨格筋の代謝異常を引き起こす 糖尿病やサルコペニアの悪化にも寄与 東京医科歯科大

 東京医科歯科大学などは、歯周病原細菌の感染が腸内細菌叢の変化をともない、骨格筋の炎症関連の遺伝子群を上昇させ、脂肪化を亢進、インスリンシグナルの低下とともに糖の取り込みを阻害することを発見したと発表した。
 歯周病菌の感染が骨格筋の代謝異常を引き起こし、メタボリックシンドロームの危険因子となり、サルコペニアにもつながる可能性がある。
歯周病による糖尿病の病態悪化は骨格筋の異常にもつながる
出典:東京医科歯科大学、2020年
 近年、歯周病は2型糖尿病や肥満などのさまざまな全身疾患の増悪因子となることが知られるようになった。歯周病は、糖代謝で重要な役割を果たす臓器である肝臓の脂肪化を増悪させる因子のひとつであることも明らかになっている。しかし、他の糖代謝に関わる臓器との関連についてはよく分かっていない。

 骨格筋は体重の約40%を占める最大の臓器であり、運動や姿勢保持のみならず全身の糖代謝調節でも基幹的役割を担っている。歯周病が糖尿病の病態を悪化させる機序のひとつにインスリン抵抗性の惹起が挙げられるが、インスリン依存的に糖の取り込み・代謝を行う組織である骨格筋に注目した報告はなく、歯周病による糖尿病の病態悪化で骨格筋との臓器特異的な関連性が予想されるものの、そのメカニズムは解明されていない。

 そこで研究グループは、骨格筋組織の脂肪化に着目。ヒト臍部CT画像に描出された腰筋群をCT値解析し、骨格筋の脂肪化マーカーを算出し、歯周病原細菌の血清抗体価との関連を調査した。

 その結果、脂肪化マーカーと歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)の血清抗体価に有意な相関がみられることが分かった。

 そこで、Pgの感染による骨格筋の影響を調査するため、Pg嚥下感染モデルマウスを用いて実験を行った。脂肪化への影響を調査するため、Oil red o染色を行なったところ、Pgの投与により、遅筋であるヒラメ筋では有意に脂肪化が亢進していることが分かった。

 また、遺伝子発現をqPCR法で検証したところ、Pgの投与によりTnfaやIl6などの炎症関連遺伝子が上昇し、マイクロアレイ解析では炎症関連遺伝子群の上昇を認めた。


出典:東京医科歯科大学、2020年
歯周病菌が筋での糖の取り込みを阻害 腸内細菌叢も変化
 次に、研究グループは糖の取り込みを評価するため、2−デオキシグルコース(2DG)を用いて、筋組織に取り込まれた糖を定量した。2DGはグルコースと同様に細胞内へ取り込まれるが、リン酸化された後に次の酵素反応へ進まない。マウスに2DGを投与すると、Pg投与群ではヒラメ筋における糖の取り込みが有意に阻害されていることが確認された。

 また、ウエスタンブロッティング法でインスリンシグナルの指標となるAktのリン酸化を評価したところ、Pg投与群ではリン酸化の阻害が確認され、インスリンシグナルが低下していることが確認された。

 さらに、次世代シークエンサーを用いて腸内細菌叢の細菌種の同定、細菌種間の相関関係を解析した結果、Pgの投与はTricibacter属を減少させ、細菌叢を変化させていることが分かった。細菌同士の相関関係を示したネットワーク構造も、ひとつのネットワークに関わる細菌種が減少していることが分かった。


出典:東京医科歯科大学、2020年
歯周病菌の感染がメタボリックシンドロームやサルコペニアの危険因子に
 今回の研究から、メタボリックシンドロームの患者では、骨格筋脂肪化マーカーと、Pgの血清抗体価が有意に相関していることが明らかになった。また、Pgを投与したマウスでは、腸内細菌叢の変化をともない骨格筋の炎症関連遺伝子群が上昇、脂肪化の亢進、インスリンシグナルの低下とともに糖の取り込みが阻害されていることも見出した。

 研究成果は、Pgの感染が骨格筋の代謝異常を引き起こし、メタボリックシンドロームのリスクファクターとなっている可能性や、サルコペニアへとつながる可能性を示すものだ。サルコペニアは筋肉量の低下を主体とし、機能的低下をも含む概念ですが、動作の俊敏性が失われ転倒しやすくなる身体的問題に直結する。

 「今回の研究により、歯周病のさらなる危険性が注意喚起され、健康寿命の延伸へとつながることが期待される」と、研究グループは述べている。

 研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病分野の片桐さやか講師、日本学術振興会の渡辺数基特別研究員、岩田隆紀教授と、佐賀大学医学部附属病院肝疾患センター高橋宏和特任教授の研究グループと、東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター分子遺伝学研究部の廣田朝光講師、東京医科歯科大学教養部生物学教室の服部淳彦教授、同大医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の戸原玄教授、同大難治疾患研究所エピジェネティクス分野の松沢歩助教との共同研究グループによるもの。研究成果は、「The FASEB Journal」オンライン版に掲載された。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
Porphyromonas gingivalis impairs glucose uptake in skeletal muscle associated with altering gut microbiota (THE FASEB Journal 2020年11月16日)
[Terahata]

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