【新型コロナ】BCGワクチン接種を義務化すると、新型コロナの拡散率を低下できる可能性 130ヵ国以上を比較

 京都大学は、BCGワクチン接種が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡散を防いでいる可能性があるという研究結果を発表した。
 BCGワクチンの接種を少なくとも2000年まで義務付けていた国々では、そうでない国々と比べて、感染者数、死者数ともに増加率が有意に低いことが明らかになった。
 BCGワクチンの接種義務を制度化することで、COVID-19の流行を抑制できる可能性がある。
日本人で感染者数と死亡者数が少ないのはBCGワクチン接種を受けているから?
 研究は、京都大学こころの未来研究センターの北山忍特任教授(米ミシガン大学教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Science Advances」に掲載された。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染者数や死亡者数は国ごとに大きく異なる。これを説明する要因として、BCGワクチン接種義務の制度が関わっているのではないかと議論されている。

 たとえば、日本はBCGワクチン接種義務の制度が戦後一貫してある。そして、日本は米国より感染者数、死亡者数の両方で格段に低い。米国はBCGワクチン接種義務を制度化したことがない。

 しかし、現在のところ、国際比較データの分析にともなう方法的問題があり、結論は明らかにされていない。とくに感染者数や死亡者数の報告に関わるバイアスが結果に影響している可能性がある。また、個々の国は非常に多くの面で異なるため、交絡要因をできる限り排除し、できるだけ多くの国を比較することが必要となる。

出典:京都大学、2020年
BCGワクチンの接種を義務付けていた国で死者数などの増加率が低い
 そこで研究グループは、国ごとの流行初期30日間における感染者数と死者数の増加の割合に注目することにより、報告バイアスの効果を排除し、さらに、さまざまな交絡要因を統計的に統制した上で、少なくとも2000年までBCGワクチンを義務付けてきていた国とそうでない国、計130ヵ国以上を比較した。

 その結果、BCGワクチンの接種を少なくとも2000年まで義務付けていた国々では、そうでない国々と比べて、感染者数、死者数ともに増加率が有意に低いことが明らかになった。さらに、同様の結果は、期間を流行の初期15日間に設定した場合にも確認された。

 たとえば、米国ではBCGワクチン接種義務を制度化したことはないが、もしも接種義務を数十年前に制度化していれば、2020年3月30日における死亡者総数は667人であっただろうと推定される。これは実際の数(2,467人)の約27%にあたる。

BCG接種義務制度の有無とCOVID-19による感染者数と死亡者数の増加率
流行初期30日間を計130ヵ国以上で比較
出典:京都大学、2020年
高齢者のBCGワクチン接種は保護効果があるという試験結果
 BCGワクチンの接種によるCOVID-19に対する保護効果を調べた臨床試験の結果は、海外ではすでに報告されている。この研究はギリシャのアッティコン大学病院などで実施されたもので、結果は科学誌「Cell」に発表された。

 高齢者198人を対象とした試験により、BCGは最初の感染までの時間と新規の感染の発生を減少させ、ウイルス性気道感染症に対する強力な保護効果があることが示された。

 BCGワクチンの接種により、自然免疫を獲得し、抗炎症性のサイトカイン産生が増加する傾向がみられたという。

 研究者らは、「COVID-19を含む呼吸器感染症に対するBCGの保護効果を評価するには、より大規模な研究が必要」としながらも、「BCGワクチン接種は、高齢者に対して安全である可能性があり、感染症から保護する作用を期待できる」と結論している。
乳児への定期ワクチン接種が優先されるという声明も
 京都大学の今回の研究では、BCGワクチンの接種義務を制度化することで、COVID-19の流行を抑制できる可能性があることが示された。

 「現在、感染症がどのような社会・文化・生態的要因により媒介されるかを解明すべく、BCGワクチンの接種義務以外のさまざまな要因の効果も同時に検討しており、順次発表していく予定」と、研究者は述べている。

 一方、日本ワクチン学会は、COVID-19に対するBCGワクチンの効果について、慎重な見解を示している。「BCGワクチン接種の効能・効果は結核予防であり、また主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない」と注意を促している。

 BCGワクチンは、結核に対する予防ワクチンであり、日本では小児に対して予防接種法にもとづく定期接種が実施されている。定期接種の対象者は0歳児であり、結核性髄膜炎や粟粒結核など低年齢小児で頻度の高い重症の結核を予防する有用性がもっとも高いという理由にもとづいている。

 「BCGワクチンがCOVID-19に対して有効ではないかという仮説は、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もできない」「本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCGワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない」としている。

京都大学こころの未来研究センター
Mandated Bacillus Calmette-Guérin (BCG) vaccination predicts flattened curves for the spread of COVID-19(Science advances 2020年8月5日)

Activate: Randomized Clinical Trial Of Bcg Vaccination Against Infection In The Elderly(Cell 2020年8月31日)

日本ワクチン学会
[Terahata]

関連ニュース

2020年09月03日
【新型コロナ】BCGワクチン接種を義務化すると、新型コロナの拡散率を低下できる可能性 130ヵ国以上を比較
2020年09月02日
2型糖尿病や脂肪肝の発症に「過剰なオートファジー」が関与 脂肪細胞でのオートファジー阻害が新たな治療戦略に 大阪大
2020年09月02日
膵β細胞異常の原因となるmRNAの分解を制御するタンパク質CNOT3を解明 糖尿病発症における重要な役割を担う
2020年09月02日
【新型コロナ】日常で利用されている消毒薬の実際の効果を検証 ウイルスをどこまで不活化できるか? 北里大学研究所
2020年09月02日
【新型コロナ】COVID-19予防ワクチン候補 日本での第1相試験を開始 ヤンセン
2020年08月26日
【新型コロナ】高血圧治療薬がCOVID-19重症化を予防 ACE阻害薬やARBを服用している患者は意識障害が少ない
2020年08月26日
慢性心不全治療薬「エンレスト錠」を発売 RAASの過剰な活性化を抑制し、内因性のナトリウム利尿ペプチド系を増強
2020年08月26日
【新型コロナ】子供の3人に1人が「コロナになったら秘密にする」 7割にストレス反応 成育医療研究センター調査
2020年08月25日
【新型コロナ】東大先端研などが「PCR検査拡充プロジェクト」を開始 PCR検査を無償で提供
2020年08月24日
GLP-1受容体作動薬をダイエットや痩身の目的に使うのは適応外 PMDAが注意喚起情報

関連コンテンツ

編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
ページのトップへ戻る トップページへ ▶