2型糖尿病や脂肪肝の発症に「過剰なオートファジー」が関与 脂肪細胞でのオートファジー阻害が新たな治療戦略に 大阪大

 大阪大学は、加齢にともない脂肪細胞の機能が低下し、それが原因となり2型糖尿病や脂質異常症、脂肪肝といった生活習慣病を発症するメカニズムを解明したと発表した。
 オートファジー抑制因子であるルビコンが加齢にともない減少すると、オートファジーが過剰になり、その結果、脂肪細胞の機能が低下し、生活習慣病を引き起こすという。
 脂肪細胞に対するオートファジー阻害が新たな治療戦略となる可能性がある。
脂肪細胞でのオートファジー過剰が生活習慣病を引き起こす
 加齢にともない脂肪細胞の機能が低下し、それが原因となり2型糖尿病や脂質異常症、脂肪肝といった生活習慣病を発症することが知られている。

 大阪大学は、これらを予防する働きのある脂肪細胞で、加齢にともないオートファジーが過剰となった結果、脂肪細胞の機能を低下させて生活習慣病を引き起こすメカニズムを解明した。

 脂肪細胞では、他の多くの臓器とは逆に、オートファジー抑制因子であるルビコンが加齢にともない減少することで、オートファジーが過剰になり、その結果、脂肪細胞の機能が低下し、生活習慣病を引き起こすことを明らかにした。

 脂肪細胞に対するオートファジー阻害が生活習慣病の新たな治療戦略となる可能性がある。

 研究は、大阪大学大学院医学系研究科の山室禎氏(遺伝学)、医学系研究科兼生命機能研究科の吉森保教授(遺伝学/細胞内膜動態研究室)のグループが、医学系研究科の下村伊一郎教授(内分泌・代謝内科学)らと共同で行ったもの。研究成果は、「Nature Communications」に掲載された。

加齢にともない、脂肪組織のルビコンが減少し、オートファジーが過剰になる。過剰なオートファジーはSRC-1とTIF2を分解し、PPARγ活性と脂肪細胞機能の低下を招き、生活習慣病の発症につながる。
出典:大阪大学、2020年
肝臓や腎臓などでのルビコン蓄積が老化を促進
 老化によって脂肪細胞の機能が徐々に低下し、この機能低下が2型糖尿病や脂質異常症、脂肪肝といった生活習慣病の原因になる。そのメカニズムとして、オートファジーが大きく関わっている。

 オートファジーは、細胞内の不要な構造物を分解し新陳代謝を担う機構。不要物の蓄積を防ぐことで、オートファジーはさまざまな疾患の発症を抑制していると考えられている。東京工業大学の大隅良典博士がオートファジー機構を発見した成果により、2016年にノーベル医学・生理学賞を受賞し、注目されるようになった。

 一方、ルビコンは、研究グループの吉森教授らが2009年に発見したタンパク質で、数少ないオートファジーの抑制因子。ルビコンがオートファジーの後期過程であるオートファゴソームとリソソームの融合を負に制御している。

 吉森教授らは昨年、ルビコンが肝臓や腎臓など多くの臓器で加齢にともない蓄積し、オートファジーを低下させることで老化を促進していることを明らかにしている。
脂肪細胞では加齢にともない逆にオートファジーが過剰に
 研究グループは今回、老化過程での脂肪細胞のルビコンに着目して研究を行った。まず、老化個体の脂肪組織でのルビコンの発現量を調べたところ、他の多くの臓器とは異なり、脂肪組織では加齢にともないルビコンが顕著に低下しており、それにともないオートファジーが過剰になっていることを発見した。

 次に、脂肪細胞でルビコン遺伝子を欠損させ、オートファジーを過剰にしたノックアウトマウスを作製。すると、このマウスは若齢にもかかわらず、痩せと耐糖能異常を示した。加えて、血中中性脂肪やコレステロールの増加、脂肪肝などの症状も示したことから、研究グループは、このマウスの症状は高齢者の痩せや生活習慣病と類似していると推察した。

左図はマウスの5週齢から21週齢にかけての体重経過を示す。脂肪細胞でルビコン遺伝子を欠損したマウスは、コントロールと比較し、体重増加不良をきたしており、痩せを示した。
右図はブドウ糖を注射した後の血糖値の推移を示す。脂肪細胞でルビコン遺伝子を欠損したマウスは、コントロールと比較し、血糖値が高く推移しており、耐糖能異常を示した。
出典:大阪大学、2020年

 さらに、脂肪細胞でオートファジーを抑制したマウスを老化させたところ、このマウスでは加齢性の脂肪肝が改善した。これらの結果から、脂肪組織のオートファジー過剰が高齢者の痩せや生活習慣病の原因となっており、これを抑えることで生活習慣病を治療しうることが示唆された。

(マウスの肝臓) 18ヶ月齢マウスの肝臓組織のHematoxylin-Eosin染色像。脂肪細胞でAtg5遺伝子を欠損(ノックアウト)してオートファジーを抑制したマウスでは、コントロールと比較し、脂肪滴が減少しており、脂肪肝の改善を示した。
出典:大阪大学、2020年

 研究グループは、ルビコンを抑制してオートファジーを過剰にした脂肪細胞の遺伝子発現の解析を行った。その結果、「PPARγ」という脂肪細胞機能に必須のタンパク質の働きが低下していることがわかった。

 PPARγの発現量はルビコンを抑制しても変わらなかったため、PPARγの働きを助けることで知られるSRC-1とTIF2という2つのタンパク質について調べたところ、これらがオートファジーによって分解されていることが判明した。

 つまり、老化個体の脂肪細胞でルビコンが低下してオートファジーが過剰になると、SRC-1とTIF2が分解されて減少する。そのためPPARγの働きが弱まり、脂肪細胞の機能が低下して生活習慣病を引き起こすと考えられる。

 また、個体が飢餓にさらされた際にも、脂肪細胞のルビコンが減少してオートファジーを高め、SRC-1とTIF2が分解されることも確認した。これは脂肪細胞の機能を積極的に下げることで、脂肪細胞に貯蔵できなくなった栄養を、飢餓の際に他の細胞に利用させるためと考えられる。
オートファジーが高い方が良いという潮流に一石を投じる結果に
 この機構は飢餓という有事のために存在しているが、老化によってこの機構が誤って働いてしまい、その結果、生活習慣病を引き起こすと考えられるという。

 多くの臓器では老化にともないオートファジーが低下するが、脂肪細胞では加齢にともないオートファジーが過剰となり、生活習慣病の発症につながりうることが示された。

 今後、脂肪細胞のオートファジー阻害による生活習慣病の治療薬の開発が期待される。「多くの臓器では老化にともないオートファジーが低下しますが、脂肪細胞では加齢にともないオートファジーが過剰となり、生活習慣病の発症につながりうることが示されました。過ぎたるは猶及ばざるが如しという言葉の通り、オートファジーが高い方が良い、という潮流に一石を投じる結果だと考えています」と、山室氏は述べている。

大阪大学大学院医学系研究科・医学部
Age-dependent loss of adipose Rubicon promotes metabolic disorders via excess autophagy(Nature Communications 2020年8月18日)
[Terahata]

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