血中ケトンを「迅速」に「定量」できることをご存じですか?
糖尿病ケトアシドーシス(DKA)における救急時の迅速診断と経過観察に有用

提供:LifeScan Japan株式会社

DKA患者さんの代謝状態をよく反映する血中ケトン測定がその場で行える

[Q]POCTによる血中ケトン測定を導入されてから、臨床はどのように変わったのでしょうか
田中
 スタットストリップは、主にベッドサイドでの高精度の血糖測定を目的として導入しましたが、現在では、血中ケトン測定の頻度も高くDKA治療にも寄与していると感じています。
 従来の尿中ケトン測定では、測定対象がアセト酢酸であり、臨床の状態と一致しないことが多いのです。また採血して血中総ケトンを測るとなると、一般的に結果が分かるまで1週間程度を要します。DKAが治ってから結果が分かっても意味がありません。このため現状では血中総ケトンはそれほどDKAの診断や治療の役には立っていない可能性があります。
 今回のスタットストリップの導入で、患者さんの代謝状態をよりよく反映する血中ケトン(3-ヒドロキシ酪酸)の値がその場で分かるようになり、大きな意義を実感しています。
 ケトン体にはアセト酢酸、ヒドロキシ酪酸、アセトンの3種類があります(図1)。アセトンはすぐに蒸発し、アセト酢酸はクリニック等でも定性的に測定しますが、DKAの診断にはあまり有用ではありません。病態に関係するのは3-ヒドロキシ酪酸であり(図2)、これをPOCTで定量できることに関して、有用だと考えています。

図1 3種類のケトン体

図1 3種類のケトン体
●田島敬也. ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸)による腎保護作用のメカニズム

図2 異なるケトン体とDKAの病態との関係

図2 異なるケトン体とDKAの病態との関係
●Lori Laffel, Improving Outcomes with POCT for HbA1c and Blood Ketone Testing.
Journal of Diabetes Science and Technology. January 2007. Volume 1, Issue 1

DKAの不適切な治療は生命に関わるため迅速に高精度な検査結果が求められる

[Q]DKAの診断や経過を観察するために必要な検査とは何でしょうか
田中
 臨床現場でDKAの診断や経過観察を行うには、迅速に高精度な結果が出る血中ケトン測定が不可欠です。いくら測定精度が高くても数日かかるのでは意味がありません。
 糖尿病診療ガイドラインでは、以下の通りです(図3)。実際のDKAの診断について紹介しましょう。一般的には、高血糖があり、意識レベルが低い、また消化器症状がある場合には、血液ガス分析で重炭酸イオンの低下を診ます。15mmol/Lを診断基準としますが、実際のDKAでは重炭酸イオンが5mmol/Lになっている場合が多いようです。
 高浸透圧高血糖症候群(高血糖昏睡)のように、血糖が高いだけならそれほど心配ありませんが、DKAでは酸性のケトンを生成して身体に危険な状況を招くことがあります。不適切な治療は生命に関わるため、当院ではDKAの患者さんはICUで1時間おきに血糖を測定し、点滴とともにインスリンの経静脈投与により治療します。DKAで緊急入院する外来患者さんは1~2ヵ月に1人ほどの頻度で、1型や未治療の患者さんに多い傾向です。若い患者さんもいらっしゃいます。

臨床所見:
1~2日の経過で、急激な口喝、多飲、多尿、倦怠感が出現し、脱水、種々の程度の意識障害、体重減少を呈する。
腹痛、悪心を伴うこともあり、急性腹症と誤診されることもある。
代謝性アシドーシスを補正するための過呼吸、呼気のアセトン臭、口腔粘膜の乾燥、低血圧、頻脈などを認める。
検査所見:
高血糖(250mg/dL超)、ケトーシス(β-ヒドロキシ酪酸の増加)、アシドーシス(動脈血pH7.30以下、HCO3-18mEq/L以下)などが特徴的である。
β-ヒドロキシ酪酸は、小児では3mmol/L以上、成人では3.8mmol/L以上が、 HCO3-18mEq/L未満に相当することが報告されている。
妊婦では糖尿病性ケトアシドーシスの発症頻度が高くなり、しかも、非妊娠時よりも低い血糖値でケトアシドーシスをきたしやすいとの報告がある。SGLT2阻害剤服用中、妊娠中には正常血糖糖尿病性ケトアシドーシスとなることがある。

図3 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の診断
●糖尿病診療ガイドライン2019

時間単位で変化する病態を把握するにはPOCTによる測定が適している

[Q]実際にPOCTで血中ケトン測定を行った症例について教えてください
田中
 52歳・男性の症例をご紹介します。嘔気・嘔吐を主訴にクリニックを受診され、HbA1c12.5%、血糖値760mg/dLで、すぐに紹介で当院に来られました。来院時には意識状態が悪く、尿中ケトンは3+、血液ガスではpH7.27、重炭酸イオン5.6mmol/LとDKAの状態でした。この時もし血液ガス分析装置がない場合には、その代わりに血中ケトン測定を行えば良いのです。実際にPOCTで測定すると5.9mmol/Lでした(図4)。
 この患者さんには、インスリンを経静脈的に投与し、昼に治療を始めて夕方には血糖450mg/dL、血中ケトン4.3mmol/L。翌日には血糖200mg/dL、血中ケトン2.5mmol/L。翌々日には血中ケトンが0.1mmol/Lにまで減少しました。
 この患者さんのように、ケトン値は日単位だけではなく時間単位でも下がっていくはずですが、従来の臨床では迅速な測定データが得られず経時的な変化を確認できませんでした。それがPOCTにより可能になったわけです。ただ課題として、現在のガイドライン等に目指すべきケトン値の基準の記載がなく、治療の判断が難しいという側面が残されています。

図4 血中の3-ヒドロキシ酪酸値によるDKA判断例

図4 血中の3-ヒドロキシ酪酸値によるDKA判断例
●MANAGED Care The Importance of Blood Ketone Testing in Diabetes Management Dec. 17, 2003

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POCT導入で何が変わる?クリニック、大規模病院それぞれにおいてのメリットとは

[dm-rg.net]
編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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