運動が心筋梗塞発症後の腎機能低下を防ぐ 歩数が多いほどeGFRが良好に 患者の自主的なウォーキングがカギに

2019.02.22
 急性心筋梗塞患者において、発症後の運動量(身体活動量)を高く保つことが腎機能低下の抑制につながることを、東北大学の研究グループが明らかにした。運動療法の腎保護効果は注目されている。

急性心筋梗塞患者の腎機能を維持・改善する治療が課題に

 研究は、東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野の佐藤聡見氏と上月正博教授らの研究グループによるもの。研究成果は「PLOS ONE」電子版に掲載された。

 急性心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症すると、腎機能が低下しやすいことが報告されている。さらに、急性心筋梗塞患者が腎機能障害を併存すると、その後の総死亡率や心血管に関連する死亡が増加することも分かっており、急性心筋梗塞患者の腎機能を維持・改善する治療法の確立は非常に重要な課題となっている。

 しかし、日本では退院後に外来心臓リハビリテーションに通院する急性心筋梗塞患者の割合は非常に低い。その理由は、就労者では時間的な制限があったり、高齢者では通院手段や医療費の問題があるなどさまざまだ。

 そのため多くの患者は、退院時に医師や理学療法士から受けた教育をもとにウォーキングなどの運動を自己管理で継続し、日常生活上の身体活動量を維持・向上するという手段をとることが多い。

 そのため、急性心筋梗塞患者の日常生活上の身体活動量が腎機能にどのように影響をもたらすかについての報告は少なく、実態は不明だった。

 そこで研究グループは、急性心筋梗塞発症後の身体活動量と腎機能変化との関係性を前向きに調査した。

 急性心筋梗塞を発症し、経皮的冠動脈形成術および入院中の包括的な心臓リハビリテーションを実施した患者を対象に、退院後3ヵ月間の身体活動量の評価と血液生化学検査、尿検査、心臓超音波検査、身体機能検査の評価を行った。

 心臓リハビリテーションでは、心疾患の患者が低下した体力や精神的な自信を回復して社会復帰、再発予防、生活の質改善などをはかるため、運動療法、患者教育、生活指導、カウンセリングなどの包括的な活動プログラムが行われる。今回の研究では、総合南東北病院(郡山市・福島県)で実施された。

 身体活動量の指標としては、3軸加速度計内蔵の活動量計により記録した1日歩数を評価した。そして、腎機能の指標としては、食事や筋肉量などの影響を受けにくい血清のシスタチンCから算出した推定糸球体濾過量(eGFR)を評価した。

 その結果、1日歩数とeGFRの変化には有意な関連があることが明らかになった。心臓カテーテル治療および入院中の自転車こぎ運動あるいはトレッドミルを含む心臓リハビリテーションプログラムを実施した急性心筋梗塞患者では、発症後の身体活動量を高く保つことで腎機能低下が抑制されることが示された。

 「急性心筋梗塞発症後の身体活動量と腎機能の変化との関係性を実証することで、急性心筋梗塞患者の腎機能を保護するためには身体活動量管理が臨床的に重要であることが明らかになった。再発の予防や生存率の改善につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野
Association between Physical Activity and Change in Renal Function in Patients after Acute Myocardial Infarction(PLOS ONE 2019年2月19日)

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