DPP-4阻害薬「トラゼンタ」のCARMELINA試験の結果を発表 プラセボと同等の心血管および腎アウトカムへの長期の安全性を示す

2018.11.01
 ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、心血管イベントや腎イベント、またはその両方のリスクが高い成人2型糖尿病患者を対象とした、DPP-4阻害薬「トラゼンタ」(一般名:リナグリプチン)の心血管および腎アウトカムへの安全性を検証した長期の心血管アウトカム試験である「CARMELINA」試験について、詳細な結果を第54回欧州糖尿病学会(EASD)で発表した。

心血管疾患や腎臓病、またはその両方のリスクが高い2型糖尿病患者が対象

 同試験で標準治療に「トラゼンタ」を上乗せした場合に、プラセボ群と比較して、同等の心血管安全性が示され、主要評価項目を達成した。また、「CARMELINA」試験の重要な副次複合評価項目である腎複合エンドポイントに関してもプラセボと同等の安全性が示された。さらに、心血管アウトカムのひとつのエンドポイントである、心不全による入院についても、「トラゼンタ」はプラセボと比較してそのリスクを増加させなかった。

 「CARMELINA試験は、これまでの他の心血管アウトカム試験ではごく少数しか対象としなかった患者集団、すなわち日常の診療においてよく観察されるような、心血管疾患や腎臓病、またはその両方のリスクが高い2型糖尿病患者についても重要な新しいエビデンスを提供している」と、トロント大学医学部教授、カナダ・トロントのマウントサイナイ病院、ルーネンフェルト・タネンバウム研究所上級研究員のBernard Zinman氏は述べている。

 「CARMELINA」試験では、主要評価項目である心血管イベントの発現が、プラセボ群では12.1%(420人)に対しリナグリプチン群では12.4%(434人)であり、プラセボに比べて「トラゼンタ」の成人2型糖尿病患者における長期の心血管安全性が示された。

 重要な副次評価項目である腎複合エンドポイントでは、プラセボ群では8.8%(306人)に対し「トラゼンタ」群では9.4%(327人)であり、腎臓に関しても「トラゼンタ」はプラセボと比較して同等の安全性を示した。

 心不全による入院リスクのエンドポイントは「CARMELINA」試験において事前に規定され、独立したイベント評価委員会によって評価されており、プラセボ群の6.5%(226人)に対し「トラゼンタ」群では6.0%(209人)だった。

 「心血管疾患を有する2型糖尿病患者において、現在多くのガイドラインが、心血管リスクと死亡率を低下させるベネフィットを有する糖尿病治療を選択することの重要性を認めている一方で、血糖降下および安全性についても薬剤選択において重要なことに変わりはない。トラゼンタは成人2型糖尿病患者にシンプルに同一用量で、効果的、かつ忍容性の高い治療選択肢であることが裏付けられた」と、ベーリンガーインゲルハイム コーポレート バイスプレジデント、心血管代謝部門長Waheed Jamal氏は言う。

 「CARMELINA」試験は、27ヵ国、600以上の施設から成人2型糖尿病患者6,979人が参加し、中央値2.2年にわたり観察を行った多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験。同試験の対象者の多くは、腎臓病を有する心血管リスクの高い成人2型糖尿病患者で、標準治療に上乗せした「トラゼンタ」(5mg 1日1回投与)の心血管イベントに対する影響を、プラセボを対照に評価することを目的に計画された。標準治療には、血糖降下薬および心血管薬(降圧薬や脂質異常症治療薬など)がともに含まれていた。

 なお、日本におけるトラゼンタ錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントのリスク減少に関連する効能・効果は取得されていない。

トラゼンタ錠5mg(医薬品医療機器情報提供ホームページ)

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