第78回米国糖尿病学会ダイジェスト(2) 180日連続して血糖を測定する新型CGMシステムが登場

第78回米国糖尿病学会(ADA2018)ダイジェスト(2)
 第78回米国糖尿病学会年次総会(ADA2018)が6月22日~26日にフロリダ州オーランドで開催され、糖尿病治療の最新動向を示す多くの研究が発表された。そのうち特に話題になった研究をご紹介する。

180日間連続して血糖測定を行う新型のCGM(持続血糖測定)システムが登場

 180日間連続して血糖測定を行う新型のCGM(持続血糖測定)システムが米国で登場した。超小型のセンサーを腕に埋め込むインプラント式になっている。このシステムを使用すれば、1型糖尿病患者は血糖の変動や変化を、6ヵ月というより長期にわたりモニタリングすることができる。従来のCGMは1~2週間ごとにセンサーを装着する必要があり、患者によっては不快感や苦痛を感じることがあるという。

 この「Eversense XL CGMシステム」は、上腕の皮下組織層に、超小型センサーを6ヵ月埋め込む方式になっている。システムには軽量で耐水性のある小型トランスミッターが含まれており、皮膚に装着し、専用のアプリを使いiOSおよびAndroidのスマートフォン、Apple Watchなどに血糖値が表示される仕組みになっている。トランスミッタは着脱式で、低血糖や高血糖が起きている場合は、振動アラートで患者に知らせる機能も付いている。

 カナダで実施された試験には、1型糖尿病の若年患者30人(平均年齢14歳)、成人患者6人(平均年齢32歳)が参加した。参加者の64%は以前にCGM装置を使用しており、32人がインスリンポンプを使用し、4人はインスリン注射を行っていた。参加者は、糖尿病クリニックで簡単な内科手術を受け、上腕にセンサーを埋め込んだ。毎月診察を受け、血液検査やCGMデバイスの精度検査などを受けた。

 その結果、「Eversense XL CGMシステム」の精度は高く、平均絶対的相対的差異(MARD)が9.4%という結果になった。インプラントでの挿入や除去の処置では重篤な有害事象はみられなかった。研究者は、このシステムは180日間の長期間を通じて正確かつ安全に使用できると結論付けた。

 「このCGMシステムは、他のCGMシステムに比べ遜色のないMARDを示しており、精度の高さに満足しています。60日目から90日目、180日目までに精度が大幅に低下することはなく、センサーの寿命の長さや安定性も十分でした。小児や若年の患者集団をみると、これくらいの長期間にCGMを行うと、日常で不可欠なものになります。センサーやトランスミッタは小型で、運動などの日常動作の影響を受けません。CGMを行うことで糖尿病患者のセルフケアは向上し、常に血糖値を気にすることで、長期間にわたりHbA1cを改善できると考えられます」と、カナダのLMC Diabetes & Endocrinologyのロニー アロンソン氏は述べてる。

 「Eversense XL CGMシステム」は、2018年6月21日にFDAによって承認された。

Fully Implantable, Continuous Glucose Monitoring Sensor Provided Accuracy for Six Months in Adolescents and Adults with Type 1 Diabetes(米国糖尿病学会 2018年6月23日)
Eversense CGM System

インスリン療法を行っていない2型糖尿病患者の血糖自己測定(SMBG)は効果的

 インスリン療法を行っていない2型糖尿病患者が、血糖自己測定(SMBG)を行うことは、HbA1cの改善、生活習慣改善の促進、ひいては医療費の抑制につながるという米国家庭医学会(AAFP)の見解が発表された。

 同学会は17人のプライマリケア医にインタビューを実施。血糖自己測定は2型糖尿病の初期診断においてももっとも効果的であり、患者教育を容易にし、患者の自己管理を向上させる効果があると結論付けた。米国糖尿病学会(ADA)のガイドラインを準拠に患者が血糖自己測定を行うことが推奨されるとしている。

 Research And Marketsの予想によると、糖尿病人口の増加、高齢者人口の増加、糖尿病ケアの向上にともない、血糖自己測定器の市場規模は世界的に拡大しており、2023年までに2.2兆円(186億ドル)に達する。

 血糖自己測定の需要は途上国でも大きく、日本を含む西太平洋地域は糖尿病人口の増加がとくに著しく血糖自己測定の需要は拡大している。

 血糖自己測定はCGM(持続血糖モニタリング)よりも安価で、糖尿病の90~95%を占める2型糖尿病患者も対象となり、より多くの患者が利用でき、糖尿病の治療を改善するのに効果的だとしている。

Physicians' Views of Self-Monitoring of Blood Glucose in Patients With Type 2 Diabetes Not on Insulin(Annals of Family Medicine 2018年7月10日)
Glucose Monitoring Devices Market - Global Outlook and Forecast 2018-2023(Research And Markets 2018年7月31日)

2型糖尿病の入院患者の血糖コントロールに人工膵臓が効果的

 自動注入インスリンポンプと持続血糖測定(CGM)を組み合わせた「人工膵臓」は、入院中の2型糖尿病患者における血糖コントロールに有用とする研究が発表された。

 入院中の2型糖尿病患者は血糖コントロールが不良だと入院期間が延長し、合併症や死亡のリスクが高まる。ケンブリッジ大学代謝研究所の研究チームは、1型糖尿病患者を対象に実用化が進む人工膵臓システムに着目。一般病棟に入院し、インスリン治療を必要とする2型糖尿病患者136例を対象に、クローズドループ型の人工膵臓システムの有用性を検証するランダム化比較試験を実施した。

 その結果、血糖値が目標値の範囲内におさまった時間の割合の平均値は、人工膵臓群の65.8%に対し、対照群では41.5%だった。人工膵臓群では対照群と比べて平均血糖値も有意に低いことも分かった(154mg/dL対188mg/dL)。

 「欧米では入院患者の25%以上で糖尿病が認められます。インスリン治療を必要とする2型糖尿病の入院患者において、人工膵臓システムは従来のインスリン皮下投与よりも血糖コントロールに優れ、低血糖リスクを高めないことが示されました」と、研究者は述べている。

Closed-Loop Insulin Delivery for Glycemic Control in Noncritical Care(NEJ 2018年6月25日)

妊娠糖尿病は子供の自閉症リスクを高める

 母親の糖尿病が子供の自閉症リスクを高める可能性を示唆した研究。カリフォルニア州のKaiser Permanenteの関連病院で出生した児のデータを後ろ向きに解析し、糖尿病の母親から自閉症スペクトラム障害(ASD)児が生まれるリスクを検討した。

 1995~2012年に生まれた41万9,425人の子どもを後ろ向きに調査したところ、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠26週までに診断された妊娠糖尿病の母親から出生した児はASDリスクが上昇することが示された。

 6.9年(中央値)の追跡期間中に5,827例がASDと診断された。児1,000人当たりのASD罹患率は母親が1型糖尿病では4.4人/年、2型糖尿病では3.6人/年、26週までに診断された妊娠糖尿病では2.9人/年、26週以降に診断された妊娠糖尿病では2.1人/年、非糖尿病では1.8人/年だった。

 いずれも原因は特定されていない。妊娠糖尿病に関するセッションで発表された調査によると、米国の妊娠糖尿病の有病率は2006年の4.6%から2016年の8.2%に増加している。

Maternal Type 1 Diabetes and Risk of Autism in Offspring(Diabetes 2018年7月3日)

米国でインスリンの価格が上昇 血糖コントロール不良例の増加の一因に

 米国ではインスリンの価格が高騰している。JAMAに2016年に発表された研究によると、インスリンの価格は2002年から2013にかけて3倍に上昇した。

 イェール大学糖尿病センターの調査によると、インスリンの価格高騰の影響を受けずにインスリン療法を続けられている患者は25%を上回るにとどまり、とくに低所得層では高所得層に比べ、インスリン療法を続けられずHbA1cが悪化する比率が3倍に上昇するという。

Expenditures and Prices of Antihyperglycemic Medications in the United States: 2002-2013(JAMA 2016年4月5日)

革新的ながん治療薬がインスリン依存型糖尿病を引き起こす

 がん治療に免疫チェックポイント阻害薬が使われるようになり、開発中の薬剤も多い。高度な悪性黒色腫、非小細胞肺がん、リンパ腫など、がん患者の生存率を高める新しい治療法として期待される一方で、インスリン依存型糖尿病の発症を増やす可能性が指摘されている。

 イェール大学医学大学院糖尿病センターの研究グループは、免疫チェックポイント阻害薬には、その作用機序からさまざまな自己免疫疾患を惹起する可能性があり、予備的調査では免疫チェックポイント阻害薬を投与された1%がインスリン依存型糖尿病の発症したと報告。2型糖尿病を併発していた患者がインスリン依存になった例も少なくない。「がん治療薬と糖尿病の関連に理解するためにさらに調査が必要」と指摘している。

Collateral Damage: Insulin-Dependent Diabetes Induced With Checkpoint Inhibitors(Diabetes 2018年6月)

積極的な介入を拒む2型糖尿病患者は共通した背景をもつ

 2型糖尿病患者の多くが、糖尿病治療に対する「臨床的な慣性」(clinical inertia)に陥り、積極的な治療介入を拒んでいるという報告をアメリカン メディカル グループ アソシエーション(AMGA)が発表した。

 血糖コントロールが不良だった患者のデータ4万7,000例以上を解析したところ、医師の90%以上は患者の血糖コントロールを改善するための指導を行ったが、2年以内に目標を達成できた患者は56%にとどまったことが判明。

 研究グループはそうした例を「臨床的な慣性」と定義し、解析したところ、背景に医療コストの問題があることが示された。

 たとえばGLP-1受容体作動薬などの新しいクラスの糖尿病治療薬は、一部の患者にとって高価であり受け入れられないという。医療費の問題が良好な血糖コントロールの持続を阻む要因になっている。

Characterizing Clinical Inertia in a Large, National Database(Diabetes 2018年7月)

減量で2型糖尿病を寛解できるのはどういうタイプの患者か?

 肥満のある2型糖尿病患者が一定の体重減少を達成すれば、糖尿病を寛解できる可能性があると、英国のニューカッスル大学の研究グループが発表。計画的な減量により肝脂肪を劇的に改善できる可能性があるという。

 2014~2016年に実施された「DiRECT」(Diabetes Remission Clinical Trial)プログラムでは、肥満のある2型糖尿病患者が平均10.5kgの減量に成功し、脂肪肝を3~16%改善した。肝臓と膵臓の脂肪を測定する磁気共鳴画像(MRI)を実施した結果、脂肪肝を解消することで、膵臓にたまった脂肪も正常化でき、β細胞が活性化しインスリン分泌を正常レベルまで戻せる可能性が示された。

Lose the weight and lose the diabetes(ニューカッスル大学2018年1月2日) Primary care-led weight management for remission of type 2 diabetes (DiRECT): an open-label, cluster-randomised trial(Lancet 2017年12月5日)

78th Scientific Sessions(American Diabetes Association)
[Terahata]

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編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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