糖尿病性腎臓病の進展に関わる新たなメカニズムを明らかに 内因性のフルクトースの過剰な代謝を抑制

 名古屋大学は、日本における透析導入原因で第1位の原疾患である糖尿病性腎臓病の進展における新しいメカニズムを解明した。糖尿病には多くの治療薬があるが、腎障害の進行を完全に抑えることは難しく、糖尿病性腎臓病の病態の解明、新たな治療薬の開発が望まれている。
フルクトース代謝と糖尿病性腎臓病には相関関係がある
 この研究は、名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学の道家智仁客員研究員、同大学医学部附属病院腎臓内科の石本卓嗣助教、同大学医学系研究科分子生物学の門松健治教授、腎臓内科学の丸山彰一教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Metabolism」に掲載された。

 20世紀以降、先進国を中心に砂糖の摂取量が増加し、果糖ブドウ糖液が開発されて以降、清涼飲料水・加工食品に広く使用されるようになった。それらに多量に含まれる果糖(フルクトース)の摂取量も飛躍的に増加している。フルクトースの摂取と、肥満・糖尿病・高血圧・脂肪肝などの代謝性疾患の発症には、相関関係があることが知られている。

 また、フルクトースは食事由来(外因性)のみならず、糖尿病においてはポリオール経路を介して体内にて(内因性に)産生される。研究グループはこれまでに、外因性および内因性のフルクトースの過剰な代謝を抑制することで、メタボリックシンドロームや糖尿病性腎臓病が改善することを報告してきた。
過剰なフルクトース代謝がATPの枯渇、炎症、酸化ストレスを引き起こす
 フルクトースは主にフルクトース代謝酵素であるケトヘキソキナーゼ(KHK)で代謝され、KHKには「KHK-C」と「KHK-A」の2種類があり、ともに腎臓では近位尿細管のみにある。

 KHK-Cは腎臓・肝臓・小腸などの限られた臓器にのみにあり、フルクトースの代謝能力が高い一方で、KHK-Aは腎臓を含め幅広い臓器に分布し、フルクトースの代謝能力が低い。

 研究グループはこれまでに、過剰なフルクトース代謝が重要なエネルギーの単位であるATPの枯渇、核酸分解、尿酸産生、炎症、酸化ストレスを引き起こし、フルクトースを代謝することができないマウス(KHK-A/C 両欠損マウス)では肥満・脂肪肝・高インスリン血症および糖尿病性腎臓病が改善することを報告してきた。

 一方で、野生型マウスと比較してKHK-A単独が欠損したマウスでは、フルクトース摂取により、誘導される肥満・脂肪肝がより悪化することを報告しており、KHK-AおよびKHK-Cが異なった役割を担っていることが示唆されていた。
糖尿病性腎臓病ではKHK-CとKHK-Aが相反する役割をしている
 研究グループは今回の研究で、糖尿病性腎臓病におけるKHK-AおよびKHK-Cそれぞれの役割を解析。その結果、KHK-Cによるフルクトース代謝は、酸化ストレス・核酸分解を介して尿細管障害を引き起こすことが分かり、KHK-Cによるフルクトース代謝が糖尿病性腎臓病の増悪の一因であることが判明した。

 一方で、KHK-Aの欠損は腎臓でのさらなるフルクトース代謝の亢進・炎症の増悪・低酸素を誘導し、より重度の尿細管障害・腎機能障害を引き起こすことから、糖尿病性腎臓病においてKHK-Aは保護的な役割を持つことが新たに解明された。また、これらはKHK-Aがフルクトース代謝酵素以外の機能を持つことに由来することも判明した。

 ケトヘキソキナーゼ(KHK)によるフルクトース代謝は肥満・高血圧・脂肪肝・インスリン抵抗性などのメタボリックシンドロームや糖尿病性腎臓病の進展に関わっている。今回の研究により、肥満・脂肪肝・インスリン抵抗性に加え、糖尿病性腎臓病においてKHK-Cによるフルクトース代謝が増悪因子として考えられ、KHK-Aには保護的な役割があることが明らかになった。

 今後の研究で、選択的なKHK-C阻害薬を開発すれば、糖尿病性腎臓病の進展抑制を期待できるのに加え、メタボリックシンドロームの新規治療法に結びつくことが期待されると、研究グループは述べている。
名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学
Lacking Ketohexokinase-A Exacerbates Renal Injury in Streptozotocin-induced Diabetic Mice(Metabolism. 2018年3月28日)
[Terahata]

関連ニュース

2019年08月08日
DPP-4阻害薬「スイニー」にLDLコレステロール低下作用 スタチン服用中のハイリスク2型糖尿病患者で
2019年08月08日
FDAが初の経鼻グルカゴン製剤を承認 重症低血糖治療の新たな選択肢
2019年08月02日
糖尿病合併症の検査の実施率に全国で格差 糖尿病腎症の検査の実施率は最高31.6%、最低10.8% 国立国際医療研究センター
2019年08月02日
糖尿病性腎症の予後因子としてタンパク尿の重要性を解明 腎生検にもとづく長期・大規模コホート研究「糖尿病性腎症レジストリー」
2019年08月01日
「SGLT2阻害薬」はケトアシドーシスに注意 「患者への説明も含めた十分な対策が必要」と呼びかけ 日本糖尿病学会
2019年08月01日
血糖自己測定(SMBG)の再評価が始まっている SMBGは糖尿病の管理を向上させる有用なツール
2019年08月01日
SGLT2阻害薬使用で血糖値が正常でも糖尿病性ケトアシドーシスを発症
2019年07月30日
2017年度の生活習慣病の医療費 糖尿病が第1位に レセプト3億8,000万件を分析
2019年07月26日
医師からの共感を経験した2型糖尿病患者の臨床転帰が改善 英研究
2019年07月26日
経口セマグルチドを日本で2型糖尿病治療薬として承認申請 GLP-1アナログの錠剤

関連コンテンツ

編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
ページのトップへ戻る トップページへ ▶