糖尿病患者での「エボロクマブ」の安全性・有効性 LDL-C値が低下し心血管イベントが減少 FOURIER試験

第53回欧州糖尿病学会(EASD)
 心血管アウトカム試験「FOURIER試験」の新規解析により、「エボロクマブ」(商品名:レパーサ)により、ベースライン時における糖尿病発症の有無を問わず、低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)値の低下が心血管イベントを有意にかつ一貫して減少させることが明らかになったと、アムジェン社が第53回欧州糖尿病学会(EASD)年次総会で発表した。
心血管イベントの発現率が20%低下
 患者2万7,564例を対象としたエボロクマブの心血管アウトカム試験である「FOURIER」(Further Cardiovascular OUtcomes Research with PCSK9 Inhibition in Subjects with Elevated Risk)試験は、エボロクマブとスタチン療法の併用がプラセボとスタチン療法の併用と比較して心血管イベントを減少させるか否かを評価するために設計された、第3相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、国際共同試験です。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院、または冠動脈血行再建術までの時間とした。主要な副次評価項目は、心血管死、心筋梗塞、または脳卒中を発現するまでの時間とした。

 コレステロール高値(LDL-C≥70mg/dL、または非高比重リポタンパクコレステロール(non-HDL-C)≥100mg/dL)を示し、臨床的に明らかなアテローム性心血管疾患を有する適格患者を、世界で1,200を超える治験実施医療機関において、最適用量のスタチンに加えてエボロクマブを2週間に1回140mgまたは月1回420mg皮下投与する治療群、または最適用量のスタチンに加えてプラセボを2週間に1回または月1回皮下投与する治療群に無作為に割り付けた。最適用量のスタチン療法とは、1日20mg以上のアトルバスタチンまたは類薬と定義し、承認されている地域では1日40mg以上のアトルバスタチンまたは類薬を推奨するものとした。同試験はevent-driven試験であり、少なくとも患者1,630例が主要な副次評価項目を発現するまで継続した。

 同試験では、最初の心臓発作、脳卒中、または心血管死(主要な副次複合評価項目)にもとづく主要な心血管イベントの複合評価項目について十分な統計的検出力を備え、最適用量のスタチン療法にエボロクマブを追加投与することで、これらのイベントの発現率が統計学的に有意に20%低下したことが示された(p<0.001)。

 さらに、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術、心臓発作、脳卒中、または心血管死を含む拡大したMACE複合(主要)評価項目のリスクが、統計学的に有意に15%低下したことが示された(p<0.001)。

 約60,000患者・年の追跡を行ったこの大規模臨床試験において、極めて低いLDL-C値を達成した患者の評価も含めて検討した結果、安全性に関する新たな懸念は認められなかった。

 「エボロクマブ」は、ヒトIgG2モノクローナル抗体で、ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害する。エボロクマブはPCSK9に結合し、血中のPCSK9が低比重リポタンパク(LDL)受容体(LDLR)と結合するのを阻害する。その結果、LDLRの分解が抑制され、肝細胞表面でのLDLRの再利用を可能とする。血中LDLを除去するLDLR数を増加させ、LDL-C値を低下させる。
糖尿病の患者とそうでない患者でエボロクマブの安全性は同等
 アテローム性心血管疾患を有する患者において、糖尿病は心血管疾患の罹患率および死亡率の著しいリスク増加に独立して関連していることが、同解析から示された。糖尿病患者では、ベースラインの心血管イベントリスクが既に高いことから、エボロクマブ投与による絶対リスクの減少が大きくなる傾向にある。

 より積極的なLDL-C値低下について検討した最近の試験結果と同様に、エボロクマブの心血管死に対する影響は現時点では示されていない。また同解析により、試験期間中央値の2.2年にわたり、非糖尿病患者および前糖尿病状態の患者における糖尿病の新規発症および血糖値状態の悪化(血中グルコースの増加)のリスク上昇とエボロクマブ投与が関連しないことが示された。さらに、安全性に関する新たな懸念は認められなかった。

 「今回の解析により、糖尿病の有無を問わずアテローム性心血管疾患を有する患者は、現在の目標値を大幅に下回るLDL-C値を達成することによって、恩恵を得られることが示された。特に糖尿病患者では、心血管イベントリスクが著しく高いことから、絶対リスクの減少がさらに大きくなる傾向がみられた。また、重要な点として、糖尿病の患者とそうでない患者両者において、エボロクマブの安全性が同等であることを示すさらなるエビデンスをもたらしました」と、同解析に関する論文の筆頭著者も務めたMarc S. Sabatine氏は述べている。

 エボロクマブ心血管アウトカム試験に関して事前に規定した解析の一環として、糖尿病の状態を、患者の既往歴、臨床的事象の調査、またはベースライン時の糖化ヘモグロビン(HbA1c)が6.5%以上あるいは空腹時血糖値(FPG)が126 mg/dL以上であるかにもとづいて定義した

 ベースラインで、糖尿病患者は40%(n=1万1,031)、非糖尿病患者は60%(n=1万6,533)だった。非糖尿病患者のうち、糖尿病前症患者は1万344例、正常血糖を示す患者は6,189例だった。

 プラセボ投与群と比較したエボロクマブ投与群による48週目におけるLDL-C値平均低下率は、糖尿病患者集団において57%(95%信頼区間(CI):56-58、p<0.0001)、非糖尿病患者集団において60%(95% CI:60-61、p<0.0001)を示し、両群において30mg/dLまで低下した。

 糖尿病患者に対するエボロクマブ投与群における、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術、心臓発作、脳卒中、心血管死を含む主要複合評価項目のハザード比(HR)は0.83(95% CI:0.75-0.93、p=0.0008)、非糖尿病患者では0.87(95% CI:0.79-0.96、p=0.0052)だった。

 糖尿病患者では、ベースライン時の心血管イベントリスクが既に高いことから、非糖尿病患者よりもエボロクマブ投与による絶対リスクの減少が大きくなる傾向が示されており(糖尿病患者2.7%(95% CI:0.7-4.8)、非糖尿病患者1.6%(95% CI:0.1-3.2))、これには冠動脈血行再建術の絶対リスクの減少(糖尿病患者2.7%[95% CI:1.1-4.2]、非糖尿病患者1.8%[95% CI:0.6-3.1])の大きさが主に影響している。

 心臓発作、脳卒中、心血管死を含む副次複合評価項目の、糖尿病患者におけるエボロクマブ投与群のHRは0.82(95% CI:0.72-0.93、p=0.0021)、非糖尿病患者では0.78(95% CI:0.69-0.89、p=0.0002)だった。同試験の全体的な結果と同様に、糖尿病患者および非糖尿病患者において、主要および副次評価項目のリスク低下度は2年目以降、経時的に増大する傾向が認められた。
高用量スタチンで管理が困難な患者での治療選択肢
 「糖尿病の患者によくみられる脂質の異常高値は、心血管疾患のリスクを増加させる。標準治療である高用量のスタチン投与を受けていながら、重要なLDL-C値の管理が依然として困難である患者もいる。解析により、糖尿病の患者における心血管イベントリスクが著しく高いこと、また、このようなリスクの高い患者では、エボロクマブ投与により絶対リスクの減少が大きくなることから、適切な治療選択肢としてのエボロクマブの重要性をより明確に示すエビデンスが得られた」と、アムジェン社のSean E. Harper氏は述べている。

 なお、エボロクマブ投与群において、プラセボ投与群と比較し、ベースライン時に糖尿病を発症していなかった患者の糖尿病の新規発症リスクの増加は認められなかった(エボロクマブ投与群8.0%[663/8,256例]、プラセボ投与群7.6%[631/8,254例)、HR:1.05[95% CI:0.94-1.17))。糖尿病を発症していなかった患者には、前糖尿病状態の患者も含まれた(HR:1.00(95% CI:0.89-1.13))。HbA1c値およびFPG値は、糖尿病患者、前糖尿病状態の患者、正常血糖を示す患者において、経時的にエボロクマブ投与群とプラセボ投与群間で同程度だった。

 有害事象および重篤な有害事象の全体的な発現率は、糖尿病患者および非糖尿病患者において、エボロクマブ投与群とプラセボ投与群間で同程度だった。ベースライン時に糖尿病であった患者では、エボロクマブ投与群において有害事象を発現した患者の割合は78.5%(4,327/5,513例)、プラセボ投与群では78.3%(4,307/5,502例)だった。ベースライン時に糖尿病がなかった患者では、エボロクマブ投与群において有害事象を発現した患者の割合は76.8%(6,337/8,256例)、プラセボ投与群では76.8%(6,337/8,254例)だった。
[Terahata]

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