GLP-1受容体作動薬の最新動向 週1回投与のGLP-1受容体作動薬「セマグルチド」の知見
2017.06.23
ノボ ノルディスク ファーマは6月19日に、「糖尿病治療における今後のGLP-1受容体作動薬の最新動向~臨床試験の結果から見えること~」と題し、メディア向け勉強会を開催した。
関西電力病院総長で関西電力医学研究所所長の清野裕氏が、日本糖尿病学会学術集会後の糖尿病治療の最新知見や、いくつかの臨床試験結果にもとづく最適な治療薬の選択について、特に日本人の2型糖尿病患者に適した薬剤として期待されるGLP-1受容体作動薬にフォーカスして講演した。
関西電力病院総長で関西電力医学研究所所長の清野裕氏が、日本糖尿病学会学術集会後の糖尿病治療の最新知見や、いくつかの臨床試験結果にもとづく最適な治療薬の選択について、特に日本人の2型糖尿病患者に適した薬剤として期待されるGLP-1受容体作動薬にフォーカスして講演した。
日本人を含む6件の国際共同試験「SUSTAIN」
セマグルチドは、血糖値に応じてインスリンの分泌を促進させ、同時にグルカゴンの分泌を抑制するだけでなく、食欲を抑制し食物摂取量を減らす、週1回投与の新規のGLP-1受容体作動薬。ノボ ノルディスク ファーマは今年2月に、セマグルチドを2型糖尿病の適応症で、厚生労働省に承認申請した。 「SUSTAIN」(Semaglutide Unabated Sustainability in Treatment of Type 2 Diabetes)1~6は、セマグルチドの週1回投与(皮下注射)の第3a相臨床試験プログラムであり、合計7,000人以上の2型糖尿病患者を対象とした6件の国際共同試験と、合計約1,000人の2型糖尿病患者を対象とした2つの日本の試験より構成される。 「SUSTAIN」プログラム全体を通じて、セマグルチドはHbA1cを低下させ低血糖のリスクが低く、良好な安全性プロファイルが示された。6月に名古屋で開催された第60回日本糖尿病学会の年次学術集会では、セマグルチドの9件のデータが発表された。HbA1cを改善し体重も減少
このうち「SUSTAIN」の最初の第3相試験であるSUSTAIN 1では、食事療法および運動療法で治療中の2型糖尿病患者388例を対象にセマグルチド0.5mgおよび1.0mgを週1回、30週間にわたり皮下投与したときの有効性および安全性をプラセボが比較検討された。 HbA1cに関しては、ベースライン時の平均値8.1%に対して、プラセボ群では変化がみられず、セマグルチド0.5mg群および1.0mg群では、それぞれ1.5%および1.6%の改善が確認された。 HbA1c7%未満を達成した被験者の割合は、プラセボ群では25%だったのに対し、セマグルチド0.5mg群および1.0mg群ではそれぞれ74%および72%だった。さらに、ベースライン時の平均体重92kgからの体重減少量は、プラセボ群では1.0 kgだったが、セマグルチド0.5mg群および1.0mg群では、それぞれ3.7kgおよび4.5kgと有意な低下が認められた。 セマグルチドのもっともよくみられた有害事象は消化器系の症状(主に悪心)で、これらの事象の発現は時間経過に伴って減少した。心血管イベントリスクを26%低下
また、SUSTAIN 6では、心血管イベント発生リスクの高い成人2型糖尿病患者3,297例を対象に、セマグルチド(0.5mgおよび1.0mg)週1回投与を標準治療に加え、その心血管系リスクへの長期的な影響を、プラセボと比較した。標準治療は生活習慣の改善、血糖降下薬および心血管系治療薬で構成された。20ヵ国から3,297人の成人2型糖尿病患者が無作為に割り付けられ、104週間の治療を受けた。 セマグルチドは心血管イベント発生リスクの高い成人2型糖尿病患者の主要な心血管イベントリスクを26%有意に低下させた。さらに、非致死性の脳卒中のリスクは統計学的に有意に39%低下させ、また、統計学的には有意でないものの非致死性の心筋梗塞が26%低下させた。一方、治療後2年では心血管死のアウトカムには違いが認められなかった。 今回のアウトカム試験で、標準治療に追加投与後104週の時点で、ベースラインの平均HbA1c8.7%から、プラセボ(0.5mgおよび1.0mg)では0.4%低下したのに対し、セマグルチド0.5mgおよび1.0mgでは、それぞれ1.1%および1.4%、有意に低下した。 さらに、ベースラインの平均体重92.1kgから、プラセボ0.5mgおよび1.0mgでそれぞれ0.7kgおよび0.5kg減少したのに対し、セマグルチド0.5mgおよび1.0mgは、3.6kgおよび4.9kg、有意に減少させ維持させた。 重篤な有害事象は、プラセボに対してセマグルチドで少なく、有害事象による投与中止は、セマグルチドでより多い結果となった。主に胃腸障害によるもので、糖尿病腎症の新規発症あるいは悪化が認められた例数は、プラセボ(6.1%)と比較してセマグルチド(3.8%)で有意に少なかったが、糖尿病網膜症に関しては、プラセボ(1.8%)と比較してセマグルチド(3.0%)で統計学的に有意に多く認められた。 ノボ ノルディスク ファーマ ※2017年6月27日に内容を一部修正しました。[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]