糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第36回 糖尿病腎症の進展抑制が期待される
「経口薬剤」

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 62(2019年10月1日号)

 糖尿病腎症の進行阻止のため、レニンアンジオテンシン系(RAS)阻害薬が用いられていますが(文献1)、その後有効な薬剤は約20年間登場しませんでした。糖尿病腎症の進展抑制について最近の情報を掲載します。

これまでのSGLT2阻害薬の腎サブ解析

 2015年9月にEASD(欧州糖尿病学会)で発表されたエンパグリフロジン(ジャディアンスⓇ)の大規模臨床試験のEMPA-REG OUTCOME試験。翌年の腎サブ解析で、腎複合エンドポイント(顕性アルブミン尿への進展、血清クレアチニン値の倍増、透析などの開始、腎疾患死)で39%の抑制が認められ注目されました(文献2)。その後さらにカナグリフロジン(カナグルⓇ)のCANVAS試験(文献3)でも類似の結果が報告されました。2019年6月のADA(米国糖尿病学会)でダパグリフロジン(フォシーガⓇ)のDECLARE-TIMI58の腎サブ解析が発表されました。これには一次予防患者が6割含まれていて、eGFRが60mL/min未満・以上でも腎症進展抑制が証明された点が注目されています(文献4)。

画期的なCREDENCE試験結果

 以上は比較的腎機能の保たれた症例が対象で副次的解析結果でした。ところが2019年4月オーストラリアのISN(国際腎臓学会)で発表されたCREDENCE試験(文献5)ではカナグリフロジンの腎保護作用が発表され喝采を浴びました。最大耐用量のRAS阻害薬を服用しeGFRが30以上90未満で、アルブミン尿が300〜5,000mg/gCrと顕性アルブミン尿の2型糖尿病患者が対象で、日本人も少数入っています。カナグリフロジン100mg/日とプラセボにランダム化、主要評価項目は「末期腎不全、血清クレアチニン倍加、腎・心血管死」です。この結果、追跡期間中央値2.62年の中間解析で有効性が明白になり試験は中止。主要評価項目の発生30%減少!腎アウトカムで34%減少!さらに主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)、心不全入院患者の減少、その後のサブ解析では心血管イベントの一次予防も確認され驚きを喚起しています(文献6)。

おわりに

 中等度以上の腎機能低下症例への有効証明は、今のところCREDENCE試験のみです。しかしeGFR30未満症例の有効証明はまだで、腎機能低下とともに血糖降下作用が減弱する問題(併用薬必要)もあり、症例毎の判断が必要です。さて腎臓/循環器専門病院の先生は、SGLT2阻害薬を処方したらすぐかかりつけ医に連絡願います。当院で処方が重複しそうになった2例がありましたので、薬剤師さんもご注意下さい。

参考文献

  • 1) Lewis EJ, et al. N Engl J Med. 345(12):851-860, 2001
  • 2) Wanner C et al. N Engl J Med.375(4):323-334, 2016
  • 3) Neal B et al. N Engl J Med. 377(7):644-657, 2017
  • 4) Mosenzon O et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 7(8):606-617, 2019
  • 5) Perkovic V et al. N Engl J Med.380(24):2295-2306, 2019
  • 6) Mahaffey KW et al. Circulation. 2019 Jul.10.1161/ [Epub ahead of print]

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント 目次

2020年01月24日
厚労省が「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を公開 脂質異常症と高齢者のフレイルに対策 よりきめ細かな栄養指導が必要に
2020年01月24日
「スーグラ錠」「スージャヌ配合錠」の重⼤な副作⽤にアナフィラキシー 厚労省が添付⽂書の改訂を指⽰
2020年01月23日
SGLT2阻害薬で痛風発症率が低下
2020年01月22日
インスリンに糖鎖が結合した新しい分子「グリコインスリン」の合成に成功 線維化しない新しいインスリン分子を創製 大阪大
2020年01月22日
難治性の傷を治す「シルクエラスチン」を開発 糖尿病性皮膚潰瘍などの慢性創傷に有効 産官学連携で医師主導の治験を実施
2020年01月22日
SGLT2阻害薬「フォシーガ」の慢性心不全治療薬としての効能・効果追加を申請 DAPA-HF試験結果を受け
2020年01月16日
慢性腎臓病(CKD)により体内時計が乱れる 中枢時計や末梢臓器の時計の乱れが腎機能をさらに悪化させるという負の連鎖
2020年01月16日
「郡山市における糖尿病対策に係る共同研究」の結果 ノボ、郡山市、福島県立医科大学 治療中断者は糖尿病への理解や認識が不足している
2020年01月16日
サノフィが「Diabetes.Your Type.」キャンペーンを開始 糖尿病患者が病気を隠さずにいられる社会を
2020年01月16日
歯周病の治療で糖尿病の合併症が減り、費用対効果がアップ
4コマ劇場 糖尿病看護のあるある体験談