内視鏡で肥満症を治療する「内視鏡的スリーブ状胃形成術」に成功 糖尿病やメタボの多い日本でこそ普及を 慈恵会医科大
2020年12月03日
東京慈恵会医科大学は、肥満症の新たな治療法として、日本初となる「内視鏡的スリーブ状胃形成術」を成功させたと発表した。
研究は、東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座の炭山和毅教授らと、同大外科学講座肥満外科の研究グループによるもの。
研究は、東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座の炭山和毅教授らと、同大外科学講座肥満外科の研究グループによるもの。
国内初のESG:内視鏡を使い胃の一部を内側から縫い合わせて容積を減少

出典:東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座、2020年

出典:東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座、2020年
日本でもESGの安全性・減量効果を検証 20人の肥満症の患者を募集
東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座の炭山和毅教授は、2005年に留学先の米メイヨークリニックで、Gostout教授の指導のもと、内視鏡縫合器の開発に携わってきた。その後、その処置具は医療機器としてApollo Endosurgery社より「OverStitch」として欧米で製品化され、さまざまな内視鏡手術に応用されている。
同講座では、国内初の臨床導入となった「OverStitch」を用いた内視鏡治療後潰瘍の閉鎖を行う臨床試験を含め、さまざまな研究を行い、国際学会や論文で発表しているという。
また、研究分担者である同講座の土橋昭助教も2年間、Gostout教授の研究室で「OverStitch」を用いた減量手術法の研究を行っている。実際にESG手術に何度も立ち合い、動物モデルを用いたESGのトレーニングも重ねているという。
今回の試験では、20人の肥満症の患者を募集し、術後6ヵ月間の追跡調査を行う。日本国内でもESGの安全性や減量効果が実証されれば、多くの肥満症の患者に、安全かつ効果的な治療を提供できるようになると期待しているという。
なお、同大におけるESG研究は、治療に使用する内視鏡的縫合器(OverStitch Sx)が、日本の医薬品医療機器等法(薬機法)の未承認医療機器であるため、臨床研究法にもとづき、倫理委員会による厳格な評価のもと承認を得た特定臨床研究として実施されている。

出典:東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座、2020年
東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座
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