【新型コロナ】関節リウマチ治療薬「バリシチニブ」のCOVID-19入院患者の治療を目的とした緊急使用許可をFDAが発令

 イーライリリー・アンド・カンパニーおよびインサイト社は11月19日、酸素投与、侵襲的人工呼吸器、または体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とする新型コロナウイルス感染症(COVID19)の疑いのある、または検査でCOVID-19と確定した、入院中の成人患者および2歳以上の小児患者に対する「レムデシビル」との併用による「バリシチニブ」の流通および使用に関して、米国食品医薬品局(FDA)より緊急使用許可(EUA)が発令されたと発表した。
酸素投与が必要な入院患者に対するバリシチニブとレムデシビルの併用を許可
緊急使用許可(EUA)を裏付ける科学的エビデンスを確認
 「バリシチニブ」(商品名:オルミエント)は、日本では「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を適応症として承認されている1日1回経口投与のJAK阻害剤。

 「バリシチニブ」は、中等度および重度の関節リウマチを有する成人のための治療薬として、「オルミエント」として、米国を含む70ヵ国以上で製造販売承認を受け発売されている。また最近、全身療法が適用となる中等症から重症のアトピー性皮膚炎の成人患者の治療を目的として、欧州連合より承認を受けた。

 JAK酵素として、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2の4種類が知られている。JAK依存性サイトカインは多くの炎症性および自己免疫疾患の病因と関連している。「バリシチニブ」は、JAK3と比較して、JAK1、JAK2、TYK2へのより強い阻害作用を有しているが、特定のJAK酵素の阻害と治療効果の関連は、まだ解明されていない。

 リリーとインサイトは2009年12月に、炎症性および自己免疫疾患を有する患者のための「バリシチニブ」とその後続化合物の開発と商品化について、世界的な独占ライセンス提携契約を発表した。

 今回のEUAは、米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が主導した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアダプティブデザインによるACTT-2試験の結果にもとづいている。

 ACTT-2試験は、酸素吸入の必要の有無に関わらず、COVID-19で入院している患者を対象として「バリシチニブ」と「レムデシビル」の併用とプラセボと「レムデシビル」の併用の有効性と安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験。

 すべての患者が試験実施施設で標準的な支持療法を受けた。このEUAの推奨用量は、「バリシチニブ」4mg1日1回の14日間または退院までの投与だ。

<< 「バリシチニブ」の有効性および安全性に関する結果の要約 >>

● 「レムデシビル」単独療法と比較して、「バリシチニブ」と「レムデシビル」の併用療法を受けた全患者群では回復までの期間の中央値が8日から7日に12.5%改善した(ハザード比:1.15、95%信頼区間:1.00~1.31、p=0.047)。

● 投与開始から15日時点での臨床状態の改善のオッズは、「バリシチニブ」と「レムデシビル」の併用療法を受けた患者群で、「レムデシビル」単独療法を受けた患者群よりも良好であることが示された(オッズ比:1.26、95%信頼区間:1.01~1.57、p=0.044)。

● 投与開始から29日時点までに非侵襲的または侵襲的人工呼吸に至ったまたは死亡した患者の割合は、「バリシチニブ」と「レムデシビル」の併用療法群(23%)で、「レムデシビル」の単独療法群(28%)よりも低いことが示された(オッズ比:0.74、95%信頼区間: 0.56~0.99、p=0.039)。

● 29日目までに死亡した患者の割合は、「バリシチニブ」と「レムデシビル」の併用療法群では4.7%であったのに対し、「レムデシビル」の単独療法群では7.1%であり、相対的な減少率は35%だった(カプランマイヤー法により推定した29日時点の死亡率の差:-2.6%(95% 信頼区間:-5.8%~0.5%)。

● 有害事象と重篤な有害事象は、「バリシチニブ」と「レムデシビル」の併用療法群で、それぞれ41%、15%の患者で報告されたのに対し、「レムデシビル」の単独療法群では48%、20%の患者に報告さた。感染症および静脈血栓塞栓症(VTE)は、「バリシチニブ」と「レムデシビル」の併用療法群で、それぞれ6%、4%発現したのに対し、「レムデシビル」の単独療法群では、それぞれ10%、3%発現した。「バリシチニブ」を投与した患者群における新たな安全性シグナルは特定されなかった。

 「ACTT-2試験の結果により、COVID-19入院患者の治療に対するバリシチニブとレムデシビルの併用療法を支持する非常に必要性の高い知見と無作為化プラセボ対照によるエビデンスが医師と医学界にもたらされました。特筆すべきこととして、バリシチニブとレムデシビルの併用療法により、人工呼吸または死亡への転帰が有意に減少しました」とネブラスカ大学医療センターの教授でACTT試験の主任治験医師であるAndre Kalil氏は述べている。

 「EUAを受けたCOVID-19の治療選択肢はほとんどないため、このたびのバリシチニブの使用許可は、症状が進行した患者を助ける新たな臨床上の選択肢を医療従事者に提供するための重要なステップです」としている。

 NIAIDおよび治験責任医師らは、近日中に、全解析結果を査読誌に投稿する予定としている。また、COVID-19の入院患者を対象とした「バリシチニブ」の使用に関しては、他の試験が進行中だ。

 「バリシチニブに関する本日のFDAの措置は、入院していない高リスク患者を対象とした最近の中和抗体のEUAに加えて、リリーがEUAを取得した2つめ目の薬剤であり、さまざまな病期のCOVID-19の患者に対する治療選択肢を増やすこととなります。バリシチニブは患者の回復を早める可能性があるため、酸素投与を受けている入院患者にとって重要なマイルストーンです」と、イーライリリーでは述べている。

 なお、FDAは、適切な承認された代替薬がない場合、生命を脅かす疾患の診断、治療、予防に役立つ可能性のある薬剤を使用可能とする緊急使用を許可している。

 「バリシチニブ」のCOVID-19に対する緊急使用は、緊急使用許可を妥当とする事態の宣言期間中にのみ許可され、許可が早期に中止または取り消される場合もある。また、緊急使用許可は一時的な措置であり、正式な審査および承認プロセスに代わるものではないとしている。

 米国では、「バリシチニブ」はCOVID-19の治療薬としてFDAに承認されておらず、COVID19に対する「バリシチニブ」の有効性、安全性、最適な治療期間は確立されていない。これは、FDAが緊急使用許可を承認した最初の「レムデシビル」併用レジメンだ。COVID-19の治療薬としての「バリシチニブ」の有効性と安全性は、引き続き、臨床試験で評価中としている。

日本イーライリリー
[Terahata]

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編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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