日本の高齢者のインフルエンザなどの予防接種率は低い 「プライマリ・ケア」が充実すると接種率は向上

 「必要なときに幅広い内容の相談ができる」など、プライマリ・ケアで受けているサービスが充実している患者ほど、インフルエンザおよび肺炎球菌予防接種の接種率が高いことが明らかになった。
 研究は、横浜市立大学が、「プライマリ・ケア」を受診した65歳以上の高齢者1,000人を対象に調査したもの。
高齢者のインフルエンザ・肺炎球菌のワクチンの接種率が低い
 高齢者や基礎疾患のある人はインフルエンザが重症化しやすい。そこで厚生労働省は65歳以上の高齢者を、インフルエンザおよび肺炎球菌のワクチンの接種対象に定めている。しかし、実際の接種率は、それぞれ50.2%、37.8%となっており、高齢者が十分に予防接種を受けられていない。

 とくにインフルエンザ・ワクチンは、接種を受けることで、インフルエンザを発症する人を約50%減らし、インフルエンザが原因で死亡する人を約80%減らす効果があると考えられている。いかに接種率を高めるかが課題になっている。

 一方、「プライマリ・ケア」は、病気を最初に診る地域のかかりつけ医(主に開業医)によって提供される。身近にあって、患者の抱えるさまざまな問題に幅広く対処でき、総合的な医療を提供している。

 これまでの研究で、小児の予防接種や、がん検診の受診などの予防医療行動と、プライマリ・ケアでの「患者が医療ケアのプロセスで経験した事象(PX)」のスコアが正の相関をもつことが示されている。

 そこで研究グループは今回の研究で、プライマリ・ケアにおける高齢者の予防接種について、PXとの関連を調査した。

 研究は、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の金子惇講師(研究当時浜松医科大学特任助教)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of General and Internal Medicine」に掲載された。
近接性、継続性、地域志向性などがプライマリ・ケアの要素
 研究グループは、日本のプライマリ・ケアの質評価・向上を目的に、全国25ヵ所の総合内科、家庭医療科、総合診療科の無床診療所、および200床未満の病院を受診した20歳以上の外来患者を調査した。

 2018年2~3月の特定週1週間に受診して調査に回答した65歳以上の1,000人を抽出し、プライマリ・ケアにおけるPX尺度「JPCAT」を用いて解析した。

 「JPCAT」は、日本初のプライマリ・ケアでのPX尺度。「患者の価値観を重視し」、「患者が認識・利用する機能を評価する必要がある」、といったプライマリ・ケアの特性を総合的に評価するものだ。

 具体的にはプライマリ・ケアの主要な要素である、(1)近接性、(2)継続性、(3)協調性、(4)包括性、(5)地域志向性という5つのポイントで、29項目の質問を用い、それぞれのスコアと合計スコアで評価する。
プライマリ・ケアが充実すると高齢者の予防接種率が向上
 その結果、プライマリ・ケアで受けられるサービス内容が充実している患者ほど、インフルエンザや肺炎球菌の予防接種率が向上することが分かった。

 予防接種率はインフルエンザが68%、肺炎球菌が53.8%だったが、JPCATのスコアが1標準偏差分増加すると、予防接種を受けている人の割合は、インフルエンザで1.19倍、肺炎球菌で1.26倍に増えた。

 研究グループは、「今回の研究では原因と結果を直接証明することはできない」としながらも、「プライマリ・ケアにおいて患者が必要としている機能を十分に提供することで、予防接種の接種率を向上できる可能性がある」と述べている。

 「身近な医療の質と高齢者の予防接種率には関連がある。プライマリ・ケアを改善することで、高齢者の予防接種率の向上に寄与できる可能性がある」と指摘している。

横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻
Better Patient Experience is Associated with Better Vaccine Uptake in Older Adults: Multicentered Cross-sectional Study(Journal of General Internal Medicine 2020年9月16日)
[Terahata]

関連ニュース

2020年10月28日
SGLT2阻害薬「フォシーガ」が心不全治療薬として欧州医薬品委員会より承認勧告 2型糖尿病合併の有無に関わらず左室駆出率が低下した心不全に適応
2020年10月28日
日本初の医師向けオンライン診療手引書が完成 遠隔医療開始の準備、診療の質を保つためのポイントなどを解説 慶應大
2020年10月22日
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第1版)」を公表 厚生労働省
2020年10月22日
【新型コロナ】息を用いた検査法を開発 呼気オミックスによる呼気医療に期待 東北大と島津製作所
2020年10月21日
SGLT2阻害薬に貧血の抑制効果 慢性腎臓病をともなう2型糖尿病で 赤血球数を増加させる作用を確認 金沢大学など
2020年10月21日
日本人高齢者のフレイル割合は8.7% プレフレイルは40.8% フレイルの予防・重症化予防を推進
2020年10月21日
【新型コロナ】コロナ禍がメンタル面に悪影響 職場でのストレス・不安・疲労が増加 早急なサポートが必要
2020年10月20日
「テクノロジーが変える糖尿病診療」 第63回日本糖尿病学会年次学術集会レポート(5)
2020年10月20日
「ガイドラインからみた糖尿病の食事療法における課題」 第63回日本糖尿病学会年次学術集会レポート(4)
2020年10月20日
「日本糖尿病学会・日本循環器学会 合同ステートメントの背景」 第63回日本糖尿病学会年次学術集会レポート(3)

関連コンテンツ

編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
ページのトップへ戻る トップページへ ▶