2型糖尿病の標準的な食事療法で「25kcal/kg/日」は妥当か 患者の80%が安静時代謝量に達していないという結果に

 2型糖尿病の食事指導で総エネルギー摂取量を「標準体重×25kcal/kg/日」と指導するケースがあるが、この総エネルギー摂取量と安静時代謝量を比較したところ、患者の80%近くが安静時代謝量に達していないことが、京都府立医科大学などの研究で示された。「最低でも"30kcal"という設定が必要かもしれない」としている。
「25kcal/kg/日」で指導すると、
患者の80%近くが安静時代謝量に達しない
 研究は、京都府立医科大学内分泌・代謝内科研究員および愛生会山科病院糖尿病内科部長の福田拓也氏らによるもの。研究成果は「Journal of Diabetes Investigation」に2019年10月28日付で掲載された。

 日本では軽労作(デスクワークが多い職業など)の糖尿病患者では、「身長(m)×身長(m)×22」で示される標準体重が、医療栄養療法(MNT)の指導で一般的に使用されている。しかし、「標準体重×25kcal/kg/日」で定義されるMNTの指導を受けている2型糖尿病患者では、安静時代謝量においてエネルギー不足が起こるという懸念がある。今回の研究は、2型糖尿病患者の安静時代謝量を測定し、そうした指導の有効性を検証することを目的に行われた。

 安静時代謝量は総エネルギー消費量の約60%を占めており、また安静時代謝量の約20%が骨格筋によって消費されている。安静時代謝量以上の適切な摂取エネルギー量を確保することは、エネルギー不足による筋萎縮を予防する上で重要であることが知られている。

 研究グループが、京都府立医科大学附属病院にて外来通院している2型糖尿病患者52人(男性24人、女性28人、平均年齢 65.9歳、平均BMI 24.9kg/m2、平均HbA1c 7.07%)を対象に、電子スパイロメーター(エアロモニタ AE-300S)を用いて安静時代謝量を算出したところ、平均は1601.0kcalだった。

 糖尿病患者への指示エネルギー量は、身体活動量別の必要エネルギー(kcal/kg)に標準体重を乗じて算定することが多いが、指示エネルギー量を「25kcal/kg×標準体重」にて設定した場合、52人中41人(78.9%)が安静時代謝量を下回り、体重の多い患者ほど指示エネルギー量と安静時代謝量との差が大きくなることが判明した。その一方で、指示エネルギー量を「30kcal/kg×標準体重」で設定した場合は、安静時代謝量を下回る患者は52人中12人(23.1%)に減少した。
長期的視点で持続可能な指示エネルギー量を
 日本では食事の総エネルギー摂取量が「標準体重×25kcal/kg/日」で設定されることがよくあるが、今回の研究で、この総エネルギー摂取量と安静時代謝量を比較したところ、患者の80%近くが安静時代謝量に達していないことが示された。

 日本では高齢化が急速に進行しており、高齢糖尿病患者の数は増加している。加齢はサルコペニアのリスクの増加、あるいは骨格筋の喪失に関連しており、高齢糖尿病患者はサルコペニアのリスクが高いことが知られている。「標準体重×25kcal/kg/日」というカロリー制限の指導を受けた患者が、骨格筋の喪失に続き、日常生活活動を低下させるリスクが懸念される。

 日本糖尿病学会は「糖尿病診療ガイドライン2019」を改訂し、食事療法に関しては「目標体重」という概念を取り入れ、より個々の症例に対応可能な柔軟な食事療法を示した。目標とする体重や摂取すべきエネルギー量は、年齢や病態、身体活動量などによって異なり、「個別化」が必要とされた。

 一方で、ガイドラインが医療現場に反映されるまでに時間を要し、実際には食事療法でエネルギー摂取量を「標準体重×25kcal/kg/日」と設定され、1日に1200~1400kcalという指導が行われ、骨格筋の減少リスクをはらむケースは少なくないとみられる。

 肥満患者が減量目的に入院した場合、短期間での減量効果を求めて1200~1400kcalのような低エネルギーの糖尿病食を提供されることがあるが、厳密に指示エネルギー量が遵守された場合、安静時代謝量を下回ることにより筋萎縮が進行する危険性がある。

 「指示エネルギーを設定する際には安静時代謝量を意識し、過度なエネルギー制限とならないよう配慮すると同時に、長期的視点で持続可能な指示エネルギー量を提示することが望ましい。また、実臨床において安静時代謝を算定することが難しい場合も多いため、将来的には3軸加速度センサー搭載型活動量計のような機器を用い、設定された指示エネルギー量の妥当性を適宜検証することが望まれる」と、福田氏は指摘している。

Standard medical nutrition therapy of 25 kcal/kg ideal bodyweight/day often does not reach even resting energy expenditure for patients with type 2 diabetes
Takuya Fukuda, Muhei Tanaka, Masahiro Yamazaki, Yoshinori Marunaka, Michiaki Fukui
Journal of Diabetes Investigation, 2019年10月28日, Epub ahead of print
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31659860
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jdi.13167
[Terahata]

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編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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