糖尿病性腎症の予後因子としてタンパク尿の重要性を解明 腎生検にもとづく長期・大規模コホート研究「糖尿病性腎症レジストリー」

 金沢大学医薬保健研究域医学系の和田隆志教授らの研究グループは、全国18の医療機関の研究者と共同で実施している「糖尿病性腎症レジストリー」で、腎臓組織の一部を採取し検査を実施した腎生検レジストリーを解析し、2型糖尿病で腎疾患を併発した患者の比較検証を行った。
 その結果、タンパク尿を示さない患者群はタンパク尿を示す患者群より、腎不全などの腎症進行イベントを起こす率および生存率について、いずれも有意にリスクが小さいことが明らかになった。詳細は「Diabetes Care」オンライン版に掲載された。
腎疾患を併発した2型糖尿病患者をフォローアップ 腎生検レジストリーを解析
 「糖尿病性腎症レジストリー(JDN-CS:Japan Diabetic Nephropathy Cohort Study)」は、和田教授らの研究グループが、日本腎臓学会の腎臓病総合レジストリーと連携して実施している、糖尿病性腎症の前向き観察研究。

 腎症発症前ならびに腎症病期分類第1~5期の2型糖尿病の患者を対象に、登録時ならびに定期的観察点(半年~1年毎)における臨床情報と、予後に関する情報を収集している。

 同研究は、尿検体の収集ならびに腎生検例が含まれることを特色としており、分担研究である病理学的な研究やバイオマーカー開発の研究とも連携して、日本人の糖尿病性腎症の病態・予後を包括的に解析することを目的としている。

 研究グループは今回の研究で、1985年1月~2016年12月までの間に各医療機関において腎臓組織の一部を採取し検査を実施した腎生検レジストリーを解析した。2型糖尿病で腎疾患を併発し、かつ、生検を行った患者のフォローアップを統計学的な手法を用いて比較検証した。

 糖尿病患者はタンパク尿などの腎疾患を併発することが多く、その原因として、腎臓の糸球体に障害が発生するためと考えられてきた。しかし、昨今の研究から、2型糖尿病患者では腎機能が低下しているにも関わらず、腎疾患症例の約4割の患者においてタンパク尿の進展がみられないことが確認されている。

 解析の結果、タンパク尿を示さない患者群はタンパク尿を示す患者群より、腎不全などの腎症進行イベントを起こす率および生存率について、いずれも有意にリスクが小さいことが明らかになった。
 「今後、非タンパク尿のままでいるメカニズムや腎保護作用のメカニズムについての研究を進展させることで、腎不全の進行抑制につなつなげたい」と、研究グループは述べている。

 和田隆志教授らは、糖尿病性腎症と診断された患者を対象に、体外診断薬として承認を受けている尿中肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)、尿中アルブミン、尿中N-アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)の測定を行い、糖尿病性腎症の早期診断および重症化防止に有用なバイオマーカーを開発する研究も進めている。

金沢大学大学院 腎病態統御学・腎臓内科学
糖尿病性腎症の進展予防にむけた病期分類-病理-バイオマーカーを統合した診断法の開発
Nonproteinuric Versus Proteinuric Phenotypes in Diabetic Kidney Disease: A Propensity Score-Matched Analysis of a Nationwide, Biopsy-Based Cohort Study(Diabetes Care 2019年5月)
[Terahata]

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