DPP-4阻害薬「トラゼンタ錠」の心血管アウトカム試験の結果 長期の安全性を評価 「CARMELINA試験」「CAROLINA試験」

 日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムは6月24日に、DPP-4阻害薬「トラゼンタ(一般名:リナグリプチン)」心血管アウトカム試験について、ラウンドテーブルを開催した。
 トラゼンタの心疾患および腎疾患のリスクが高い成人2型糖尿病患者における心血管および腎への安全性を検証したプラセボ対照心血管アウトカム試験「CARMELINA」試験と、成人2型糖尿病における長期の安全性をSU薬グリメピリドを対照として検討した「CAROLINA」試験の結果について、東京大学大学院 医学系研究科特任教授および帝京大学医学部常勤客員教授の門脇孝氏が解説した。
トラゼンタ(リナグリプチン)のCARMELINA試験の結果
 「CARMELINA」試験は、心血管イベントや腎イベント、またはその両方のリスクが高い成人2型糖尿病患者を対象とした、トラゼンタの心血管および腎アウトカムへの安全性を検証した長期の心血管アウトカム試験。

 27ヵ国、600以上の施設から成人2型糖尿病患者6,979人が参加し、中央値2.2年にわたり観察を行った多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、同試験の対象者の多くは、腎臓病を有する心血管リスクの高い成人2型糖尿病患者だった。

 標準治療に上乗せした「トラゼンタ」(5mg 1日1回投与)の心血管イベントに対する影響を、プラセボを対照に評価することを目的に計画された。標準治療には、血糖降下薬および心血管薬(降圧薬や脂質異常症治療薬など)がともに含まれていた。

 その結果、主要評価項目である心血管イベントの発現が、プラセボ群では12.1%に対しトラゼンタ群では12.4%であり、プラセボに比べてトラゼンタの長期の心血管安全性が示された。

 副次評価項目である腎複合エンドポイントでは、プラセボ群では8.8%に対しトラゼンタ群では9.4%であり、腎臓に関してもトラゼンタはプラセボと比較して同等の安全性を示した。心不全による入院リスクのエンドポイントでは、プラセボ群の6.5%に対しトラゼンタ群では6.0%だった。

 「CARMELINA試験は、腎機能低下例も含めた2型糖尿病患者を対象にトラゼンタの心血管および腎への安全性を検証した試験。トラゼンタ群はプラセボ群と比較して、3P-MACE(主要評価項目)および腎複合エンドポイント(重篤な副次評価項目)において非劣性を達成した。トラゼンタ群とプラセボ群と比較して、心不全による入院の発現数に有意差は認められなかった。アルブミン尿の進展については発現数が有意に低下した」と、門脇氏は解説した。
CAROLINA試験 トラゼンタの長期的な心血管安全性が示される
 「CAROLINA」試験は、心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのある、早期の2型糖尿病患者を対象とした心血管アウトカム試験。43ヵ国、600以上の施設から成人2型糖尿病患者6,033人が参加した多施設共同無作為化二重盲検実薬対照試験。

 門脇氏は同試験の実施概要について解説し、「CAROLINA試験は、DPP-4阻害薬の心血管アウトカムの中で、実薬(SU薬)を対照とした唯一の試験。また、追跡期間の中央値が6年以上と長期間の試験となった。2型糖尿病患者の血糖低下のためにさらなる治療を検討する場合は、長期的な安全性が確認されているDPP-4阻害薬が必要となる。その点でもこの試験の結果は興味深い」と指摘した。

 同試験は、DPP-4阻害薬の心血管アウトカム試験において、実薬(SU薬、グリメピリド)との比較検証を行った唯一の試験であり、もっとも長い期間(追跡期間中央値6.2年以上)にわたり検証された試験だ。

 この試験は、心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのある、成人2型糖尿病患者に対するトラゼンタ(5 mgの1日1回投与)の心血管への影響について、SU薬グリメピリドを対照として評価することを目的としている(どちらも血糖降下薬と心血管系の標準療法に追加して使用)。

 その結果、主要評価項目である3P-MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中のいずれかのイベントの初回発現までの期間)について、トラゼンタのグリメピリドに対する非劣性が検証された。

 両社の発表によると、同試験における3P-MACE発現率(発現数)は、トラゼンタ群で11.8%、グリメピリド群で12.0%だった。トラゼンタの安全性プロファイルは、「CARMELINA」試験を含む過去の報告と一貫しており、新たな安全性への懸念は認められなかった。

 副次評価項目のひとつである4P-MACE(3P-MACEに不安定狭心症による入院を加えた、いずれかのイベントの初回発現までの期間)の発現率は、トラゼンタ群は13.2%、グリメピリド群は13.3%だった。

 重要な副次評価項目のひとつである、低血糖の発現や体重に関する一定の条件下で継続的に7%以下のHbA1cを達成した患者の割合は、トラゼンタ群で16.0%、グリメピリド群で10.2%となり、トラゼンタ群で有意に高かった。

 HbA1cの低下の推移は両群で同程度だったが、低血糖の発現割合はトラゼンタ群が10.6%、グリメピリド群が37.7%であり、トラゼンタ群で77%のリスク低下が認められまた。このリスク低下は、入院が必要な重度の低血糖症を含め、すべての低血糖発現の有害事象の分類において一貫して認められた。

 「トラゼンタ」の特徴は、主な排泄経路が腎臓でなく、糞中に排泄される胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤であること。すべてのDPP-4阻害薬の中でもっとも低い腎排泄率を示している。1日1回投与で、長期にわたるHbA1c低下作用を有しているだけでなく、肝機能および腎機能に関係なく同一用量で成人2型糖尿病患者に処方することができる。

 なお、日本におけるトラゼンタの効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントのリスク減少に関連する効能・効果は取得されていない。

Linagliptin Effects on Heart Failure and Related Outcomes in Individuals With Type 2 Diabetes Mellitus at High Cardiovascular and Renal Risk in CARMELINA(Circulation 2019年1月15日)
Effect of Linagliptin vs Placebo on Major Cardiovascular Events in Adults With Type 2 Diabetes and High Cardiovascular and Renal Risk: The CARMELINA Randomized Clinical Trial(JAMA 2019年1月)

日本イーライリリー
日本ベーリンガーインゲルハイム
[Terahata]

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