腎障害における「線維化」の正の側面を発見 初期には腎臓を修復する可能性を示唆 京都大
2019.01.23
慢性腎臓病が進行すると腎臓の「線維化」が認められるため、従来は「線維化」が腎機能を低下させると考えられていたが、それとは逆に腎臓を修復している可能性があるという研究を、京都大学が発表した。
初期の線維化には腎臓を修復する役割がある
研究は、京都大学大学院医学研究科腎臓内科学の柳田素子教授、中村仁博士課程学生(現アステラス製薬)らの研究グループによるもので、詳細は「Kidney International」オンライン版に掲載された。 研究グループはこれまで「尿細管」が障害されると、周囲の「線維芽細胞」の性質が変わって線維化が起きることを見出している。 このことから、尿細管障害が線維化を誘導することに、これまでみつかっていない「合目的性」があるのではないかと考え、今回の研究を着想した。 研究では、線維芽細胞と尿細管細胞のクロストーク(相互干渉)に注目し、線維芽細胞のタンパク合成を任意の時点で停止させるマウスを作成し、研究を行った。 これにより、健康な腎臓で線維芽細胞のタンパク合成を停止させると尿細管の障害と増殖が起きる一方、障害された腎臓で線維芽細胞のタンパク合成を停止させると、尿細管の障害が悪化し、修復ができなくなることを確かめた。 このことから、線維芽細胞からは尿細管の修復を促進し、健康な状態を維持する物質が出ていると考え、その物質を探索するため、線維芽細胞のタンパク合成を停止させた腎臓で変化している遺伝子を調べた。 その結果、レチノイン酸関連のシグナルが低下していることを発見した。実際に、レチノイン酸合成酵素は健康な尿細管に発現しているが、尿細管障害とともにその発現が失われ、代わりに性質変化した線維芽細胞が非常に強いレチノイン酸合成能を獲得することを見出した。Myofibroblasts acquire retinoic acid-producing ability during fibroblast-to-myofibroblast transition in kidney disease(Kidney International 2019年1月17日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]