高齢者の肥満診療をどうするべきかを解説
日本老年医学会(楽木宏実理事長)は、「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」(荒木厚作成委員長)の公開を同学会ホームページで開始した。同ガイドラインは、同学会が取り組んでいる「高齢者生活習慣病管理ガイドライン」の作成の一環として、日本肥満学会(門脇孝理事長)の協力を得て作られた。すでに出ている「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」に続くものになる。
日本肥満学会は肥満症について、肥満に起因・関連する健康障害を有するか、健康障害が予測される内臓脂肪が過剰に蓄積しており、減量治療を必要とする状態と定義。肥満は疾患ではないが、肥満症は疾患であり、医学的な介入が必要となる。
具体的には、肥満(BMI 25以上)で、健康障害がある場合とされている。内臓脂肪面積が100cm²以上の内臓脂肪型肥満である場合にも肥満症と診断する。減量を要する健康障害は、(1)耐糖能障害、(2)脂質異常症、(3)高血圧、(4)高尿酸血症・ 痛風、(5)冠動脈疾患、(6)脳梗塞、(7)脂肪肝、(8)月経異常、(9)睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、(10)運動器疾患、(11)肥満関連腎臓病の11疾患がある.
日本老年医学会のガイドラインは、日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2016」を参考に、認知症・ADL低下などの観点から新たにクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、システマティックレビューにより新しい視点を加えている。
ガイドラインは、▼I 肥満または肥満症の診断、▼II 肥満症の影響、▼III 肥満症の治療――の3章で構成され、各章でCQを設定している。とくに「肥満症の影響」では詳しく解説し、肥満と認知症リスク、ADL(運動機能)の低下、心血管疾患などとの関係が記されている。
高齢者の肥満症の特徴として「BMIが体脂肪量を正確に反映しないことが少なくないこと」「ウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比はBMIよりも死亡のリスク指標となること」「加齢とともに肥満にサルコペニアが合併したサルコペニア肥満が増えること」などが解説されている。
「高齢期の認知症のリスク」について、「中年期の肥満は高齢期の認知症発症のリスクであるので注意(推奨グレードA)」「サルコペニア肥満は単なる肥満と比べてよりADL低下・転倒・骨折、死亡をきたしやすいので注意する必要がある(推奨グレードA)」などど注意を促している。
CQには、「高齢者のメタボリックシンドロームはADL低下のリスクになるか?」「生活習慣の改善により体重、BMIを是正することでADL、疼痛、QOLは改善するか?」「インスリン抵抗性は認知機能低下または認知症発症のリスクとなるか?」なども掲載。
「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」は、日本老年医学会ホームページで無料で公開されている。
日本老年医学会
高齢者肥満症診療ガイドライン2018
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