経口薬 α-グルコシダーゼ阻害薬
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α-グルコシダーゼ阻害薬の特徴
食べ物に含まれている糖質の分解・消化を妨げることで、食後の血糖値上昇を抑える。α-GIと糖質が、小腸内で同時に存在しなければ効果がないので、食事を開始する直前に服用する。効果の現れ方が比較的緩やかであり、食事療法と運動療法を怠ると効果が薄れる。低血糖対策のためにショ糖(砂糖)ではなくブドウ糖20gを必ず携行しておくこと。
- 腸管からの糖吸収を遅らせ、食後高血糖を抑制する。特に空腹時血糖があまり高くない食後高血糖に適する。
- 毎食直前に服用する(食後では効果がない)。
- 単独投与では低血糖はほとんどみられないが、併用療法の際には、低血糖が起こるとα-GIがニ糖類(ショ糖(砂糖)など)の消化吸収を遅延させるので、常にブドウ糖を携行させる(ショ糖(砂糖)は不可)。
- 副作用として腹部膨満、放屁増加がみられる。食事療法・運動療法が守られていることが望ましい。
糖尿病治療薬の大規模臨床試験
各薬剤ごとに主要な大規模臨床試験が一覧できます。
協力:糖尿病トライアルデータベース(制作・発行:ライフサイエンス出版)
第1回 α-グルコシダーゼ阻害薬
α-GIの一般的な服薬指導
α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)として
の3種類が臨床で使用されています。
α-GIは食直前服用とされますが、α-GIは本当に食後服用では無効なのでしょうか?ミグリトールの朝食開始30分後服用試験では、確かに食直前投与のほうが食後30, 60分の血糖抑制は良いのですが、血糖曲線下面積(AUC 0-180分)ではいずれも同様の血糖抑制効果だったと報告されています(文献1)。また食後15分服用ですが、アカルボースでも有効性が報告されています(文献2)。
さらに2型糖尿病患者でのミグリトール食直前、直後服用では3カ月でHbA1c、1,5-AG指標で効果に差がないことが示されました(文献3)。当院の患者さんに聞いたところ、「飲めないのは月に1~2回位」との回答でした。これは「食前に忘れてしまったら食中、食後すぐ」と指導を変えてから服用率が上昇したのです。ミグリトールに限れば、食前食後に薬を飲み分けるのが難しくなった高齢者などにも良さそうです。
食直前服用の指導と低血糖
しかし原則は食直前投与とし、「お箸を持ったらまず○○」の標語も使用されています。当院ではこれを唱えさせていませんが、箸と一緒に薬を用意する習慣などを指導しています。また低血糖時は「ブドウ 糖が原則」ですが、無くとも慌てず二糖類(砂糖など)を多めに服用します。
服用初期の消化器症状に対する服薬指導
α-GIは消化器系の副作用が有名です。未消化で結腸に達した二糖類は、腸内細菌がガスを発生、放屁や鼓腸を生じます。特に服用開始1~2週に多く、その後多くの場合症状が軽減消失します。腹部膨満感軽減は
- 早食い過食に注意
- 服用初期はイモ類、豆類、乳製品の摂取過剰に注意
- ビールや炭酸飲料で服用しない
と指導します。
α-GIの最近のトピックス
腸管から分泌されるホルモンのインクレチンには、消化管上部空腸のK細胞からのGIP、小腸下部や結腸のL細胞からのGLP-1があります。GIPは脂肪蓄積作用があるため少ない方が良く、 GLP-1は多いのが理想です。α-GIは小腸上部でのGIP分泌を減らします。ミグリトールは小腸上部で半分が吸収されるため、小腸下部では作用が減弱し、ブドウ糖が吸収され、その刺激でGLP-1濃度が増加します。ミグリトールには、このような有利な作用を持つことが注目されていることを付記します(文献4)。
最後にボグリボースは、「耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制」での保険の適応が通りましたが、 0.2mg錠のみの適応であること、またジェネリック医薬品では適応のないことに注意が必要です。
参考文献
- 1)Aoki K.et al. Diabetes Res Clin Pract 2007;78:30-33、
Aoki K. Terauchi Y et al. Endocr. J 2007;54:1009-14 - 2)Rosak C. et al. Diabet Med 1995;12:979- 984
- 3)Aoki K, Terauchi Y et al. Diabetes, Obesity and Metabolism 2008;10:970-972
- 4)Narita T, Yamada Y et al. Diabetic Medicine 2008 26;187-188
関連情報
糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント バックナンバー
- 第1回 α-グルコシダーゼ阻害薬
- 第2回 ビグアナイド薬(1)
- 第3回 ビグアナイド薬(2)
- 第4回 グリニド系薬剤
- 第5回 チアゾリジン薬
- 第6回 GLP-1受容体作動薬
- 第7回 DPP-4阻害薬(1)
- 第8回 DPP-4阻害薬(2)
- 第9回 DPP-4阻害薬(3)
- 第10回 SGLT2阻害薬(1)
- 第11回 スルホニル尿素(SU)薬(1)
- 第12回 スルホニル尿素(SU)薬(2)
- 第13回 スルホニル尿素(SU)薬(3)
- 第14回 SGLT2阻害薬(2)
- 第15回 SGLT2阻害薬 (3)
- 第16回 SGLT2阻害薬(4)
- 第17回 インスリン製剤(1)
- 第18回 SGLT2阻害薬 (5)
- 第19回 インスリン製剤 (2)
- 第20回 インスリン製剤 (3)
- 第21回 インスリン製剤 (4)
- 第22回 インスリン療法をレベルアップする機器
- 第23回 GLP-1受容体作動薬(1)
- 第24回 GLP-1受容体作動薬(2)
- 第25回 EMPA-REG OUTCOME試験のその後と新たな展開
- 第26回 経口血糖降下薬配合剤の現状と注意点
- 第27回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(1)
- 第28回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(2)
- 第29回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(3)
- 第30回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(4)
- 第31回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(5)
- 第32回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(6)
〈インスリン療法-1〉 - 第33回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(7)
〈インスリン療法-2〉 - 第34回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(8)
〈GLP-1受容体作動薬-1〉 - 第35回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(9)
〈GLP-1受容体作動薬-2〉 - 第36回 糖尿病腎症の進展抑制が期待される
「経口薬剤」 - 第37回 糖尿病腎症の進展抑制が期待される
「注射製剤」 - 第38回 心不全の進展抑制が期待される
「経口血糖降下薬」 - 第39回 心血管病変および心不全抑制効果が期待される「GLP-1受容体作動薬」
- 第40回 インスリンとGLP-1受容体作動薬の新配合薬
患者さん指導・説明用動画 (糖尿病3分間ラーニング より)
糖尿病3分間ラーニングは、糖尿病患者さんがマスターしておきたい糖尿病の知識を、
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