歯周病原菌が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を増悪させる 歯科的介入でNASHの進行を抑えられる可能性

 口腔から感染した歯周病原細菌が肝臓に到達し、肝臓を構成する肝星細胞や、肝臓の70~80%を占める肝細胞からの、TGF-β1(線維化促進因子)やGalectin-3(免疫調整物質)の産生を介して、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態を進行させることを、広島大学の研究グループが明らかにした。
歯周炎がNASHの危険因子 歯周病原性細菌が肝臓の線維化を亢進
 研究は、広島大学大学院医系科学研究科口腔顎顔面病理病態学研究室の宮内睦美教授、高田隆名誉教授を中心とした研究チームによるもの。研究成果は「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。

 肥満にともなう肝臓の病気のひとつである非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、その10~20%が肝硬変や肝がんに移行するため、病態の解明が求められている。

 近年、慢性持続性の感染症である歯周炎がNASHの病態進行の危険因子であると報告され注目されているが、そのメカニズムはよく分かっていない。

 一方、「Porphyromonas gingivalis(P.g.)」は、歯周炎の主な原因菌であり、「歯周病原性細菌」と呼ばれている。この細菌は歯周病局所だけでなく、動脈硬化症の病変などからも見つかっており、動脈硬化や2型糖尿病、関節リウマチなどの全身疾患にも関与していると考えられている。

 NASHの病態進行、とくに線維化の進行機序として、線維化を亢進する強力な因子とし知られるTGF-β1や、免疫調節因子として感染や炎症に関わるGalectin-3を介した肝星細胞の活性化が知られている。肝星細胞は肝臓の構成細胞のひとつであり、炎症後の組織修復の際に活性化され、肝臓の線維化の中心を担うとみられている。

 研究グループは今回、肝臓に到達したP.g.が、TGF-β1やGalectin-3の産生を誘導することにより肝臓の線維化を亢進するのではないかと考え、高脂肪食(HFD)誘導脂肪肝マウスモデルや肝星細胞、肝細胞を用いて、歯周病原細菌であるP.g.の感染、とくにP.g.が産生する病原因子であるGingipainや構成成分であるLipoprotein/LPSに着目してNASHの病態を増悪するメカニズムを明らかにした。
 HFD誘導脂肪肝マウスモデルにP.g.を歯性感染させると、肝組織の線維化領域や肝線維化と正相関するマクロファージの集簇巣数が有意に増加し、TGF-β1により働く経路が活性化した。

 次にGingipainが、脂肪化にともなって上昇した受容体PAR2を介して、肝星細胞や肝細胞からのTGF-β1の産生を促し、線維化を強力に亢進することを明らかにした。

 さらにLipoprotein/LPSが、細胞表面にあり免疫を担う受容体であるTLR4や、脂肪化により発現上昇したTLR2を介して、肝星細胞や肝細胞からのGalectin-3の産生を誘導し、産生されたGalectin-3がTGF-β1の受容体であるTGF-β受容体IIの発現を上昇させることで、TGF-β1の感受性を高めることを明らかにした。

 これらにより、P.g.歯性感染によるNASHの病態進行のメカニズムが明らかになった。このメカニズムを解明すれば、歯科的治療介入の効果を高められ、TGF-β1やGalectin-3を標的とした診断・治療薬を開発できる可能性がある。

 「歯科的治療介入の効果やTGF-β1やGalectin-3を標的とする診断、治療薬剤の開発が期待されます。我々はすでに、歯科的治療介入の効果を検討しており、近日中にも新たな報告ができると考えています」と、研究グループは述べている。

広島大学大学院医系科学研究科歯学分野口腔顎顔面病理病態学
Odontogenic infection by Porphyromonas gingivalisexacerbates fibrosis in NASH via hepatic stellate cell activation(Scientific Reports 2020年3月6日)
[Terahata]

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