脂肪細胞のインスリンシグナルを調節し、2型糖尿病やメタボの発症を予防する新規分子を発見

 神戸薬科大は、脂肪細胞内にあるタンパク質「Fam13a」が、インスリンの正常な作用を助ける働きをすることを解明した。
 Fam13aはインスリンシグナル伝達を仲介するIRS1のタンパク分解を阻害し、インスリンが正常に作用するために重要な働きをしている
脂肪細胞内のインスリン影響分子「Fam13a」がIRS1を阻害
 研究は、神戸薬科大学臨床薬学研究室の池田宏二准教授と江本憲昭教授によるもので、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」電子版に掲載された。

 内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病やメタボリックシンドローム(MS)の発症につながる。肥満にともない脂肪組織が病的に肥大すると、脂肪細胞におけるインスリン作用が減弱する。

 一方で、過体重〜軽度肥満の人は痩せている人や正常体重の人に比べ長生きするという報告もあり、「肥満パラドックス」と言われている。同じ肥満であっても糖尿病やMSを発症しない、いわゆる「健康な肥満」があり、正常体重の健常人と同等の生命予後であることが報告されている。しかし、何が「不健康な肥満」と「健康な肥満」の差を作り出しているのかは解明されていない。

 そこで、神戸薬科大学の研究グループは、「Family with sequence similarity 13, member A (Fam13a)」という分子が正常の脂肪細胞におけるインスリン作用に重要な役割を果たしていることを突き止めた。

 Fam13aはインスリンシグナル伝達を仲介するIRS1のタンパク分解を阻害し、インスリンが正常に作用するために重要な働きをしていることを突き止めた。

 IRS1はインスリンで刺激されたインスリン受容体に結合し、チロシン残基のリン酸化によって活性化されてPI3K/Aktなど下流のシグナル伝達分子の活性化を引き起こす。その結果、糖の取り込みや脂肪の分解抑制などインスリン作用が発揮される。

 Fam13aを欠失したマウスは通常食を与えて太っていない状態においても軽度のインスリン作用不足を示し、高脂肪食を与えて肥満を誘導するとより重度なインスリン抵抗性を示した。

 研究グループは、肥満時にはFam13aの発現が減少し、脂肪細胞のインスリン作用不全が起こり、2型糖尿病やMSが引き起こされることを発見。一方、脂肪細胞でFam13aを高発現させたマウスは太っても糖尿病やMSになりにくいことも分かった。

 Fam13aは太っていない健常マウスの脂肪組織で多く発現する一方、肥満マウスの脂肪組織ではその発現レベルが正常の10%未満まで減少し、この発現減少には小胞体ストレスや酸化ストレスが影響していることが判明。

 今回の発見から、肥満に伴うFam13aの減少度合いの違いが「不健康な肥満」と「健康な肥満」の差を生んでいることが示唆された。Fam13aを活性化する薬の開発や遺伝子治療の開発が期待される。
神戸薬科大学臨床薬学研究室
Family with sequence similarity 13, member A modulates insulin signaling in adipocytes and preserves systemic metabolic homeostasis(PNAS 2018年1月31日)
[Terahata]

関連ニュース

2019年08月08日
DPP-4阻害薬「スイニー」にLDLコレステロール低下作用 スタチン服用中のハイリスク2型糖尿病患者で
2019年08月08日
FDAが初の経鼻グルカゴン製剤を承認 重症低血糖治療の新たな選択肢
2019年08月02日
糖尿病合併症の検査の実施率に全国で格差 糖尿病腎症の検査の実施率は最高31.6%、最低10.8% 国立国際医療研究センター
2019年08月02日
糖尿病性腎症の予後因子としてタンパク尿の重要性を解明 腎生検にもとづく長期・大規模コホート研究「糖尿病性腎症レジストリー」
2019年08月01日
「SGLT2阻害薬」はケトアシドーシスに注意 「患者への説明も含めた十分な対策が必要」と呼びかけ 日本糖尿病学会
2019年08月01日
血糖自己測定(SMBG)の再評価が始まっている SMBGは糖尿病の管理を向上させる有用なツール
2019年08月01日
SGLT2阻害薬使用で血糖値が正常でも糖尿病性ケトアシドーシスを発症
2019年07月30日
2017年度の生活習慣病の医療費 糖尿病が第1位に レセプト3億8,000万件を分析
2019年07月26日
医師からの共感を経験した2型糖尿病患者の臨床転帰が改善 英研究
2019年07月26日
経口セマグルチドを日本で2型糖尿病治療薬として承認申請 GLP-1アナログの錠剤

関連コンテンツ

編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
ページのトップへ戻る トップページへ ▶