iPS細胞からインスリン産生細胞を作製 再生医療を目指すオープンイノベーション研究を開始 東京工業大・第一三共など
2019.01.18
東京工業大学と第一三共、三菱UFJキャピタルは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)からインスリン産生細胞を作製し、再生医療・細胞治療への活用を目指すオープンイノベーション研究を共同で開始すると発表した。
iPS細胞から糖依存的にインスリン分泌するβ細胞を作る
東京工業大学生命理工学院生命理工学系の粂昭苑・白木伸明研究室が開発したヒトiPS細胞から膵β細胞を高率に作製する方法と、第一三共の技術を融合させることで、生体内の膵β細胞に近いiPS細胞由来インスリン産生細胞の作製を可能にするという。 研究では、iPS細胞由来のインスリン産生細胞のさらなる性能の向上、および作製法の改良を行い、従来のインスリン治療では血糖コントロールが困難でアンメットメディカルニーズが高い重症1型糖尿病に対する革新的な治療法の実用化を目指す。 糖尿病患者への膵島移植や膵臓移植は有効な治療だが、ドナー不足が大きな問題となっている。新たな移植源として膵β細胞を試験管内で作る「再生医学」が解決策になると考えられている。 粂昭苑教授らは、2013年にヒトiPS細胞から小腸細胞を作成することに成功。2016~2017年にはヒトiPS細胞から膵β細胞へ分化誘導し、糖依存的にインスリン分泌する能力のあるβ細胞を作るプロトコールを決定。 ゲノム編集を用いたレポーター遺伝子を組み込んだ遺伝子改変ヒトiPS細胞株の作成を行い、得られた遺伝子改変ヒトiPS細胞株由来の分化細胞について遺伝子発現解析を行うことで、重要な遺伝子を見いだしている。再生医療用iPS細胞株の数を増やして、多くの細胞株について適用可能かどうかを検討している。 低分子化合物ライブラリーを用いたスクリーニングにより、分化制御に関与する新規な分子の探索を行った結果、神経伝達物質の一種であるモノアミンを膵β細胞への分化を抑制するシグナルとして同定。2016年にはインスリンを産生する膵臓のβ細胞の量がドーパミンを介する細胞間シグナルによって調節されていることも明らかにした。新会社を設立 オープンイノベーションを展開
今回の研究を行うために、新会社「オイデ ベータリバイブ」を設立し、三菱UFJキャピタルが運営するOiDEファンド投資事業有限責任組合から共同研究などに必要な資金を全額出資するという。 第一三共と三菱UFJキャピタルはOiDEファンドを活用した新規創薬基盤技術を育成するオープンイノベーション活動を進めている。OiDEファンドは、三菱UFJキャピタルと第一三共が2013年に共同で始めたファンドで、三菱UFJキャピタルが運営している。今回の件がOiDEファンド出資の第4号となる。 3年間の共同研究で目標を達成した場合には、第一三共は「オイデ ベータリバイブ」の株式を全て買い取り、第一三共が自らのプロジェクトとして研究開発を進め、東工大に対しては、販売後のロイヤリティを対価として支払う。 東京工業大学生命理工学院生命理工学系粂昭苑・白木伸明研究室
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]