第78回米国糖尿病学会ダイジェスト(1) インスリンとプラムリンチドを投与する「人工膵臓」

第78回米国糖尿病学会(ADA2018)ダイジェスト(1)
 第78回米国糖尿病学会年次総会(ADA2018)が6月22日~26日にフロリダ州オーランドで開催され、糖尿病治療の最新動向を示す多くの研究が発表された。そのうち特に話題になった研究をご紹介する。

インスリンとプラムリンチドを投与する「人工膵臓」を開発

 1型糖尿病患者の血糖コントロールにおいて、インスリンポンプから供給されるインスリンと同時に、「プラムリンチド」(pramlintide、遺伝子組換えアミリン製剤)を追加投与したときの効果を、カナダのマギル大学などの研究グループが検証。

 プラムリンチドは、インスリンとともに膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモン。食物が胃から小腸に流入する速度を下げ、グルカゴンの放出を抑制し、血糖値の上昇を抑える。インスリンの必要量も低下させる。

 インスリンポンプとCGM(持続血糖測定)を組み合わせた「人工膵臓」(artificial pancreas)は、CGMで測定した血糖値に基づきインスリン投与量をコンピュータで自動制御する仕組みになっている。

 第一世代の人工膵臓はインスリンのみを投与するが、今回の研究ではインスリンにプラムリンチドをプラスして投与する新型の人工膵臓を開発。飛躍的に血糖コントロールを改善することを確認した。

 研究グループは1型糖尿病患者12人(平均年齢43歳)を対象に試験を実施。血糖コントロールのターゲットとなる70~180mg/dL範囲におさまった時間帯は、インスリンのみを投与された患者では71%を占めたが、インスリンにプラムリンチドを投与された患者では85%に増加した。

 「人工膵臓においてインスリンとプラムリンチドを投与する治療は予想を上回り有益性があることが分かりました。危険な低血糖のリスクを増やすことなく、目標となる血糖コントロールを得られました。第一世代のインスリンのみを投与する人工膵臓に、プラムリンチド投与を追加するのは効果的です。インスリンとプラムリンチドを投与する治療法は今後発達するとみられます」と、マギル大学医療生体工学科のアフマド ハイダー准教授は言う。

Dual-Hormone, Artificial Pancreas with Insulin and Pramlintide Significantly Improves Glucose Levels, Compared to Insulin-Only Artificial Pancreas(米国糖尿病学会2018年6月23日)

積極的な糖尿病治療は医療費を増やすことなく患者の健康を改善する

 2型糖尿病のある人は生活スタイルを改善し、適切な薬物療法を受けることで、合併症を予防でき、健康な人と同じように生活できると、米国糖尿病学会(ADA)は推奨している。積極的な治療を行っても医療費が大幅に増えないことを実証した「Steno 2」研究の成果が発表された。

 デンマークのコペンハーゲン大学の研究グループは、160人の2型糖尿病患者(平均年齢55歳)を、強化療法を受ける群と、従来通りの治療を受ける群に無作為に割り付けた。強化療法を受ける群は、従来の薬物療法に加え、食事療法、運動療法、禁煙のためのカウンセリングなど、チーム医療により、生活スタイルを改善する積極的な治療を受けた。

 その結果、8年間のフォローアップでは、強化療法群では従来療法群に比べ、心疾患、脳卒中、足病変などの合併症がおよそ50%減少した。13年間のフォローアップでは、強化療法群では従来療法群に比べ死亡が50%減少した。21年間のフォローアップでは、強化療法群と従来療法群とでは直接医療費に差が生じなかった。

 「生活スタイルの改善などの積極的な治療を複合的に行った場合、初期の段階では医療費が増えるおそれがありますが、長期的にみると患者は顕著な健康上のベネフィットを得られ、寿命も延ばせます。結果的に合併症の医療費などを減らすことができ、患者にとって便益が高いだけでなく、医療経済的にもメリットがあります」と、コペンハーゲン大学のヨアヒム ゲーデ氏は言う。

Intense Multifactorial Treatment for Type 2 Diabetes Shown to be Cost Effective(米国糖尿病学会2018年6月24日)

リラグルチドが1型糖尿病の成人の血糖コントロールを改善する 体重も減少

 血糖コントロールが困難な1型糖尿病の成人に、インスリンに追加してGLP-1受容体作動薬「リラグルチド」を投与すると、血糖コントロールが改善し、減量もできるという研究。

 研究グループは、1型糖尿病患者46人(平均年齢47.6歳)を対象とした52週のランダム化比較試験を実施し、患者をリラグルチド1.8mgを毎日注射する群と、プラセボを注射する群に分けた。試験開始の4週間前から研究の終了時まで、CGM(持続血糖測定)で血糖値の推移を測定した。試験開始時の患者のHbA1cの平均は7.82%、BMIの平均は28.9だった。

 52週後、リラグルチド群ではHbA1cは7.45%に改善、平均血糖値も156mg/dLに低下。プラセボ群に比べ70mg/dL以下の低血糖は増えず、インスリンの投与量も増えなかった。リラグルチド群では有意な体重減少があり、平均して83.6kgから80.5kgに減少した。

 「リラグルチドを追加投与することで1型糖尿病患者の血糖コントロールが改善することが示されました。血糖コントロールの目標値を達成できている1型糖尿病患者が少ないなか、リラグルチドのような薬剤を追加する治療は、合併症の発症率を低下させ、患者のQOLを向上させるものと期待できます」と、ニューヨーク州立大学バッファロー校のパレッシュ ダンドナ氏は述べている。

Adding Liraglutide to Insulin Regimen for People with Type 1 Diabetes Improved Glycemic Control(米国糖尿病学会2018年6月24日)

「Omnipod」の人工膵臓が1型糖尿病の血糖コントロールを大幅に改善

 「Omnipod・ハイブリッド・クローズド・ループ(HCL)・システム」が、食事の制限をせず中等度の運動をするよう指導した自由行動下にある1型糖尿病患者を対象とした研究で、血糖コントロールの改善と低血糖の抑制をするという研究が発表された。

 CGM(持続血糖測定)とインスリンポンプを組み合わせたこのシステムは、血糖変動を24時間持続して測定し、それをもとに必要なインスリン投与量をコンピュータが算出し、インスリンポンプで1日を通して皮下投与する。患者によって個別化されたモデル予測制御アルゴリズムを搭載しており、チューブがなく、より自由に活動できるパッチポンプ式になっている。

 試験には18~65歳の1型糖尿病患者11人(平均年齢28.8歳、平均罹患期間14.9年)が参加。5日間にわたりOmnipod HCLシステムの性能と安全性を評価した。なお、Omnipod HCLシステムは現在のところ、米国で研究用途のみに使用が認められている。

 「Omnipod HCLのアルゴリズムは安全であり、良好に機能することは以前の研究でも確認されています。フリーライド状態では、幅広い年齢層で、特に夜間に良好な血糖コントロールを提供することが示されました。さらにこのシステムは、ポンプ、センサー、トランスミッタなどを常に体に装着し、クローズド・ループ・システムとして機能します。多くの活動の妨げとならず、食事時のボーラスや基礎注入の調整もできるので、1型糖尿病患者にとって有益と言えます」と、スタンフォード大学医学部ブルース バッキンガム教授は述べている。

Omnipod® Hybrid Closed-Loop Insulin Delivery System Significantly Improves Glycemic Control in Adults with Type 1 Diabetes(米国糖尿病学会 2018年6月23日)

78th Scientific Sessions(American Diabetes Association)
[Terahata]

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編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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