MR拮抗薬「フィネレノン」が第3相臨床試験で主要評価項目を達成 2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に心血管系アウトカムを検討

2021.05.18
 バイエル薬品は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者を対象に、「フィネレノン」を標準治療に上乗せしたときの有効性と安全性をプラセボと比較検討することを目的に実施した第3相臨床試験「FIGARO-DKD」で、主要評価項目を達成したと発表した。
 同剤が、心血管複合評価項目(心血管死または非致死的心血管イベント[非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院])の最初の発現までのリスクを有意に低減したことが示された。

フィネレノンは標準治療への上乗せにより心血管死と非致死的な心血管イベントで構成される主要評価項目の発現を有意に低減

 「フィネレノン」は、包括的な臨床試験プログラムにもとづき、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者で腎臓および心血管系への有用性を検証した、初の非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬。同剤は、腎臓や心臓障害の主な原因となるMRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。

 FIGARO-DKD試験は、2型糖尿病を合併するCKDを対象としたこれまで最大の第3相臨床試験プログラムの一部であり、早期から進行した病期を含む幅広い重症度の腎疾患患者が登録された。

 同試験は、2型糖尿病を合併するCKD患者で、フィネレノンとプラセボを比較検討した無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間、イベント主導型第3相臨床試験。同試験には、世界47ヵ国の1,000施設以上から約7,400人の被験者が無作為割り付けされた。先行して完了したFIDELIO-DKD試験と比べ、2型糖尿病を合併する早期のCKD患者がより多く無作為割り付けされた。

 被験者は、フィネレノンを1日1回10mgまたは20mgの経口投与、もしくはプラセボを標準治療に上乗せする群に無作為割り付けされた。標準治療には、血糖降下療法や、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などのレニンアンジオテンシン系(RAS)阻害薬の最大耐用量が含まれる。

 同試験から得られた臨床データは、近く開催される学術集会で発表される予定。なお、先に完了した第3相臨床試験FIDELIO-DKDの結果は、米国腎臓学会(ASN)腎臓週間2020で発表されるとともに、「New England Journal of Medicine」に同時掲載された。

 2型糖尿病を合併するCKD患者は、2型糖尿病のみを有する患者と比べ、心血管疾患で死亡する可能性が3倍高いことが知られる。「世界中で推定1億6,000万人の患者さんが2型糖尿病を合併するCKDに罹患しており、そうした患者さんは腎不全への進展だけでなく、心血管イベントを経験するリスクも高まっています」と、Institute of Research imas12のCardiorenal Translational Laboratory and Hypertension Unit教授で、FIGARO-DKD試験の共同治験責任医師であるルイス・M・ルイロペ氏は述べている。

 「MRの過剰活性化は、腎臓と心臓の炎症と線維化の一因です。2型糖尿病を合併する幅広い重症度のCKDに焦点を当てた、これまでで最大の第3相臨床試験プログラムをFIGARO-DKD試験の主要複合評価項目の良好な結果によって完了し、重要なマイルストーンを達成しました。FIGARO-DKD試験のデータが、2型糖尿病を合併するCKD患者における心血管死または非致死的心血管アウトカムの複合リスク低減に関して、FIDELIO-DKD試験で得られたエビデンスをさらに裏付けました」と、同社では述べている。

 フィネレノンについて、バイエルは多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第3相臨床試験FINEARTS-HFの開始も発表した。同試験では、左室駆出率40%以上の症候性心不全(HF)患者(NYHA心機能分類II-Ⅳ度)5,500人以上を対象に、フィネレノンとプラセボを比較検討する。同試験の主要目的は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院またはHFによる緊急受診と定義)の複合評価項目の発現率減少に関して、プラセボに対するフィネレノンの優越性を検証すること。

Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine 2020年12月3日)
バイエル薬品

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料